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〈小説〉ワイロ的赤い果実
『高崎さんからお土産』と書かれたメモが貼り付けられている箱がスタッフルームのテーブルに置いてあった。
僕はロッカーから自分のユニフォームを取り出しジーパンを脱ぎながら、オリーブオイルとチーズとビールとトマトソースの混じった何とも言えない異臭がする綿パンを履きつつ箱を見た。
和紙のような素材の白に、桜の花びらを思わせるような桃色が小川のせせらぎを表すように斜めにあしらわれている。
綿パンのチャ
〈小説〉それは 静かに
「うるさいね」私が言うと、「夏だからね」彼が答えた。
蝉の鳴き声が響く駐車場で、助手席のドアを開けると、車の中から姿の見えないゴーストみたいに熱風が襲いかかってくる。
彼は少し開けたドアの隙間から腕だけを伸ばしてキーを差し込み、エンジンをかけたあと冷房の風量を最強にして、困ったような顔でこちらを見た。
まだシートが熱いうちに私たちは車に乗り込み、見慣れた風景が流れる通りを走る。
「こんなに暑か