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探究を探究していったら、わからないことだらけの世界だった

こんにちは、MIMIGURIのたじーです!
今年のMIMIGURIアドベントカレンダー 13日目を担当します。

MIMIGURIのCo-CEOである安斎さんの新著冒険する組織のつくりかた「軍事的世界観」を抜け出す5つの思考法にちなんで、メンバーみんなで #わたしたちの冒険というテーマで書いてきます。

CULTIBASE Labのリブランディングを通してわたしにとって「小さな冒険」となった話を、今回は書こうと思います。

CULTIBASE Lab 完全無料化に伴ったリブランディングプロジェクト

既にご存知の方も多いと思いますが、CULTIBASE Labは2024年6月に月額会員制をやめ、無料会員登録制にサービス内容を大きく変更をし、それに伴い、コンセプトやVIといったブランディングの変更も行いました。

有料会員時は「組織ファシリテーションの知を耕すメディア」を掲げていましたが、長く培われてきた専門性の高い言葉や、ハイコンテクストな表現が数多く散りばめられていました。それは当初の想定であれば良かったことだったのかもしれません。しかし、無料で誰でも利用できるようになったからこそ、初めて触れる人が理解するハードルが高く、本来の魅力が伝わりづらいという課題もありました。
また、内部的にも今後の方針も踏まえたときに、掲げるコンセプトとのズレを感じていました。

CULTIBASEの掲げる世界観を「わかりやすく」伝えたい!という想いと挫折

MIMIGURIは文科省認定の研究機関でもあり、同時に経営コンサルファームとしての事業を行う株式会社でもあります。
その多面的な活動は、既にMIMIGURIやCULTIBASEに馴染みのある方には自然なことかもしれませんが、今回の無料化で新しい読者・ユーザー層にアプローチする際には、何の前提知識もない人たちに対しても「わかりやすく」「魅力的に」伝える必要がありました。

「とにかく、わかりやすく魅力的に!」というのは、デザインをしていると当たり前の思考かと思います。その当たり前を当たり前にフルスイングして、プロジェクトをともにしたデザイナーとコピーライターの方たちと最初にまとめたのが、こちらです。

没になった最初のコンセプトコピー案

MIMIGURIの誇る素晴らしいコピーライターの大久保さんスーパーデザイナーの吉田さん、とともにつくったこともあり、言葉のひとつひとつが魅力的で「これなら、わかりやすくなった!」と思っていました。思っていたのです。

しかし、ここで、Co-CEOであり、探究のプロでもある安斎さんにこのようなコメントを頂きました。

安斎さんからのコメントをそのまま載せます(怒られるかな…笑)

コメントをいただいた当初は言いたいことはなんとなくわかるが、咀嚼しきれず、どのような方向でまとめていけばいいのか、頭を悩ませました。
探究という概念は、単なる理解や知識獲得にとどまらず、問いを立て、試し、振り返り、また問い直す――そうした往復運動から生まれる身体的な感覚にも近いものだといえます。

MIMIGURIは「探究」というものを掲げているといったものの、その理解が私自身の中で深く消化されていなかったため、言葉は整っていても、根底にある想いが十分に伝わらないのではないかと気づかされたのです。
とはいえ、気づいたからといって、答えが導き出せるわけでもない。はて、どうしたものか…。

正解があるわけでもない、すぐに答えが出るわけでもない探究の本質を、どう表現すればよいのか…悩みながら、共にプロジェクトを進めるメンバーたちと対話する日々を過ごしました。
それ以外にも関連書籍を手当たり次第に漁り、安斎さんのVoicyを聴き、雑談めいた議論を繰り返す中で、頭の中がゆっくりと耕されていくような感覚は掴みつつある一方で、まだ何かが足りない…そのような感覚も拭いきれてはいませんでした。

逃げちゃダメだ…逃げちゃダメだ…

探究を立体的に捉える機会となった「風越学園」での出会い

そんなときに、わたしが参画しているプロジェクトで「風越学園」という学校の視察に行く機会がありました。
(※わたしはプロダクト事業がメインの所属ではありますが、コンサル事業のプロジェクトにも少し携わっています。)

風越学園とは、軽井沢に2020年に開校した私立の幼小中混在校で、子どもたちの興味・関心に応じて自ら学び、その学びを深めていくことに徹し、テストはなく、幼稚園から中学までの12年間、遊びや環境、そして様々なプロジェクトを通して、探究活動を進めていくことを大切にしている学校です。

視察当日、まず驚いたのは、子どもたちの学びの現場を自由に見学できる2時間ほどの時間が用意されていたことでした。お昼は子どもたちに混じって一緒に食事をし、その後は理事長の「しんさん」こと本城慎之介さんをファシリテーターとした対話の時間がゆったりと流れます。

自由に見学している時間は、実際に子どもたちの中に飛び込み、箸置きを木から削っているグループに加わって、一緒に木を削りました。
子どもたちは何の迷いもなく「このナイフは平らに削るときにいいよ」「固定すると削りやすいよ」と伝えてくれます。その流れるような説明に「どうやってその方法に辿り着いたの?」と尋ねると、「一番使いやすい箸置きはどういうものか」という問いの元に、拾った木を削り、他の子どもたちや先生に聞いてフィードバックをもらい、使いやすい箸置きとはなにかを問い直し、また試し…というプロセスを繰り返しながら、最適な削り方を自分たちで編み出したのだと教えてくれました。
そこには「教えられた」わけでない、自ら問いを立て、試し、言語化する探究のサイクルが自然に根付いていたのです。
身体を使って試行錯誤をしながら、自分の言葉にしていく…誰かに与えられたり、教わったりするだけでは、身につかないことを彼女たちが教えてくれたのです。

