Ryoya KAGA
”あちら”と”こちら”その共同作業を目指して
絵
脳にはびこる雑想。
最近は鬱で仕事をサボってます。 作品作りのために「音楽」自体について調べており、クラシックからアニソンまで聞きたいので、apple music に加入した。思いの外楽しめてます。 自分の趣味は、ロックとブルース、ジャズなどのアメリカポピュラーをベースに基本雑食。平沢進や陽水も好き。apple musicのおかげで、クラシックやボカロ系など今まであまり聴いてこなかった音楽もサクッと再生している。作品の資料だと思うと好みを通り越したところで聞くことができ、そのことで新しい発見
宮崎駿の最新作『君たちはどう生きるか』という映画は、非常に良い映画だった。そして、実におかしな映画だった。 今回はこの映画について自分なりに見出したものを書き残してみたい。結論は出るかわからないし、出ても曖昧なものでしょう。 私は公開直後とつい先日の2回鑑賞した。たったのに2回でこの映画の全貌を語り尽くす!というのはまだまだ早計なので、ここには自分なりの読解の足掛かりとなる言葉を置いておくことにする。 おかしな映画。いったい何がおかしい? この映画、何かおかしいので
ここは付録です。特に体系だって語れないけども、面白い要素のあるトピックを扱っています。ので答えが出てないのもあります。 ■思い出時間軸 作品時間としてはタエ子の”あちら”に対する態度を簡単なものから順繰り描いているように感じるが、実際の作中の小5の思い出の時間軸はバラバラだ。()付きは服装や会話からの推測。他は黒板やセリフで明示されている。 タエ子のトラウマである「あべくんとのやりとり」は夏休み前なのだ。田舎への憧れが始まる前で、他の全てのエピソードの前。こういう
最終回!!! ■同じ傘の元に 現在:山形 タエ子は山形を出る。高瀬駅にはトシオ、ナオ子、ばっちゃんが見送りに来る。 今度は遊びに来る気ではない、と言う宣言が「農業を勉強する」なのだ。トシオは困惑気味に応答。さて農業は実践だけではないのだろうか(私は知らない)。 ばっちゃんがタエ子と秘密の話。トシオの嫁に来ること、考えておいてくれ、と。 電車がやってきてついにお別れの時間。なぜか汗だくのおじさんが割り込んできて、歯切れの悪い別れで電車が動き出す。 窓から身
■トシオの”勢い”再び 現在:山形 タエ子があべくんに握手をしてもらえなかったことを聞いていたトシオ。あべくんはタエ子さんのことが好きで、別れたくなかったんじゃないか、と彼は言う。タエ子は、あべくんの好きな子は別の子で、私にはいつも攻撃的だったと。そこに、トシオは伝家の宝刀を降ってみせる。 これまでも何度か彼が言うセリフである「わかる」。彼は今あべくんを自分の中に取り込んでいるのだ。彼は、好きな子にはいじわるしたくなる、自分もそうだったと言う。 タエ子はそんなこ
■”嫁:こちら”にこないか? 現在:山形 農家の家でアイスクリームを作っているタエ子。そこにばっちゃんがきて、タエ子が明日帰ってしまうことを寂しがる。ばっちゃんは、タエ子にここ:山形が好きか?と問う。タエ子は「もうここがふるさとみたい」などと言って見せてイエスと答える。 ばっちゃんは追撃する。 タエ子の返事 やはりタエ子は”別世界:あちら”だからこそ山形が気に入ったのだ。「ふるさと」といいつつ「別世界」なのだ。ばっちゃんとの会話が続く、タエ子は山形への言葉を続
■タエ子はどうして演技が評価されたか タエ子、トシオ、ナオ子で夕暮れの中散歩する。夕陽に向かって飛んでいくカラスをみてタエ子が急に演技を始める。 それは5年生の時の学芸会のセリフらしい。タエ子の役は村の子1。セリフは一つだけだった。タエ子はそのセリフが一生忘れられないものだと言う。その時の演技のおかげでスターになれたかもしれなかったらしいのだ。 過去:東京 11月 鏡の前で猛練習をしたけどの物足りない。なのでタエ子はセリフを勝手に増やしてみた。しかし、教室での
