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作家・阿津川辰海が選ぶ 私のおすすめミステリ 第1回

手に汗握る衝撃的な展開やドキドキの伏線回収など、数多くの人気作品が生まれる“ミステリ”ジャンル。そんな作品を生み出している作家の皆さんは、かつてどんな作品に出合い、そして自身の物語を生み出しているのだろうか?
今回は2024年7月26日に『バーニング・ダンサー』を上梓した作家・阿津川辰海さんに、おすすめのミステリ作品を伺いました!
現役作家が語るおすすめミステリという、カドブンならではの貴重なインタビューです!

――阿津川さんおすすめのミステリ作品と、それぞれおすすめの理由も教えてください!

1:泡坂妻夫『亜愛一郎の狼狽』(創元推理文庫)

「自分にとってのミステリの教科書」というのは、ミステリを志すきっかけとなったはやみねかおるさんの言。はやみねさんの言っていたのを真似して、毎年一度は読み返すようにしています。

2:詠坂雄二『君待秋ラは透きとおる』(角川文庫)

 唯一無二の鬼才による異能力バトル×ミステリ。『バーニング・ダンサー』を書く時にもリスペクトを捧げた作品なので挙げました。偏愛作は『人ノ町』。

3:ジェフリー・ディーヴァー『ウォッチメイカー』(文春文庫)

私が海外ミステリを読むようになったきっかけの一冊。最高にシビれる名探偵vs.名犯人の対決を見届けてください。

――ミステリを志すようになったきっかけの作品など、思い出深く、そして個性的な作品もご紹介いただきありがとうございます!
阿津川さんが小説家になることを決めたきっかけ、またミステリ作品を書くようになったきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

 中学生の時、朝日新聞社の「オーサー・ビジット」という、著者を学校に招いて授業をしてもらう催しがあり、そこではやみねかおるさんをお招きし、ミステリに関する授業を受けたことが、最初のミステリ小説を書いたきっかけでした。それまでも小説は書いていましたが、ジャンルはファンタジーで、ミステリ一辺倒になったのはその授業を受けてからです。投稿活動を始めたのは大学生になってからで、石持浅海さん、東川篤哉さんの二人に憧れていたので「カッパ・ツー」の第一期に応募することを決意しました。

――「カッパ・ツー」は本格ミステリの新人発掘プロジェクトで、石持浅海さんと東川篤哉さんが選考委員とのこと。阿津川さんがこの企画に入選し、『名探偵は噓をつかない』(光文社)でデビューされたことに素敵なご縁を感じますね。
阿津川さんがミステリ作品を執筆するうえで、作品のこだわりや意識している点はございますか?

 フェアに挑戦してもらえるように、というのはいつも心がけています。なのでなるべく、今回の手掛かりはコレなんだよ、というのは作中ではっきり明示して、考えてもらえるようにしています。また、オマージュ元はなるべく辿れるようにして、かつ、オマージュのネタを割らず、迷惑もかけないように、というのは意識しています。自分の作品からオマージュ元へ帰った時、むしろ、楽しい発見が出来るように、読みのポイントを示しておく、とか。自分がそのように新本格ミステリから古典ミステリへ遡っていったので、その導線を自分の作品の中にも引きたいと思っています。

――「(読者に)フェアに挑戦してもらう」というのは、読み手も主人公と同じ手掛かりで物語と犯人を推理できるので、より一層作品を楽しむことが出来ますね。
最新作『バーニング・ダンサー』について、着想のきっかけと読みどころをお伺いできましたら幸いです。
 TVドラマ「SPEC 〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿〜」のように、刑事ものと異能力バトルがミックスされた読み味の本格ミステリを作れないか、というのがそもそものきっかけでした。異能力バトルへの憧れは、小学生の頃に『金色のガッシュ!!』『うえきの法則』を通っている世代なので、常に胸の中にあり、いつか挑みたいと思っていた題材でした。加えて、もし本格的に警察ものをやるのであれば、ジェフリー・ディーヴァーの方法論を意識的になぞりながら、日本式の本格ミステリへ組み替える試みをしたいと思っていました。そこで、異能力バトル×ジェフリー・ディーヴァー、という本作のコンセプトが出来上がりました。

――阿津川さんの異能力バトルへの憧れは、『金色のガッシュ!!』からだったんですね! そこに警察・刑事もののエッセンスが加わり、『バーニング・ダンサー』が誕生したとのこと。
怒濤のどんでん返しが続く最高峰の謎解き×警察ミステリ『バーニング・ダンサー』は、普段警察小説や刑事が主人公の作品を読んだことがない読者の方も楽しめる作品なので、ぜひみなさんも手に取って楽しんでみてください!


『バーニング・ダンサー』あらすじ

特別な能力で大衆を煽動する殺人犯・ホムラvs. “猟犬”の異名をもつ元捜査一課刑事。
「あの、私も妹も、交通総務課から来ました」。その一言を聞いて、永嶺スバルは絶句した。違法捜査も厭わない“猟犬”と呼ばれた捜査一課での職務を失い、新しい課に配属された初日。やってきたのは、仲良し姉妹、田舎の駐在所から来た好々爺、机の下に隠れて怯える女性、民間人を誤認逮捕しかけても悪びれない金髪男だった。着任早々、チームに異様な事件の報告が入る。全身の血液が沸騰した死体と、炭化するほど燃やされた死体。ただ一人の理解者であった相棒を失い、心の傷が癒えぬスバルは、捜査経験がほぼない「警視庁公安部公安第五課 コトダマ犯罪調査課」のメンバーと捜査を開始する。メンバーの共通点はただ一つ。ある能力を保持していることだった――。
「すべての始まり」から、犯人の噓は仕込まれている。6作品連続「このミステリーがすごい!」ランクイン &「本格ミステリ大賞(評論・研究部門)」受賞作家最新作。阿津川マジックが炸裂する、最高峰の謎解き×警察ミステリ!!

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