たこい⭐︎きよし

本を読む。ビールを造る。

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マガジン

  • あのころの、こどもまんが

    こどものころに読んだ懐しいまんがと、そのころの思い出をつらつらを書く極私的エッセイ。自我は読んできたまんがでできている、かもしれない!?

  • 科学者になろう

    なりゆきで博士(農学)まで取得した経験から、科学/研究についてブックガイドを切り口にいろいろ紹介。あなたも科学者になれる、かもしれない?

  • ブックスタンドは引かれ合う

    「スタンド使いが引かれ合う」かの如く、耳にした時事ネタから引かれ合うように連想した本のことをランダムに綴るエッセイ。次は何の話題か、自分でもわかりません(笑)。

最近の記事

【5】恐怖の新聞配達

 楳図かずおのマンガを家に置けないほどの怖がりだった子どものころ。  大人になると多少の慣れはあるものの、今でも怖いものは苦手だ。  『ファンタズム』という映画がある。  「背の高い無表情な男がのっそり歩き、謎の銀色の球体が画面を飛び交う」  あらすじといえばそれだけの映画なのだが、これがとにかく怖い!  怖いものはずっと苦手だったのだが、なぜかこれは映画館で観てしまった!  なぜかといえば、アニメ版『がんばれ!! タブチくん』の併映だったからだ。  中学の頃、たま

    • 【4】楳図かずお・こわいマンガ

       確か、小学4年の時だった、と思う。  同級生が一人、何かの病気か怪我で、近所の病院に入院した。  何度かお見舞いに行ったのだったと思うのだが、病室に、入院患者の暇つぶし用だろうか、週刊少年サンデーが何冊かあった。  それに載っていたのが、ちょうど連載中だった『漂流教室』。  既に立ち読みでいろいろなマンガに触れていた時期で、楳図かずおの絵は、こわいマンガを描く人、として強烈にインプットされていた。  主に秋田書店のサンデーコミックスから出ていたいくつかのマンガを何度か読ん

      • 【17】論文投稿はまだできないけど、きっと覚えます

        「トップジャーナル」? ……って何ですか? と、普通の人は思うだろう。 「医学論文」? ……あ~、自分、お医者さんじゃないし、と、普通の人も、論文を書こうとしている人も思うだろう。 「メディカルレビュー社」? ……へえ~、そういう出版社もあるんだ。お医者さん向けだよね?  実際、書店でも、専門書コーナーのある大型、総合書店で、普通の人は足を踏み入れない医学書のコーナーの中で、なおかつ、医学専門書よりさらに目立たない、お医者さん向けの学会ノウハウ本の棚にひっそりと置

        • 【16】その酵素の名は。

           前回は知る人ぞ知る(?)生化学実録ドキュメンタリーコラムを紹介した。  この『生化夜話』の第37回に酵素化学のエピソードがあった。  今では「酵素の本体は触媒機能を持つタンパク質である」というのは常識中の常識だが、それが解明されたのは1930年代。  タンパク質を分析するための実験手法もちゃんと確立されていなかったこの時代に、酵母から抽出した「黄色い液体」が酸化還元反応を触媒する作用を持つ、ということが発見されたものの、その反応を触媒している成分の正体はすぐにはわからなか

        マガジン

        • あのころの、こどもまんが
          4本
        • 科学者になろう
          17本
        • ブックスタンドは引かれ合う
          5本

        記事

          【15】トライXで万全?

           「某漫画」は説明するのも野暮だと思うが(笑)、これは2008年から2013年まで「GEヘルスケア」のライフサイエンス事業部のサイトで、生化学系の読者に好評を博していたWEB連載コラム『生化夜話』からの引用だ。  メーカー再編で、現在は事業を引き継いだ「サイティバ」のサイトの片隅に、今でも読めるように残されている。  引用した回に話を戻すと、「某漫画」もさることながら、このサブタイトルはバタフライ・エフェクト!?  この著者はもしかして、マンガファンで、なおかつSFファンか

          【15】トライXで万全?

          【14】ふたつの甲州プロジェクト

           日本でワイン造りに連綿と使われてきたブドウ品種「甲州」が、一説によると「行基という奈良時代の高僧が日本に伝えたとされている」というトリビアは川原泉『美貌の果実』で知った。  その「甲州」は、日本古来の品種で食用にもされてきたのだが、遺伝子的には欧州のワイン用ブドウが属するVitis vinifera種に近く、7割以上はVitis viniferaであることが近年の研究で明らかになった。 (学名は正式にはイタリック表記。本稿中、以下も同じ)  最初は「甲州の遺伝子を調べて

          【14】ふたつの甲州プロジェクト

          【13】レイズ・ザ・シャンパーニュ!?

           けっこう前にニュースになったと思うが、バルト海で沈没していた船から、170年前のシャンパーニュが見つかった。  おそらくロシアあたりに向けた交易品だったのだろうが、海の底にあったので、人の手に渡るのが170年も遅れてしまった、ということになる。遅刻するにもほどがある(笑)。 シャンパーニュの海底熟成!? 先のコラムと、『世界の名酒事典 2018年版』のカラー写真入りのトピック記事の中に、この発見をきっかけに計画されたという、瓶詰のシャンパーニュを海底で熟成させてみよう、と

          【13】レイズ・ザ・シャンパーニュ!?