ただし、このエピソードはあくまで一場面であり、風越学園でも「何を、どう探究するのか」に葛藤や難しさを抱えているというのも先生方やしんさんとお話していく中で感じていました。

正解も保証もなく、ただ自分たちで考え、選び、進んでいく…その試行錯誤をし続ける胆力こそが探究の本質であり、だからこそ安易な「わかりやすさ」で語りきれない深みがあるのだと痛感しました。

学習環境にもこだわった素敵な校舎でした!

まさに、探究活動の中に飛び込むエスノグラフィのような時間でした。
たった1日でしたが、真摯に探究活動に取り組む子どもたちや先生方からたくさんのことを教えてもらいました。

「見えていること」=「起きていること」ではない

しんさんが語ってくれた「地と図」の概念も印象的でした。
同じ「図」を見ても、置かれた「地」が違えば見え方が変わる…シマウマを動物学者が見れば哺乳類、ライオンが見れば獲物、デザイナーが見ればモチーフ、このように視点や文脈によって意味は変容します。

「見えること=起きていること」ではない。見えていることだけで自分や他者の評価をせずにジャッジせず、さまざまな見え方があることを前提に、お互いの自由を認め合う必要があるという話は、探究における謙虚さや柔軟さを示唆していました。

この話を聞いて、見え方によって、捉え方が変わってしまうことを前提として、その瞬間でジャッジをせずに捉えていくことの重要性を痛感しました。
この「図と地」の話は、今後も自分の人生で大切にしていきたい考え方のひとつになりました。

探究の深みや多面性を表現した最終的なアウトプット

風越学園での出会いによって、実際に「探究活動」をわたし自身が立体的に体感したことも含めて、改めてプロジェクトメンバーと一緒にコピーやVIの方針を考え直し、最終的な姿に辿りつきました。
体感する前は、「果たしてこれでいいのだろうか」というもやもやを感じて意見を求められても曖昧な返事をしてしまう場面もありましたが、探究に実感が伴ったことで、「こうしたい!」という確信的な気持ちが自分の中に芽生えることができました。

VIは「地と図」の話にあるような変化を織り込み、多面的な解釈ができるような表現を取り入れました。即座に答えが出ない不確実性を抱えながらも、問うことをやめず、試し、また対話する…その「まとまらなさ」を大切にすることで、探究的な姿勢がにじみ出る世界観へと近づけたと思っています。

方向性は見えていましたが、それでも難易度の高いテーマをこのような形にデザインしてくれた吉田さんの腕と頼もしさには、さらなる尊敬の念を抱いています!

すぐに答えに辿り着こうとしてしまう自分をやめる努力

一度アウトプットをしたからといって、探究に対する身体的感覚の会得は、いまだに自分の中で続いています。

事業会社のインハウスでデザインしてきたことが長かったわたしはすぐに効果が出るようなやり方やプロセスに飛びついてしまいがちで、「まとまらないことは他人には言ってはいけないことだ」「相手がわかるように伝えなければいけない」と無意識に自分を縛っていました。

「探究」というレンズで自分を見つめ直すと、そのような自分の認知は、探究の幅を狭めているようにも感じます。
特に「〇〇すべき」という言葉をよく使って答えを置いてしまいがちな癖は幅を狭めてしまう癖だということに気づきました。
「〇〇すべき」は行く先がわかりやすくなる一方で、他者の前提を曇らせてしまう危険性があると思い、極力「べき」という言葉や思考を避けるようなトライをしていたりします。

そんな試行錯誤で「◯◯すべき」と一方向的な道筋を引いたりしがちだった自分が、相手や自分自身の「まとまらない言葉」を許容し、対話のなかで揺らぐ余白を受け入れられるようになってきた感覚も芽生えてきました。
そして、自分に対しても他者に対しても「まとまらない言葉」を受容し、大切にしたいと思うようになりました。

まとまらなさを分かち合う営みの繰り返しで、少しずつ自分にも他者にも積み重なっていき、自分の言葉になっていく…正解に囚われず、試行錯誤を続ける、まとまらなさを振り子運動のように繰り返していくことこそ、探究のプロセスを支える基盤なのだと今では思っています。


おわりに

今回のような「探究」も含んだ冒険的な世界観について、MIMIGURIのCo-CEO安斎勇樹さんの新著である冒険する組織のつくりかた「軍事的世界観」を抜け出す5つの思考法で詳しく書かれています!

今なら、早期予約特典をもらえるキャンペーン中ですので、ぜひご予約ください!


明日のMIMIGURI アドベントカレンダーは…

明日12月14日(土)のMIMIGURIアドベントカレンダーは、わたしと同じくプロダクト事業部の所属で、日々組織を耕しているchimoさんです。
いつも一緒にプロダクトづくりをしていく中で、たくさんステキな考えを持っていて、「この機会にぜひどうしても書いてほしい!」と(半ば強引に…笑)お願いしました!わたしも楽しみにしているアドベントカレンダーのひとつです!


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Tajima Kaho
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