初めて物語の中に私に似た人を見つけた日のこと(わたしの場合)
小沼理さんの『共感と距離感の練習』を読みました。
シスジェンダー男性のゲイである事を公言されている著者による、クィアコミュニティでの出来事や思い出を中心に綴られたエッセイです。
「自分の意見を表明する」聡明さと、「安易に結論を出さない」強さを持った人の言葉でした。読めてよかったです。
この本の帯に「初めて物語の中に私に似た人を見つけた日のこと」という一文があります。
著者にとっての思い出は『重なりと異なり』という章に詳しいんですが、その章を読みながら不意に思い出しました。
私にとってもそんなふうに感じられた、ある小説のこと。
私の読書遍歴の初期は、母の本棚から少なくない影響を受けています。
母はどうも山本文緒さんと江國香織さんが好きだったらしく、そのお二方の小説がひととおり揃っていまして。
で、江國香織さんの小説は当時の自分にはピンと来ず、山本文緒さんの小説をたくさん読みました。
自分よりも歳上の女性たちの物語を、いろんな事が分からないなりに手当たり次第の勢いで読んでいた時。
たどり着いたのが『シュガーレス・ラヴ』でした。
様々な病をテーマとする新鮮さを、面白く読む中で。
『夏の空色』という、アルコール依存症がテーマの短編に出会います。
当時の私はまだ未成年でした。
(中学生か高校生か……ぐらいの年齢)
だから酔っ払う感覚や、飲む度に更に強まるお酒への欲求は、まだ理解しようのないものでした。
それでもその作品を身近に感じられたのは、語り手が高校生の女の子だったから。
そして読み進めるうち、親友でもある幼なじみの同級生に、同性に対して抱く友情以上の感情を抱いている事実が判明したからです。
ラスト3行を、初めて読んだ時。
受けた感銘を今でも覚えています。
一言では表し難い様々な思いが混ざりあったものでしたが、一番大きなものを無理に言語化するなら「後悔」です。
こんなふうに考えればよかったんだ。
もし、もっと早くこの作品に出会っていたら、違う「今」があったんじゃないか。
私の感情や環境は、その時にはもう取り返しがつかなかったけど。
それでも、たまたま読んだ本の中に、自分と同じ悩みを抱える人を見つけたこと。自分の頭だけでは思いつけずにいた選択を目の当たりに出来たのは、救済とも呼べる体験だったんです。
たくさんの時が経って、今ではもう瘡蓋になっています。
(冷静に思い出すには良い頃合いだったのかも)
きっかけをくれた小沼さんの本が、過去の私のような想いを抱えた人のもとに届くことを、ひそかに祈っています。
お読みいただき、ありがとうございました。
世界は少しずつ良くなっている。そう思います。
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