ブルボン小林【ザ・マンガホニャララ 21世紀の漫画論】
週刊文春で連載されていた漫画評集の、シリーズ三冊目。着眼点がいい意味でズレているのは健在で、作品の、大袈裟に言えば世界の見方を180度回転させられる気分になる。それをぴたりと言語化する筆力もすごい。「(作者に煙たがられこともしばしばある)にも関わらず、この世に評の言葉がなくては、と思う」「そして、その評はなるたけ、ふざけていないといけない」あとがきにあるこの言葉の通り、遊びのある評が繰り広げられている。そしてその遊びは、どこまで行っても真剣で、熱がこもっている。
ところで前二冊と比較して、パッケージとして大きく変わっているところが二点ある。一点目は表紙で、前回まではカバー色がそれぞれ一色だったのが、今回はやたらカラフルになっている。またハットリくんやピノコと言った往年のキャラクターではなく、何というか「絵」だ。ブルボン小林も、ブルボン小林とは綾小路翔⇄DJ OZMAと同種の関係性であるらしい長嶋有も、こういう「外し」をしてくる人で、こちらの予想を、どうでもいいからこそ愛おしい部分で裏切ってくる節があって、それだけで何か嬉しくなり、本棚に並べた時の統一性の無さすら、むしろしっくりくる気もする。というのは手放し過ぎるかもしれない。
表紙については選定理由も含めてあとがきで語られているが、もう一つの違いはタイトルに「ザ・」が付けられている点だ。この「ザ・」はどこからやってきたのか? これもまた氏の得意とする「外し」なのか? 「漫画論」という厳つい副題に呼応するものなのか?
残念ながら連載終了になってしまうようだが、評論というほど肩肘の張らない、けれどもたしかに説得力のある漫画評だ。