文字への祈り
現在、新聞を取っている家庭が減っていると言われていますが、我が家では地元紙(福島民報)を定期購読しています。
元旦は特集が組まれるのも定期購読の楽しみの一つ。福島民報の場合、今年は第4朝刊まであったのですが、第4朝刊の特集は「芸能・文化」でした。
その中で私の目を惹いたのは、第4朝刊3面に掲載されていた「時を超え通じる心」。この中で人気書籍だという『いとエモし。超訳 日本の美しい文学』(サンクチュアリ出版)が紹介されていました。
この記事を書いた記者によると、同書は日本の古代中近世の古典や和歌などを現代の言葉遣いで訳し、素敵なイラストとともに紹介しているのだそう。その中で、古語の「をかし」と現代の若者が使う「エモい」が同じ意味だと解説しているのだという文章に、興味を惹かれました。
同書の著者であるKotoさんによると、「をかし」の感覚は心が揺さぶられ、何とも言えない気持ちになることを意味するのだそう。
「をかし」は、現代の言葉でその感覚を的確に表現するのが案外難しい古語ですが、現代の感覚にも通じる一例として掲載されていたのは、次の歌です。
私も昔、この歌は何かで目にした覚えがあります。この歌の現代語訳は、ぜひ同書を読んで確認してほしいのですが、私自身も、「この本は買いかも」と心を揺さぶられました。
意外と伸びている読書量
ところで、この新聞記事で興味深かった点がもう一つあります。それは、「若者の読書離れは無理な主張だ」というデータです。
全国学校図書協会が1993年から実施している「学校読書調査」によると、過去30年の5月1ヶ月間による平均読書冊数は、高校生の場合、1993年は1.3冊。それが2004年には1.8冊、2014年は1.6冊、2023年は1.9冊と、多少の増減を繰り返しながらも、全体としては増えているというのです。
これは高校生だけでなく、中学生や小学生でも同じ傾向にあります。むしろ年少組の方が伸び率は良く、中学生の場合は1993年には1.7冊だったのが、2023年には5.5倍と、3倍近くも読書量が増えているのだそうです。この影には、電子書籍の急激な伸びがあるとのこと。数字だけを見れば、私の学生時代(1993年~2000年)の頃よりも、現代の子供らの方がよほど本を読んでいる計算です。
どうやら、紙書籍の販売量は落ち込んでいても、むしろ「読書の素材」自体の需要は伸びていると言えそうです。
また、偶然見ていたNHKのEテレでも、同じようなことが語られていました。こちらは、1/278という番組だったかと思いますが(母数が違っていたらすみません)、小説サイトの隆盛について取り上げられていました。特に本業が医師であるアマチュア作家(?)にスポットを当てていたのですが、当番組によると、単純に計算して278人に一人は、小説などの執筆活動を行っている計算になるというのです。パーセンテージにすれば、全人口の約0.3%の比率で、作家がいるということになります。言い換えれば、それだけ読書の需要があるということなのでしょう。
ある意味においては私もその一人ですが、こうして見ると、「作家」というのは特別な肩書ではなく、意外と身近にいる存在だと言えそうです。単純に「書く人」であるというのと、商業作家であるか、また大ヒットを飛ばしているかというのは別の話ですが、それだけ「書く」ことに重きを置いている人が多いのだという実証でもあります。
「文字を扱う人」の立場
そう考えると、やはり作家という立場の人は、「文字の担い手」の責任者として、自ら紡ぐ文字と真摯に向き合わなければならない存在なのではないでしょうか。
実質的に子供たちの読書量が伸びている中で、彼らにどのような作品を提供していくのか。
以前にも書いたことがありますが、やはり罵倒・卑猥な要素が散りばめられた作品は子供に読ませたくないですし、それを「自分が書きたいから」と読み手側に無理強いするのであれば、書き手のエゴでしかないと、私は思います。
私の読者ターゲットとしては、「青少年」も含まれることを前提にして書いています。結構手厳しいことを書いたとしても、どこかで「サイレントマジョリティ」の視線を意識して書けるようでなければ、読み手に対して失礼ではないでしょうか。
今年の私は、今までの「文章を書く人」(時々俳人もやりますが)に加えて、「郷土史家」としての活動にも参加していく予定です。だからこそ今回の福島民報の記事は、今の自分はどのような言葉を伝えられるのか、そしてどれだけ正しく伝えられるのか、考えさせられる記事でした。
せっかく「文章を書くのが、人より少し得意かもしれない」のです。どうせならば、その技量を世の中のためにうまく使ってこそ、「物書き冥利」に尽きるというもの。
この年になっても、まだまだ学ぶべきことは絶えないのかもしれません。
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これまで数々のサポートをいただきまして、誠にありがとうございます。 いただきましたサポートは、書籍購入及び地元での取材費に充てさせていただいております。 皆様のご厚情に感謝するとともに、さらに精進していく所存でございます。