青年が夢見た世界
本日、1月25日は円谷英二監督の命日だそうです。
それに先立ち、土曜日(22日)に円谷英二監督にまつわる、幻の映画を鑑賞してきました。
かぐや姫
東京で「円谷英二展」が開かれた際にも上映されたようですが、このアーカイブ版は、円谷英二展でも少しだけ鑑賞していました。
ただ、ダイジェスト版のダイジェストの5分前後の映像だったので、本当に断片的なものだったのです。
かぐや姫は、中学校の古典でも最初に取り上げられる作品(竹取の翁)ですが、展覧会の説明で「ハッピーエンドで締めくくられる」とあったので、ワクワクしながら鑑賞しました。
下記の略筋は、会場で配られた「作品情報」から抜粋したものです。
主な出演者は、次のようなキャリアだそうです。
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\def\arraystretch{1.5}
\begin{array}{l|l|l}
\textbf{役柄}&\textbf{ 演者}& \textbf{概要}\\ \hline
かぐや姫 &北澤かず子& 文化学院学生\\ \hline
造麿 &藤山一郎 &ビクター専属歌手\\ \hline
竹取翁 &汐見洋& 1920~1964年にかけて活躍した俳優。代表作に、新篇丹下左膳シリーズなど。\\ \hline
竹取媼& 東日出子& 初期の帝国劇場で女優として活躍。\\ \hline
宰相阿部& 横尾泥海男& 松竹蒲田撮影書、東宝などの喜劇映画で活躍した名脇役。\\ \hline
太麿 &徳山璉& 戦前から戦中にかけて活躍した日本の声楽家・流行歌手。\\ \hline
細身 &藤輪欣司 &1924~1947年にかけて、活躍した名脇役。戦後は松竹大船で「彼女の発言」などに出演。
\end{array}
$$
トーキー映画
制作したのはJ.O.スタジオで、1935年にオールトーキーの手法を用いた同映画が公開されました。
そもそも「トーキー映画」という概念自体が、私達の世代では既によくわからないものかもしれません。
トーキーとは、それまでの「サイレント映画(無声映画)」に対して、新しく出てきた技術による映画です。
今は音声がつくのが当たり前ですが、サイレント映画の登場が1888年、トーキー映画の登場が1927年だそうですから、J.O.スタジオは新技術を早くから取り入れていたということですね。
そのためでしょうか。
セリフももちろんあるのですが、なぜかセリフと同じくらい「歌が多い!」🎵
さながら、「和風ミュージカル」のようです。
出演者が歌っている「かぐや姫~」の歌も、「ヨナ抜き音階」(ド・レ・ミ・ソ・ラだけで構成される音楽。日本の童謡でよく使われます)のオリジナル曲なので、尚更そのように感じたのかもしれません。
円谷監督らしさ
この作品では、「田中喜次」監督の元で、円谷氏はカメラマンとして参加していました。
ですが、女性をきれいに撮影するポイント(かぐや姫の表情)や、陰影の付け方が、随所で「円谷英二」らしさを感じる作品でした。
それと、非常に「桜」が使われていたのが印象的でした。
パンフレットの写真は、幼馴染(許嫁)の造麿と船遊びをしている場面なのですが、映画の中では桜の花を愛でながら、舟遊びをしているのです。
もちろん、この頃は白黒の映画なのですが、桜の花びらが舞い散る様子などは、フィルムが発見されたイギリスにも、「東洋の神秘」という印象を与えたのではないでしょうか。
さらに、円谷監督らしさを私が感じたのは、ラストのかぐや姫の昇天(と見せかけた屋敷からの脱出)シーンです。
月蝕も月が欠けていく様子で、当時の人々の不安要素を表現する要素として、非常にわかりやすかった。
ラストは宰相や彼が遣わした兵、二人の息子が、昇天シーンをアワアワと眺めている隙に、姫一行が牛車で屋敷から抜け出すのですが、ちゃんと「陰陽師の幻術にかけられた人々の幻想」も、残された人々からの視線で映像に入っていました。
幻影の中に見える天人達の姿も、顔貌をはっきり見せず、影のようなもので表現。
この辺りが、円谷監督の「ローキー撮影$${※1}$$」らしいと思います。
予算度外視
この映画公開の前に、ウルトラマンのスーツアクターを務められた古谷敏さんのトークがありました。
円谷監督はとにかくリアリティーの追求にこだわりを持っていらっしゃったそうで、ウルトラマンが2クール(1クール13話で計算)で終了したのは、特撮に時間もお金もかかっていたから、というのも理由だったそうです。
この「かぐや姫」でもそんなこだわりが垣間見えて、円谷監督だけの意志ではないにしろ、牛車にしろ姫の衣装にしろ、大陸への渡海(挫折しますが😅)の船のセットにしろ。
非常にリアリズムを追求して、お金に糸目を付けていないのは、モノクロの画面越しにも伝わってきました。
やはり、そこは職人のこだわりだったのかもしれません。
時代を超えても学ぶものはある
若い時の円谷監督の作品を鑑賞する機会はめったにないので、この作品は都合をつけてでも見に行って本当に良かったと感じました。
円谷監督が日本の特撮映画の礎を築いたのは、間違いありません。
ですが、それも一朝一夕でできたものではなく、少年期や青年期にさまざまな体験を積み、観察眼を磨き抜いて鍛え上げてきたのでしょう。
今回は、イギリスからの特別の貸し出しフィルムということで、今後上映される機会があるかどうかは不明です。
ですが、また鑑賞する機会があれば、見てみたい。
そのような作品でした。
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