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みじかいはなし

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#平成最後の夏

〈小説〉 平成最後の花火

〈小説〉 平成最後の花火

月に一度の約束の前日、メッセージを送信すると父からすぐに返信があった。
行きたい店があるなら調べておきなさい、一緒にまわろう。
父からのメッセージを既読にしたまま、スマホに充電ケーブルを繋いで眠った。

ダメもとでただひろを花火大会に誘ったらあっさりOKをもらった。
それで慌てて押し入れの奥から引っ張り出した浴衣を羽織ったら、丈が短くて焦った。去年は花火大会には行かなかった。友達に誘われたりもした

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〈小説〉15秒。

〈小説〉15秒。

水面に反射する日ざしが巨大なさかなの鱗みたいに絶え間なく揺れてかたちを変えながら光る。
今からみんな食べられようとしている。
巨大なさかなに。
お揃いの喪服を着て。
なんの味付けもされないまま。
髪は全て納めてある。
名前を書いた白いキャップの中に。
準備体操をする女子の体のひとつひとつを、あたしは巨大なさかなのつもりで品定めする。
Yは不味そう。巨乳だから。
Sは油っこそう。ポテトばっか食ってる

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