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来なかった『未来』の話。
「私、なんだかわからないけど、あなたといると落ち着くの。」
関東の片田舎。訪問リハビリで担当する人の多くが認知症である。
ある日、2〜3分前のことも忘れてしまう80代の女性のリハビリ中。
休憩のタイミングで、突然彼女が笑顔で私にそう言ってくれたのだ。
うまく言葉に出来ないけれど、なぜかとても嬉しかった。
その日の帰り道。夕日を見ながら、自然と涙が溢れていた。
むろん彼女にとっては、私がどこの誰か、どんな関係かもきっと覚えていない。
毎回「初めまして、〇〇と申します。〜〜出身で・・・」と丁寧なご挨拶を冒頭10分かけてしてくれる。
たかだか40分のリハビリで出来ることなど、知れている。
それでも認知症を患う「今」を生きる彼女に、私と過ごす時間が、何かしらの意味を持っていたら嬉しいと思った。
次は、いつ来てくれるの…??
きっと忘れてしまうであろう未来の約束を、笑顔で交わして、また次のお宅へ。
その日は、来なかった
翌週、時間通りに彼女の家に訪問する。
ブザーを鳴らしても反応がない。家を覗くとテレビはついており、人影が見える。
気になって自宅に電話をするも、応答は無い。
窓越しに電話の音だけが響く、不穏な時間
どうにもならず、彼女のケアマネと息子さんへ連絡を入れる。
ちょっと気にるので、都合がついたら様子を見に行っていただけますか…?
その後、ちゃんと彼女と会えたと息子さんから連絡が入る。
なんだか疲れて寝てしまってたみたいで…本当に申し訳ないと言っていました
安心したのもつかの間、その数時間後。
5件のリハビリを終えて、職場に戻った私に入った連絡。
〇〇さん(彼女)が急死されたと
来ないかもしれない未来もある
プライバシーもあるので、詳細は省くが。
高齢者の突然死は、少なくない。
10年ちょっとの臨床経験でさえ、度々遭遇する
彼女が息子と会えた数時間後に、帰らぬ人となってしまったのも事実。
息子さんからは連絡のお陰で、最後に会えたと後にお礼を頂く
介護現場で働いていると、未来について考えることに、ある種の無意味さも感じる。
未来を明日のことのように、もっと身近に捉えてもいいんじゃないかと思う。
だからこれからも、『未来のために』ではなく今思うベストを懸命に生きたいと思うのだ。
では、また!
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![kaho|理学療法士・パラレルワーカー](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/173463145/profile_da9cfcb06e1d8a383ec58dd677d89f9f.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)