          【12】麹は「破精(はぜ)」たら役に立つ

           「【5】論文を書こう」の回では『動物のお医者さん』を取り上げたが、博士課程在籍学生の論文投稿のリアル、なんてマニアックな要素はさておき、チョビをはじめとする動物たちとハムテルたちのキテレツで楽しそうな様子に人気が出ることで、連載当時は獣医学部の志望者がだいぶ増えたという。 (2024年現在、小学館ビッグコミックスに移籍して毎月一冊刊行中なので、新しい読者も生まれているとうれしい)  同様に『もやしもん』ブームは全国の大学の農学部志望者をだいぶ増やしたものだった(雑誌連載は

          【12】麹は「破精(はぜ)」たら役に立つ

          【11】白ワインのあの香り

           シャトーメルシャンに「甲州きいろ香」(現在は「玉諸甲州きいろ香」)というワインがあるが、その名前の由来はこの本『きいろの香り:ボルドーワインの研究生活と小鳥たち』で知ることができる。  前回(【10】官能検査をしよう)紹介したこの『アロマパレットで遊ぶ』の著者であり、ボルドー大学でワインの研究をされていたリサーチエンジニアの故・富永敬俊博士の初めての著書はこの『きいろの香り』だった。  ボルドー大学での研究生活の傍ら、拾った小鳥を「きいろ」と名づけて可愛がっていた富永博

          【11】白ワインのあの香り

          【10】官能検査をしよう

           「官能検査」という言葉を使うと、「官能」という言葉の字面から微妙な反応をされることがあるが(笑)、そういう意味(笑)ではない。  ありていに言って、「分析」の一手段であって「人間を測定機器として活用する」手法の総称だと思ってもらえばよいかと思う。  科学が進歩している現代、なんでも機械で測れるんじゃないの、と思っている人もいるかもしれないが、「分析」というのは地道なもので、例えば、ワインをある測定機器で「分析」しようといった場合、ワインそのものをそのまま機械の中に通して

          【10】官能検査をしよう

          【9】観察をしよう

           すごいものを見てしまった。  …というのが、まず第一印象。  「微隕石」とは字面の通り、微小サイズの隕石のことだが、そういった隕石は小さすぎて人間の生活圏ではサイズの近いさまざまな塵芥にまぎれて見つけられない、ということで、そういった「微隕石」を極地で収集する試みはこれまでにも行なわれてきた。  著者は、その研究手法上の「定説」に挑戦し、顕微鏡での膨大な観察の結果、人間の生活圏から「微隕石」を見つけられるようになった。  そのサイズはおおよそ0.2~0.5mm程度(!)

          【9】観察をしよう

          【3】時間SF初体験?

           記録をひもといてみると、『ドラえもん』の小学館学習雑誌での開始は1970年1月号から、だったようだ(※1)。  自分が小学校に入学したのは1971年4月なので、本当の連載開始からは1年ちょっと経っていたことになるが、記憶の中では、ちゃんとドラえもんが未来からやってくる話から読み始めて、未来に帰る話まで読み、しみじみとしていたら、翌月、あっさり帰ってきちゃったところまでがひと続きになっている。 ……なっていたのだが(笑)、こどもの頃の記憶なんてものはだいぶいい加減なので(

          【3】時間SF初体験?

          【2】年に一度のお年玉

           夏休みと冬休みに帰省していた母の実家は、自分が小学3年生の時に普通の木造家屋に建て替えられたのだが、もとは土蔵に住居スペースをつけたような、今にして思えば不思議な建物だった。  祖父が漆職人で、二階部分にはその仕事部屋があったのだが、まあ、それだけが理由でもないだろう。土壁の古い家屋。お便所は屋外でほぼ土を掘ったところに溜め込むだけ、といった風情だった。  閑話休題。  その古い方の実家で、一度だけ『ルパン三世』を観たことが、強烈に記憶に残っていた。  内容はちょっとエッ

          【2】年に一度のお年玉

          【1】あのころのリアリティ

           幼少期の思い出には母方の実家のウェイトが大きい。  母の兄弟は兄が二人、姉が二人で、母は五人目の末っ子だったが、それぞれの一家が、お盆や正月には祖父母のいる実家を訪ねて、夜は大宴会。  他の伯父伯母は同じ市内に居を構えているので、うちの家族だけが、帰省の期間は泊めてもらっていた。  そんな帰省の期間内に、りぼんで読んだ千明初美「いちじくの恋」は、同じように、田舎に、休みごとに親戚の集まる話で、他人事とは思えないリアリティがあった。  ついでながら、続編の「七夕」では、

          【1】あのころのリアリティ

          新世紀のビールの教科書

           日本ではアルコールが1%を超える酒類を製造するには免許が必要だが、欧米では自家消費程度なら認められている。ということで、いわゆるホームブルーイングはけっこう盛んのようだ。  英国でホームブルーイングをしていてコンテストで入賞歴もあるという著者の書かれたこちらの本などは、使う設備から工程ごとの注意点などをきめ細かく図解してくれていて、ちょっとやってみたくなる(やっちゃいけません)。  ただし、それなりのスペースや設備は必要なので、酒税法で禁止されていなくても日本の一般的な家

          新世紀のビールの教科書

          【8】研究をしよう

           さて、ここまで学会発表、や論文投稿にまつわる話をいくつかしてきたけど、当然ながら、肝心の「研究」がなくてはどちらもすることができない。  それでは、そもそも、科学者はなぜ「研究」なんてことをしているのか。 (もちろん、科学だけが「研究」ではないが、ここは話の流れということで、ひとつ)  人によって答えはたくさんあるとは思うが、いきなり、「人類の英知の殻を広げたい」などと高尚かつ崇高な使命感に燃えて「研究」を始める人はいないだろう。(そういう方もいるかもしれないが…)

          【8】研究をしよう