■「本物」の田舎 現在:山形 蔵王からの帰り道。田んぼ景色で車を止める。タエ子はその景色を見て言う 蔵王のようなリゾート地とは違う本物の田舎だという。トシオはその言葉を聞いて話し始める。 都会の人は、森や水の流れをみると自然と言ってもてはやすけども、この田舎の景色は人間が作った景色、百姓が作った景色だ、と。田んぼや畑だけのことではなく、流れている川や森、林も人間が自然との関わりの中で出来上がったものだ、と続ける。トシオはまとめの言葉を綴る。 ”自然”と“人間
■蔵王デート 分数ができないタエ子と結婚したリエちゃん 現在:山形 タエ子とトシオが蔵王へデートへ行くことになる。トシオがタエ子をドライブに誘ったあと、言葉を付け足す。 トシオの家系が分家なのだ。本家にお世話になっているタエ子を誘うのに許可がいるのだ。いや、少なくともトシオはその許可が必要だと思っている。 山形の農家の中にも”本家”と”分家”という”あちら”と”こちら”があることになる。トシオはその境界を無断で越えてはいけないものと認識しており許可をとるのだ。手続
■父はなぜタエ子をぶったか 現在:山形 お邪魔している家の娘ナオ子が母に5000円をねだる。プーマの靴が欲しいという。ナオ子は言う「みんな買ってもらってる」。ナオ子はここで”みんな”なるものに同化したがっている。プーマという”あちら”に。 タエ子はその場面を微笑ましく見守る。すると過去の記憶が蘇る。それは”あちら”への同化と言う点でリンクした記憶である。 過去:東京 おそらく12月(パイナップルの後) 父にまた人形の服を買ってもらったことをヤエ子に咎められ
■ハンガリーの百姓?トシオの勢い 現在:山形 山形駅に到着したタエ子。カズオのまたいとこのトシオが彼女を迎えにくる。トシオがタエ子を乗せた車にエンジンをかけると音楽が流れてくる。 ヒューー!ハンガリーですって!トシオ曰く、その音楽は百姓の音楽で、自分も百姓だから好きなのだそうだ。 トシオはこの時、遠い海外の人間を同じ”こちら”側だとしている。ハンガリーの人間を同じ「百姓」などと言ってしまうのだ。 タエ子も農家”あちら”への憧れを抱いてそちらに入りたいと思っ
■生理、非生理、未生理 過去:東京 7月 女子だけ体育館に集められ生理の授業を受ける。これは女子だけの「秘密」なのだ。「秘密」とは他者=”あちら”からは隠すべきものである ”こちら”は秘密をもち、また秘密を持つことで”こちら”を強化する。 タエ子は友達との会話からみるにまだ生理はきていない。ここでのタエ子の立場を整理する。生理についての立場を以下のように分けてみる。 ・生理はありません→非生理 ・生理があります→生理 ・既に生理があります→既生理 ・まだ生理があ
■タエ子、男子との共同作業? 過去:東京 2月 タエ子は給食のナマスが嫌いでパンに挟んで残してくる。母は「こんなことしたらもう食べられない」と三角コーナーに乱暴に捨てる。「勿体無い」といいつつ。 場面は変わって教室。給食の時間。タエ子はナマスは嫌いだがミルクは飲めるらしい。ぐいぐいと一気飲み。ミルクが嫌いな隣の席の男子スーはそれを見ている。 彼らは契約を交わす。スーが嫌いなミルクをタエ子が飲む。代わりに、今後タエ子の嫌いな物があったらスーが食べる。という具合だ。
■田舎への憧れ 熱海のお風呂 物語は東京から始まる。休暇申請をして山形の農家へ行くことにしたタエ子。タエ子は東京生まれ東京育ち。いわゆる地方に田舎=実家がない。 過去の回想小5の夏休み。 友達はみなは地方へ行くという。タエ子ひとりが取り残されていく。 タエ子はみんなが嬉々として語る田舎への憧れを募らせる。 田舎はタエ子にとっての憧れの”あちら側”となっている。上の姉のナナ子が山形の男性(ミツオ)と結婚したためにタエ子は待望の田舎を手にいれる。義兄(ミツオ)の実家
■前段 身の上話 『おもひでぽろぽろ』を見るまで、高畑勲の作品をまともに見たことがなかった。 「まともに見たことがなかった」というのは、子供の時に見た『火垂るの墓』『おもひでぽろぽろ』は金曜ロードショーでの鑑賞で断片的な記憶しかなかったからだ。『かぐや姫の物語』の公開当時(2013)、大学で美術の勉強をしていながらも劇場に足を運ぶことはなかった。 2019年、東京国立近代美術館で高畑勲の回顧展がやるということで、すでにアニメーションを職業としていた私は当時の職場に