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2030年の世界地図帳 / 落合陽一

SDGs: Sustainable Development Goals

SDGsとは、国連が定める持続可能な開発目標のことであり、貧困や紛争、環境保全など17項目に対して詳細な数値目標を設定し2030年までの達成を目指す活動である。

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SDGsに賛同し何らかの活動を取り入れる、または事業を展開する企業も増えている。環境問題への取り組みや多様性社会へ対応を組織的に推し進めている。協賛企業の社員さんたちは胸にカラフルなバッジを付けているそうだ。

あまりに不勉強だったので、気になっていた落合陽一さんの本を購入。

2030年の世界地図帳 あたらしい経済とSDGs、未来への展望

本というよりは、まず地図として将来予測図がたくさん載っていて、それらの解説がされている形式。この先10年の変化を知るのには大変読みやすく、現代ビジネスマンの基礎知識として有用な、もはや資料だ。

持続可能な、と言うからには一過性の解決であってはならない点が難しいと感じた。一過性の解決に国民が甘んじ、その後元に戻るといったケースが歴史上存在する。

本書で解説されている例は、2010年のアラブの春。
SNSを使った民主化運動は中東と北アフリカで拡大。独裁政権の打倒に成功したが、結果的に新たな独裁者が対応し、イスラム教原理主義勢力の波に飲まれた。
主旨である民主主義の成立は失敗し、今なお混乱が終息していない事は日本でも広く知られる事実だ。

持続可能性については、様々な角度からアプローチしなければならない。とりあえずやってみるでは考慮漏れが多すぎるし、深い思考の上で成り立つものだ。これはチーム形成でも同じことが言える。
国際問題や地域の紛争、アフリカを始めとする貧困問題は歴史的な根が深く、2030年までのアプローチは国家規模の取り組みが必要だ。

リーチフロッグ現象

これらの世界的な問題群の解決には次世代テクノロジーの適用が必要だし、中でも面白いのはケニアのMペサのように「近代」を飛び越えて、広範囲に流通する次世テクノロジーだ。これをリーチフロッグ現象(カエル飛び)と呼ぶ。

Mペサとは、電子決済サービス。ケニアや周辺地域に大漁に流通した安価な携帯電話は、通話時間分のSIMカードを購入する事で利用されることが一般的だったそうだ。そして余った通話時間やデータ通信量は家族や近隣住民でシェアする文化が一般化していたらしい。

ケニア周辺の貧しい地域では銀行口座を持つ事が難しく、また銀行が身近にないこともありお金の換金には利便性がなかった。

これらの環境がもたらしたのが、トークンエコノミーならぬ通話時間エコノミーである。余った通話時間を換金する事が現地では盛んになされ、通話時間によってお金を代替するような文化となった。

古来の日本で貝や預り証で取引が成立した事と同じ事が、携帯の通信量がチャージされたSIMカードで行われていたのだ。腐らず、小さく、定量性の優れるという意味で貧困の中にあって物々交換のデメリットを全てクリアしたのがSIMカードだった。

そこに目をつけ通信量を電子化したものがMペサである。今ではケニアのGDPの4割がMペサの取引である。PayPay等の電子マネーがいまいち浸透しない日本よりも、上等なフィンテック文化がケニア周辺では既に一般化しているから驚きである。

このようにテクノロジーの適用は、我々日本語圏の文化では簡単に想像できない事象を呼ぶ事がある。新興国、特にアフリカには今後SDGsの掲げる貧困等の諸問題が集中するだろうと予測されている。
この事例から、我々ITエンジニアは、テクノロジーの幅広い適用と流通を今一度考慮するべきであること、古い技術への固執を捨て、イノベーション創出のための新しい価値観が求められていることを知った。

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Kanazawa Kimihiko
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