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読書感想文~「きんぴか」
千世さんが浅田次郎氏の魅力について語られていたので、少し違った切り口から、私も語ってみたいと思います。
私が浅田次郎氏の作品に触れたのは、意外や意外?エッセイからでした。
学生時代の友達が浅田次郎に嵌っていて、その影響で「勇気凛々~」シリーズを購入していたのです。
ちなみに、浅田次郎氏のデビュー作である「とられてたまるか!」も持っています。
作家になる前は、自衛隊隊員、アウトサイダー的な職業なども経験されたことがお有りのようで、氏が書かれる男性が魅力的なのは、そうした経験も反映されているのではないでしょうか。
そんなわけで久しぶりに引っ張り出してきたのが、「きんぴか」。
ざっくりまとめると、
ピスケン:かつてはシノギの上手くないオヤジ(岩松円次)のために、ライバルのヤクザを襲撃し、懲役13年半余りの人殺し。ヤクザ&警察界隈では「ピスケン」の二つ名で有名。
軍曹:自衛隊の出身でありながら、アメリカとの外交の道具にされる自衛隊に反旗を翻し、懲戒免職になった鹿児島県大河原村出身の脳筋タイプ。
広橋(ヒデさん):元大蔵省のエリート官僚。義父と縁の深かった山内龍造の汚職の罪を被り、逮捕される。会津出身のバリキャリで、三人の中では唯一の妻子持ち。
といった三人の男たちが、繰り広げるオムニバス形式の作品です。
この作品が私に与えた影響は結構大きかったようで、過去にも少し触れていました。
私が個人的にタイプだったのは、ヒデさんこと、広橋秀彦でしょうか。蒼穹の昴の「梁文秀」にも通じるところがあるのですが、人一倍努力して、中央政権のトップに出て、国の在り方を変えようとしたその気概は、やはり並々ならぬ信念があってのもの。
その彼が義父のために罪を被り、「男の変節は許せない」と怒りの炎を燃やしたのが、1巻(三人の悪党)に収録されている「陽の当たる密室」。
そこで一度は広橋の捨てた「勇気」を拾ったのが、「草壁明夫」という新聞記者でした。
作品を最初に読んだ時から気になる存在でしたが、曲りなりにも私自身が、多少なりとも「文字で人に訴えかける」仕事をしていて、改めて「世の中に正義を問うとは」ということを考えさせられます。
草壁の取った行動は、世間一般的には称賛されるものでしょう。ですが、それは「ヤクザと政治家に真っ向から戦いを挑んだ」行為でもありました。
それだけの気概を見せてこそ、「男子の本懐」。
それが出来なかった広橋に対し、三人組に本拠地を提供した向井刑事は、「他人を踊らせて、笛や太鼓を叩いているてめえは卑怯者だ」とばっさり断じます。
その言葉に動かされた広橋が、ついに取った行動とは――。
広橋がかつて持っていた「勇気」は、広橋から草壁へ、さらには関東テレビの川口、そして再び広橋の元へと伝えられていきます。
一例として、ヒデさんの関わった事件とそれにまつわるエピソードを取り上げましたが、それ以外にも、浅田氏が考える「正義の本質」がいくつも詰まった作品です。
やはりヒデさん関連になりますが、彼の妻の後添である「ハゲ・デブ・メガネ」の三重苦の男(尾形清)を扱った、「裏街の聖者」の話も格好良い。
本当の正義とは、何でしょうね。
浅田次郎氏の作品は、ピカレスクや短編、歴史小説と形を変えながらも、それらの問を常に投げかけてくれるのです。
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