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作家・織守きょうやが選ぶ 私のおすすめミステリ 第3回

手に汗握る衝撃的な展開やドキドキの伏線回収など、数多くの人気作品が生まれる“ミステリ”ジャンル。そんな作品を生み出している作家の皆さんは、かつてどんな作品に出合い、そしてどのように自身の物語を生み出しているのだろうか?
今回は2024年8月23日に『殺人と幻視の夜』を上梓した作家・織守きょうやさんに、おすすめのミステリ作品を伺いました!
現役作家が語るおすすめミステリという、カドブンならではの貴重なインタビューです!

――織守さんおすすめのミステリ作品と、それぞれおすすめの理由も教えてください!

1:北村 薫『空飛ぶ馬』(創元推理文庫)

日常の謎ミステリというジャンルを作った作品であり、今でも、そのジャンルの中の最高峰だと思います。謎と解決だけでなく、小説作品としても素晴らしい。こういうミステリもあるんだと思いました。

2:森博嗣『すべてがFになる』(講談社文庫)

こちらは非日常のミステリで、外連味たっぷり。理系ミステリは当時新しいジャンルで、新鮮な驚きがありました。スマートで硬質な雰囲気の一方、独特の詩的な文章は癖になります。とにかくかっこよくて夢中になりました。


3:法月綸太郎『法月綸太郎の冒険』(講談社文庫)

切れ味の鋭い短編ミステリを集めた第一作品集。潔く、謎と解決のみを無駄のない筆致で書いてこれだけ満足度が高いのはすごい。私にとって、「本格ミステリとは」と言われて最初に思い浮かぶのがこちらです。

超有名作家の超有名作ばかりですが、有名作にはそれだけの理由があるのです。意外と、最近の読者さんは読んでいない人もいるかも、と思いタイプの違う本格を挙げてみました。

――確かに、カドブン読者のみなさんの中にも「名前は知っているけれどまだ読んだことがない」という方がいらっしゃるのではないでしょうか。ぜひ、この機会に手に取ってみてくださいね!
では、織守さんが作家になることを決めたきっかけ、またミステリ作品を書くようになったきっかけにはどのようなものだったのでしょうか?
中学生のころからノートに小説を書いていて、作家になりたい気持ちはあったはずですが、はっきりとは覚えていません。専業作家になると決めたのは、このペースで書けば生活できそう、というくらいお仕事をいただけるようになったとき。
いわゆる新本格ミステリに衝撃を受けた世代だからか、私の中では「ミステリというと本格」という印象がありました。そのためずっとミステリを書くのはハードルが高いと思っていて、ミステリを書いているという意識は、「黒野葉月は鳥籠で眠らない」を書くまでなかったと思います。でも、それ以前からずっと、書くものにはミステリ要素があった気がします。当時の私にとって「おもしろいもの」=「ミステリ」だったからかもしれません。

――ミステリ作品を執筆するうえで、作品のこだわりや意識している点はございますか。
こだわりは、自分でおもしろいと思えるものを書くことですが、特にミステリとしては、意外性と、真相が発覚した後、読者が納得できること。
意識しているのは、読者が途中で真相に気づいたとしても楽しめる、おもしろかったと思えるようにすること。謎とその解決だけしか読みどころがないものにしないことでしょうか。(とはいえ、謎とその解決だけで読者を満足させられるすごい小説や書き手には憧れます。それこそ、法月綸太郎さんの短編など)

――意外性と読者が納得できる着地点についてこだわっているとのこと、貴重なお話をお聞かせくださり、ありがとうございました!
最新作である『殺人と幻視の夜』について、着想のきっかけと読みどころをお伺いできましたら幸いです。

作中に登場するデザイナー夫婦の幻視の真相を思いつき、いつか超能力ものとして書きたいなと思っていたところ、メインのネタも思いついたので、組み合わせて長編にしました。主人公に視えているのが何なのか、というトリックを中心に組み立てていった感じです。
読みどころは、読者や主人公が視えていると思っていたものが反転する瞬間と、友達がいなかった主人公が、殺人の証拠をつかむつもりで近づいた相手にうっかり友情を感じるようになってしまう過程。どうなるの? とハラハラしながら読んでいただけたら嬉しいです。

――超能力×ミステリという織守さんだからこそのエッセンスが詰まった物語は、一度読み始めたらページをめくる手が止まらない! 主人公の幻視能力と連続殺人犯が織りなすストーリーはどこに行き着くのか、ぜひカドブン読者のみなさんも手に取って楽しんでみてくださいね。

『殺人と幻視の夜』あらすじ

視えてしまった連続殺人。友人の犯行を止められるのか……?
大学生・久守は触れた人の後ろ暗い秘密が視える幻視能力に、幼い頃から苦しんできた。しかしある日、美大生の佐伯に触れ、話題になっている残忍な連続殺人の犯行を幻視してしまう。この事件を止めるべく、懐に入り、証拠をつかもうとするものの、佐伯と交流を重ねるうちに、孤独だった久守は本当の絆を感じ始める。犯行を止めるため、能力を駆使する彼の友情は、どんな結末を迎えるのか?一気読み必至のノンストップ・ミステリ!

書 名:殺人と幻視の夜
著 者:織守きょうや
発 売:2024年08月23日
I S B N:978-4-04-115020-7
定 価:770円 (本体700円+税)
判 型:文庫判
詳 細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322402001510/

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