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【書評】いつの間にか稼いでくれるすごいチーム / 金川顕教

経営コンサルタントの他多数のプロジェクトを率いる著者の描くリーダー像が簡潔に読みやすい表現でまとめられた一冊。

いつの間にか稼いでくれるすごいチーム https://www.amazon.co.jp/dp/4046024674/ref=cm_sw_r_cp_api_i_fFQdEbDW4FXWJ

おおよその内容は私の考えと一致していた。リーダーとして向かう方向性に間違いはなかったなという答え合わせのような一冊だった。いくつか印象に残った内容を紹介する。

メンバーに「何がやりたいの?」は聞いてはいけない

この台詞は私も結構浴びせられた言葉である。何がしたいの?と聞くが、結局そのセリフを言うということは、「あなたとの会話は面倒だから、さっさと要件を済ませたい」と態度で伝えていることになる。

本書でも語られているが、リーダーはチームの中で最も好感度が高くなければならない。何かあった際に相談する先をリーダーに集約することで俯瞰的に把握する情報量を増やし、問題を未然に防ぐ事ができるからだ。また、リーダーは決して怒りの感情をメンバーに向けてはならない。怒って話しかけにくい存在になったところで、ただただ心の距離が遠くなるだけでメリットがないのだ。

怒る目的を考えたときに、自己都合が多いように思える。めんどうなやりとりを減らすため、自尊心を保つため、ドヤりたい、威厳のあるリーダーになりたい、など。よく常駐先のSIer役員などが四六時中怒っている様をよく見るが、相手は萎縮してしまい、上辺だけの本心でない言葉を並べてしまっている様子をよく見る。彼に如何に怒られないような発言をするかに終始してしまい、建設的な意見交換が出来ていないのだ。いわゆる、恐怖で支配する体制だ。

威厳とは、親近感とは対極的だ。そんなことをメンバーは求めていないし、陰口の種になるだけである。自己優越感に浸りたいだけならば逆効果であるし、結果を最速で出したいなら、チームとして誰からも信頼をおける人材になる方向にエネルギーを使いたい。

343の法則

343(さしみ)の法則とは、マーケティングに用いられる考え方のひとつで、営業戦略の基本として抑えておくと良さそうだ。

上位30%は、営業しなくとも買う
中位40%は、営業次第で買う
下位30%は、どうあっても買わない

というのがこの法則。ターゲットにたいして100%の売り上げを見込むなんて愚の骨頂で、30%を70%に如何に近づけるか、と言った事になるのだろう。営業マンしたことないので分からないが。

本書ではこれをリーダーシップにも適用するとこうなるという解説がなされている。

上位30%のメンバーは、リーダーシップについてくる
中位40%のメンバーは、リーダー自信の能力を上げればついてくる
下位30%のメンバーは、どうあってもついてこない

こう考えると、そのままの自分でついてきてくれる確率は30%ということになる。10人集めた結果、リーダーの理解者は3人ということだ。これは、経験上かなり妥当な数値だ。残りの40%はやり方次第では、フォローしてくれるが、真の理解者となるには時間がかかるだろう。

残り3割はどうあっても理解してくれない。これも身に染みて感じた事があり、こちらの努力次第で指示を聞いてくれるが、それ以上の関係になることが出来ない。可能性すら感じないというメンバーも中にはいるのだ、と言うことをリーダー職をやってみて初めて分かったことだ。

アドラー心理学の言葉に「他人と過去は変えられない、変えられるのは自分と未来だけだ」というものがある。下位30%のフォローされない人間の思想を変えることは徒労に終わる確率が高い。肝に銘じておかなければいけない内容だ。

262の法則

似たような話が続くが、262の法則がある。

仕事のできる人、できない人の割合を示した有名な説だ。上位2割はできる人、中位6割は普通。下位2割は仕事の能力が低いという配分だ。

チームビルディングにおいても、この法則を意識したほうがよく、2、6、2の隣り合った人員を組ませたほうがよいというのが本書の論。これは成長のためのチームビルディングであり、仕事がもう一歩の6割の人は、上位2割の人の仕事を見ることで、仕事のやり方が分かり、成長につながるというもの。

下位2割の人員には積極的にフォローが必要になるが、同じチームに6割に属する人材を入れることで、6割の人材は下位2割の受ける注意事項や仕事の基本などを繰り返し間接的にインプットされることになるので、自然と仕事の基礎が固まるという論法である。

結局はどう言った人員も一緒にしなければならないのだが、サブチームなどの組み合わせに利用できる考え方だ。請負かいはつや自社業務など人員配置を制御できるならば、配慮すべきだろう。加えるならばローテーションなど意識して配置すると、多数の関係性の中から学びが多く、メンバー間の相互作用による成長の助けになるだろう。

教育の自動化

教育を自動化する考え方も本書に記されており、これはまさに昨年に意識して始めた内容であった。勉強会などで同じ話を二回しないためにYouTube動画を上げ始めた。

また、自分の考えを約300人の社員一人一人に時間を使って発信することは不可能なので、時間効率を上げるためにnoteなどの発信を始めた。今までビジネスマインドを言語化したアウトプットがなかったので、広範囲に言葉を届けることができなかった点の改善だ。

ただ、メンバーが人をリーダーとして認識するのは、接触頻度の多さによるとの論が面白く、以下の5通りを意識して接触回数を増やすと良いそうだ。

対面、
対話(電話など)、
動画、
音声(配信内容を聞くこと)、
文章


この中では、対面が最も強く接触効率が良いそうだ。残る4つの方法を普段から発信し、時間のあるタイミングで対面で話すと良いのだろうと思う。

質より量、量より大量

最初からクオリティ重視で始めてしまうと、量がこなせず、かつ失敗経験を積むこともできない。継続的に仕事量をこなす事で、その結果から良質な成果が生まれる。

これは私も同感で、10年間ITエンジニアを続けてると仕事の品質の良し悪しがイメージできるが、10年前の初めて構築したシステムは先々をイメージして作業出来ようはずもなかった。

Z世代の若手は、結果が先に見えるかどうか、その行動の行いが自分にとってどう効果的であるかを重視する傾向にある。言わば修行のような量をこなす類の行動に手を出しにくく感じるらしい。

つまり、今後10年程度の若手社員は自発的に量をこなす人材が少ない。しかし、量をこなす事は絶対である以上、習慣的にアウトプットを継続させる指導がリーダーに求められる。

この10年先で勝利を収めるチームは自身のアウトプットを大量にこなしたものだ。なぜなら量がこなせない人材が大多数の中、量から質を生む能力を持ったマイノリティこそ価値があるとされる未来が予測されるからだ。

他にも共感を得た内容があるので折を見て紹介したい。



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