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おもしろ研究紹介

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最新の研究論文を、分かりやすいように、長すぎない記事でご紹介します
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#神経

なぜ1人になると、間食してしまうのか?:孤独と空腹は脳の同じ領域を活性化させる

今回は、人が孤独を感じた時には、空腹を感じた時と、同じ脳の神経回路が活発化することを明らかにした研究をご紹介します。 リモートワークの普及で1人で過ごすことが多いかと思いますが、1人でいて寂しさを感じている時に、お菓子などを口にすることで気分を紛らわそうしてしまうのはなぜなのでしょう? 最近の研究では、孤独も空腹も、脳の報酬系の神経回路の働きを活発にさせ、寂しい時には食べることで、この報酬系の神経回路の指示を満たそうとしていることが示唆されています。 紹介論文Acute s

カラスの脳は小さいのに、なぜあんなに賢いのか?: 鳥類の小さい脳の中には、実は複雑な神経回路が存在している

カラスなどの一部の鳥類は、脳のサイズは小さいのに、なぜあんなに賢いのでしょうか? 鳥類は、基本的に頭のサイズが小さいため、脳もとても小さいのですが、それにも関わらず、道具を使ったり、抽象的な概念を理解したりすることまでできます。 最近の研究では、鳥類の小さい脳の中には、哺乳類の大脳新皮質に似た複雑な神経回路が存在しており、その特殊な神経回路が、霊長類なみに賢い行動をすることを可能にしていることが明らかになってきています。 鳥類の脳はピーナッツ一粒ほどに小さい:でもとても賢い

母親の腸内細菌が、胎児の脳の正常な発育に重要

今回は、母親の腸内細菌によって作られる代謝物が、胎児の脳の発達に大きな影響を及ぼしていることを示した研究をご紹介します。 腸内細菌が健康に与える影響について、様々なことが明らかになってきており、腸内細菌を整えるための発酵食品の重要性が言われています。 妊婦の方も、お腹の子どもの脳の正常な発達のために、腸内細菌叢をしっかり整えた方が良いことが、最近の研究から示唆されています。 紹介論文・参考資料 紹介論文 The maternal microbiome modulates f

自分の細胞を使って、パーキンソン病を根治する

今回は、パーキンソン病の新しい治療法についてのお話です。 自分自身の細胞を使って、ダメージを受けた神経細胞を修復することで、パーキンソン病を根治できる可能性を示した研究を紹介します。 いまだ根治のための有効な治療法がないパーキンソン病ですが、今回の研究で示された治療法が確立されれば、パーキンソン病を根治できる画期的な治療法になる可能性を秘めています。 紹介論文 Reversing a model of Parkinson’s disease with in situ con

なぜ掻けば掻くほど、もっと引っ掻いてしまうのか

今回は、なぜかゆい時に引っ掻き行動が止まらなくなるのか、その脳での神経伝達のメカニズムを明らかにした研究を紹介します。 このメカニズムが明らかになることにより、かゆいときに皮膚を引っ掻き過ぎて傷つけてしまうことを防げる可能性を秘めています。 掻けば掻くほど止まらなくなる痒みを感じた時に、その部位を引っ掻いてしまうと思いますが、掻けば掻くほど止まらなくなるという経験を誰もがしたことがあると思います。 そしてつい掻き過ぎて、いつの間にか血が出てしまうほど掻いてしまうような経験