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おごりの春の うつくしきかな

  その子二十 櫛にながるる 黒髪の 
          おごりの春の うつくしきかな

 与謝野晶子の短歌である。先日の茶道のお稽古で使わせいただきました。
 どう言う風に使ったのかと言うと、こうである。私が主人でお点前をして、客との問答になった時のこと。
「お茶杓のお作は?」
「淡々斎にございます」
「ご銘など、ございましたら」
「櫛にながるる黒髪、にございます」
 植物系イケメン・アシスタント先生の反応は、
「うーん、長い」
 さらに客の反応は、
「どう言う意味ですか」
 でした。そこで私は、
「与謝野晶子の短歌から取りました。長いということなので、では、おごりの春、ではどうでしょうか」
 アシスタント先生は、
「まあ、いいでしょう」
 とのこと。客は相変わらず、
「どう言う意味ですか?」
 となった。
 実際問題、単に「おごりの春」とだけ言われたら、その意味は全く想像がつかないだろう。そこで客の二十代前半と思われる女性に与謝野晶子という女性と、短歌の意味について説明した。
 それでも客の、その子、には納得がいかなかったようだ。まさに、この短歌、そのものだと思った。与謝野晶子の言葉の選び方に、脱帽である。
 ちなみに、この短歌の説明には、与謝野晶子自身を歌った歌である、とあった。
 しかし、茶杓に、このような銘を付けて良いのだろうか、とお稽古の帰り道、自問自答した。薄茶の時の茶杓の銘は、季語である事と言われているが……。

 やは肌の あつき血汐に 触れも見で 
       さびしからずや 道を説く君

 やっぱ、いいと思います。

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カゲロウノヨル
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