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前田家ゆかりの茶入

 先日の茶道のお稽古の時の話。お稽古を終えて、そろそろ終わりの挨拶かなと思った矢先の事。
「マコさんは薄茶の運び点前だし、恵子さんは薄茶のお客だし。マッキーは濃茶のお点前だけど、お客がいないわね……。蜻蛉さん、おヒマでしょう」
「あっ、はい。ヒマです」
「じゃあ、蜻蛉さん。マッキーの濃茶のお客ね」
「はい!」
 ということで、お客の役をいただきました。本日二度目のお客なので、お菓子は主菓子ではなくて、予備のクッキーと金平糖みないな干菓子。
 で、マッキーさんのお点前で濃茶をいただいて、お道具拝見。ほとんど先生のオーム返しで進んだのですが。
「お茶入れの、御伝来は?」
「前田家由来の、お茶入れでございます」
「すごい。先生、本当に加賀藩前田家伝来のお茶入なんですか?」
 すると先生はクールに、
「話だけです」
「そっ、そうなんですか……」
 さらに問答は続いて、お菓子の話に進みました。
「前席では心づくしのお菓子をいただき、大変美味しくいただきました。御製は?」
「○□にございます」
「御銘など、ございましたら」
「若草にございます」
「うーん」
『何がおかしいの?』と、言わんばかりに先生が、
「どうかしましたか?」
「お菓子はコゲ茶色のクッキーだったんですけど。若草というには少し……」
 すると、はにかみながら亭主役のマッキーが、
「春雷に、ございます」
 と言い直した。それも、ありかな…。
 周りで聞いていた姉弟子たちの、クスッと笑いをこらえる声が聞こえた。
 とりあえず日本は平和です。こんな時間が続きますように。


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