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【詩】山と湖の色

霧深く 鳥の声さえ聞こえない
山々に囲まれた湖の真ん中で
恋人がゆったりボートを漕いでいる
私は彼と向かい合い
周りの景色を描いていた

青 湖の色
緑 山の色
うまく描き分けられない

思い切って黒で境界線を引こう
けれど私の絵の具箱に黒はなかった
「黒は悪いものだから捨てなさい」と
父親に言われたのだった

山と湖の境界が淀んで行く
絵がだめになって行く
見ると私の周りの湖も
不安げに濁って来た

私は山々に向かってこう叫んだ
「お父さん!お父さんなんでしょう?
私達の邪魔をしないで!」

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