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いままでの失敗は全部いまにつながっている。 #2書評 ハリーポッターシリーズ

「やってしまった」いままで生きてきた人生の中で、何度このセリフを口にしたことだろう。誰だって数え切れないくらい多くの失敗を重ねてきたはずだ。

目を覆いたくなるような失敗も、笑い話になった失敗も。過去があるから、いまの自分がいるんだと思う。

ハリーポッターシリーズは、そんな当たり前のことを思い出させてくれた小説。




私がまだ20代だったころ、親友の結婚式に参列した。その親友とは家族ぐるみで仲良くしていたこともあり、夫と2人で招待してもらった。

純白のドレスに身を包み、少し緊張している親友。でもその顔はとても晴れやかで、ひまわりのように笑う彼女につられて、周りがパッと明るくなる。

私はもう、胸がいっぱいで、新郎新婦入場から涙を必死にこらえていたように思う。

式は順調に進み、披露宴が始まる。私と夫は、2組の親友夫婦(主役の親友含めこの2人とは学生時代の部活仲間)と、中学時代の部活でお世話になった顧問と同じ席だった。

新婦側の主賓挨拶でその顧問がよばれ、粛々とスピーチを始める。しかし、このスピーチこそが私にとって地獄の時間となった。

なんと顧問は中学最後の大会で、私が「やってしまった」大失敗を語りだしたのだ。

とんでもない、夫もいるのに!

私はもう恥ずかしいやら悲しいやらで、うつむいて自分の手をずっと見つめていた。

念のために言っておくと、話の着地点は悪くなかった。中学時代に「やってしまった」私を、親友が明るく励ましてくれたというエピソードだったから。

スピーチが終わるころには拍手喝采、会場は温かい雰囲気で次のプログラムへと進む。私だけは、心に冷たい氷を放り込まれたようだけど。

それから何年かたって親友と当時の話をすると、「あれはないよね」と言ってくれたことがせめてもの救いだった。

そんなことがあったから、ついつい夫にも「部活なんかやるんじゃなかったなぁ」なんて言ってしまった。

すると夫からは、意外な言葉が返ってくる。

「ももが部活をやっていなかったら、僕たちは出会っていないんだよ」

確かにその通り。私たちは、親友の結婚式で同じ席に座っていたもう1人の親友が引き合わせてくれたのだから。

「やってしまった」過去は消せないけれど、過去があるからいまの自分がいるんだ。

「ハリーポッターシリーズ」を全巻読むと、それがはっきりとわかる。主人公のハリーは何度も失敗をする。どうしてそうなっちゃうの?と思うような言動や行動も、数えきれないくらい多い。

それでも最後の最後には、それがすべてつながる。いままでやってしまった過去の失敗は、すべてがいまの自分を作っている。

だから失敗には、1つもムダになるものはないんだと思う。それが大きくても、小さくても。

そして、人は何度だってやり直せる。完成された大人に見えるあの人も、過去にはなにかしら「やってしまった」ことはあるもの。ハリーポッターはそんな勇気をもらえる小説だ。

失敗はきっと明日の自分を成長させてくれる。そうやって毎日を積み重ねていきたいと思う。

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