自分のことは全て心に従って決めて良い
漫画で飯が食えている。
自作の漫画を買ってもらったお金でご飯を食べている。生活費を賄えているわけではないが、いただいたお金を使って飯を食っている日が多々ある。
そうして食べる飯が、心にとても沁みる最近だ。
漫画家を目指してから10年が経った。
雑誌連載の経験は皆無。けれど今、私は漫画家をやれている。自作の漫画書籍を出して、買っていただいて、そのお金でご飯を食べて、漫画家らしいことをしている実感が今はある。
なので、堂々と「漫画家」と名乗らせてもらっている最近だ。
一時期は「漫画家」と名乗ることが苦しかった。
名乗る肩書に実績が伴っていないことが苦しかったのだ。
「その仕事で1円でも稼いだらプロ」というインフルエンサーの発信に流されて、「漫画家」と名乗っていた時期が数年ある。きっかけは、自作の漫画を掲載していたサイトの広告収入で。100円ほどの収入が発生したとき、初めて「漫画家」と名乗った。
以降、漫画のお仕事をいただけるようになり、そこそこしっかり漫画家をやっていた。しかし、おそらくその業態は、世間が想像する「漫画家」とはかけ離れているであろう業態。
前途した通り、私に雑誌連載の経験はない。
顔も名前もわからない相手から、「お前は漫画家じゃない」「お前みたいなやつが漫画家と名乗るな」と一蹴されることも少なくなかった。
そうした声を受け止めながら自問自答を繰り返すうち、ついには一筆もできなくなってしまったのがつい2年ほど前である。
それからは「漫画家」と名乗れなくなってしまった。
その間も、これまで描いてきた作品たちが働いてくれていたので、漫画での収入が全くのゼロというわけでは決してなかったのだが、
漫画を描けていないという事実が、「その仕事で1円でも稼いだらプロ」という某インフルエンサーの言葉を弾いていた。
心が伴っていない行動には苦しむものである。
私の理想としていた漫画家は、漫画で1円でも稼いだらなれる漫画家ではなかったのだ。
私の理想とする漫画家は、自分の内から出た物語を氣持ちのままに描き起こし、手に取ってもらい、喜んでもらえ、対価をいただける、それ。
そうした漫画家が私の理想の漫画家であることを、そのことを実践できている今、思う。
漫画描き11年目にしてたどり着いた、私の中の真理である。
以前はそれができていなかったから、顔も名前もわからない相手からの言葉を妙に受け止めてしまったのであろう。
今となってはその匿名さんらにも深々と感謝しているところだ。
全て自分で決めていいのである。
自分のことは全て、心に従って決めて良い。
判断の是非に、必ずしも誰かの言葉を介入させる必要はない。
心は常に声を発しているのだから。
心の声に耳を傾けることは、今の世では大変難しいと感じるが、感じているということは、聴こえているということである。
私は今「漫画家」である。
誰に何を言われようと今の私は、「漫画家 石井嘉一郎」なのである。
ー感ずれば 全て己の 写(うつし)かなー
【漫画 スポットライトを浴びたくて……】
世の中には3種類の人間がいる。
ステージに立つスターと、スターを照らすスポットライト、そして……。
スターに憧れていながらも 自らをスポットライトと 決め付け、無難に生きる 日下灯昴(ひのしたともる)。
年月が過ぎ、 周りの状況は変わっていく。
かつて 見下していたクラスメイトは 成功を掴み、 憧れていたスターは 活動を停止。
社会に揉まれ、スポットライトですら なくなっていた灯昴は、 自問自答を繰り返す。
ー本当はどう生きたいのかー
人生に問いかける物語
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