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BORGIA(ボルジア)と休む
本作品は、アレハンドロ・ホドロフスキー原作で、ミロ・マナラ作画の作品だ。そして内容は、タイトルの通り「ボルジア」を扱っている。
まず、原作のアレハンドロ・ホドロフスキーといえば、バンド・デシネにおいて「アンカル」関連の一連の作品の原作に携わっている。また、特にメビウスとは「猫の目」や「天使の爪」などの漫画としてはアヴァンギャルドな表現作品を共作している。もちろん、バンド・デシネ以外の映画監督業も有名だ。
作画のミロ・マナラは、イタリアの作家でキャリア後半はエロティックな絵を描く漫画家として知られている。日本語訳されているミロ・マナラの作品としては、ガリバー旅行記をサンプリングした「ガリバリアーナ」があげられる。イタリアの漫画家でエロティックな絵を描く漫画として思い出されるのは、以前紹介したクレパックスだろう。
ミロ・マナラの絵はクレパックスほどお洒落な感じでもないし、日本のエロ漫画のような独特な誇張表現もなく、単に裸や扇情的なポーズや表情を描きがちであるために、エロティックな絵を描く漫画家という認識のされかたなのだろう。
例えば、エロいシーンとお思われる上記の一連のコマをみても、日本のエロ漫画とはまた違った雰囲気であることがお分かり頂けると思う。丁寧に描かれている。他方で注目すべきは表情だ。それぞれのコマでみんな思い思いの表情をしている。特に最後のコマのロドリーゴ・ボルジアの表情たるや。なんとも言えない絶妙な表情で、おぞましくも、愛らしい表情に見えてくる。
本作品のストーリーは、色々映像化されているいわゆるチェザーレ・ボルジアとその父ロドリーゴ・ボルジアを中心としたストーリーをホドロフスキー的味付けをして描かれている。途中の物語に占い師が重要な役割を担ったりホドロフスキーっぽさも感じられる。
ところで、本作品の魅力の1つにやはりマラナの絵があげられるだろう。マナラの絵は、単にエロティックであることにとどまらない色々素晴らしい点がある。1つに先ほど述べた表情があるのだが、本作品がルネッサンス期の頃の話ということもあり衣装等にも注目すべきと思われる。
例えば上記のコマでは、各人の衣装がとても綺麗に描かれている。女性のドレスの薄い緑の色合いとか、本当に良い色合いだと思う。
もうひとつ気になったエピソードがある。それは上記の一連のコマだ。これは、ロドリーゴ・ボルジアがボルジア一家の結束を高めようとチェザーレ・ボルジアに枝を渡し、1本だと簡単に折れるが、5本(ボルジアファミリーの数)だと折れない。そのため家族結束するべきということを諭す場面だ。この話、日本人の我々としては、毛利元就のエピソードで似たような話を聞いたことがある。上記のボルジアのエピソードは元ネタがある話なのか、完全にホドロフスキーの創作なのかはとても気になった。
このように本作品は、英語(翻訳されていない)である点で少しハードルが高いが、ボルジアという人気のネタを使って、ホドロフスキーが面白くしたて、マナラがそれを美しく描いている。是非一読頂きたい作品だ。