【1】最短ルートでノーベル賞を取る方法!?
みなさんはDNAというと何を連想するだろうか?
最近は遺伝子診断や犯罪捜査などでも普通に「遺伝子解析」が使われているし、食品・飲料メーカーなどの品質管理部門では、業務で遺伝子解析や遺伝子を活用した分析などをされている方もおられるだろう。
さて、その遺伝子について、高校あたりの生物の授業を思い出せば、「ワトソン、クリックの二重らせん」として覚えた方も多いのではなかろうか。その二重らせんの発見の過程を、ワトソンさんご本人が書かれた本がある。タイトルはそのものずばり『二重らせん』である。
ノーベル賞を受賞したDNAの構造解明の過程を克明に描いたノンフィクション、というと、ちょっと難しかったり、カタイ話だったり、はたまた感動的な話だったり、そんなものを連想されるのではないかと思うが、さにあらず、この『二重らせん』は、ワトソン青年が「ノーベル賞を取る」ことを最初から目的にして、いかにライバルを出し抜くか、自分の手札は見せすぎず、必要なデータを集められるか、ちょっとエゴイスティックな科学者の生態を赤裸々すぎる筆致で描いているという点で、いわゆる「科学者が書いたノンフィクション」という固定観念的なイメージを思いっきりひっくり返されること請け合いである。
また、そのゴシップ的な赤裸々さだけでなく、DNAの構造を解明するための「ひらめき」と、その「ひらめき」を実証して論文にするまでの過程も、ちょっと驚きの手法である。
これはネタバレすると面白さが半減すると思うので、敢えて詳細はここには書かないでおくが、「え? そんな×××でノーベル賞取れちゃうの?」とびっくりすると思う。
自分は大学時代に当時講談社文庫で出た版で読んだのだが、そんな本が講談社文庫で小説などと一緒にひっそり置かれていたので、意外に知らない人が多かったのではないだろうか。
実は自分も、当時の大学の先輩に「面白いから読んでみ」とススメられなければ、知らないままだったかもしれない。
その文庫版も、長年、あまり店頭に並んでいない状況が続いていたが、現在はブルーバックスで再刊されて手に入りやすくなった。 興味を持たれた方は、今度書店に行ったときなど、ブルーバックスの棚をながめてみてほしい。
また、現在はこの原著に膨大な脚注や関連資料、写真を追加した「完全版」も翻訳が出ているので、よりディープに読み込みたい方は、そちらにチャレンジしてみるのもいいだろう。