【短編】真夜中のマスタング
あと数分で青いアーチをくぐることになる。
雨の中、緩やかな坂道をだらだらと登らされた428は湿度のせいもあってここ30kmほどずっと不機嫌だったが、この先でようやく平坦なドライ路面を掴めることを思い出したのか、すこし前から再び美しい吸気音と荒々しい機械音を響かせながら毎分3万5千Lもの空気をがぶ飲みしている。
フロントガラスと屋根に叩きつけられた雨はそれに対抗するように、もしくは無言の僕等を寂しくさせないよう気を遣ってくれているのか車内に大量のホワイトノイズを撒き散らして