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死イズポジティブ

死にたいと思わない人は今日の記事を読まなくていい。

「死んじゃおっかな~」で良い

「完全自殺マニュアル」という本を買った。つい最近買ったのではなく、ずいぶん前に手元にはあったのだが、手に入れた安心感で中身を意識的に読んでいなかった。
何かを手に入れた時、お守りのような気がして「ただそこに有れば善い」と思ってしまうことがある。本棚の中に鎮座して、ただ僕の所有物であるという事実が心地良いことがある。
この本は、まさにそれだった。

この本は1993年に発売されてからミリオンセラーを達成し、批判的意見もありつつ、長く読まれてきた本だ。
「自殺」と聞くとネガティブな印象を抱きやすく、自殺させまいとして社会の在り方だとか、良い生き方なんかを説いてくる人がいる。本にもそれが当てはまっていて、自殺に関する本の大半が「自殺したいほど嫌なことの見方を変えていこう」という内容のものだ。

僕たちはそんなのが読みたいわけじゃない。

手っ取り早く、何を飲めば死ねて、何で首をくくれば死ねて、どの高さから飛び降りれば死ねるのか。
そういうことが知りたいのだ。
もちろん、本当に切羽詰まったときはそんなこと考える余裕もなく勢いで行動に移してしまうのだが、それで失敗したのではたまったものじゃない。ならば、その1度のチャンスを確定的なものにするように知識を付けておくべきなのである。

さて、そんな願望を見事に取りまとめてくれているのがこの本だ。
道徳的なことは書いていない。前書きには「御託は並べたくないけど本を書くにあたりどうしても入れなきゃいけないので書くよ」みたいなことが書いてあり、内容も「人生の良さ」なんかを語るものじゃない。
日常ってつまらないよね、繰り返しだよね、これを変える方法は1種類しかないよね。そんなようなことが呑気に書かれていて、心地が良い。

エンジェルダスト

前書きの最後に「この本がエンジェルダストであればいい」と書かれている。エンジェルダストとは何か。

解離性麻酔薬のフェンサイクリジンの俗称。この薬は全部どうでもよくなってしまうくらい頭がいかれて飛び降りたって平気な気分になる麻薬だ。
筆者の友人はそれをお守りのように持ち歩き、「いざとなったら飲めばいいから」と言ったそうだ。
そんな最後の切り札的な存在でありたいと、そう思っているのだ。

この本を読了して、僕にとってもこの本はそういう役割であると思った。いざとなれば、いざ本当にチャンスに賭けることがあるなら、その時はこの本を服用してトんじゃおう。

僕たちは強く生きなくていい

本には11種類の自殺方法とその手っ取り早いやり方、リスク、成功率なんかをまとめている。
自分が懸念していなかった要素なんかにも気づけて、なかなか実用的な本である。
女性は入水が多いとか、5月は自殺率が上がるとか、そういう知識も増える。
客観的事実とデータを用いてうまく書いてくれているので、いざ自分に置き換えてみた時を何となく考えることが出来た。
きっと筆者はそういうことを気にしないでスパ―ンと読んでくれと思っているのだろうが、僕は読みながらぼんやり首をつっている自分の姿や飛び降りる自分の姿を思い浮かべることが出来た。

「社会は素晴らしい」「自殺は良くない」「命を大切に」なんて言葉はいつも近くにあって、酷いときなんか道徳の授業で無理矢理作文を書かされたりした。少なくとも、そういう環境とそういう意識が渦巻く社会の中で僕は生きている。
仕事も趣味も案外充実していて、生活がひどく困窮しているわけでもないのに、なぜか毎日がうっすらと靄かかっているような気がして、ほんのり毎日が辛い。そしてその辛さに耐えかねて、僕は首を吊る夢を見る。

一つの選択肢に「自殺」があってもいいんじゃないか。残された方は哀しいかもしれないけれど。生きなきゃいけない、生きなきゃいけないという強迫観念を少しだけ緩ませて、そうしたら気が楽になるかもしれない。
そう思える本だった。
生きることを強要される世の中なら、僕は死ぬことの自由も必要だと思う。生きるか死ぬかくらい自分で決められる世の中に早くなって欲しいものだ。
もし生きることが辛いと感じるなら、この本を手に取ってみるのもいいかもしれない。実行するかどうかは別として、最終兵器を持っているような気になれるから。


PS.
僕は自分の葬式のシュミレーションするのが好きなので良く想像するのだが、出棺には絶対マツケンサンバを流して欲しいと思っている。
いずれは皆に訪れる「死」をポジティブに捉えることで、肩の力が抜けるよ。僕は首吊りで死にたいかなあ。

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鬼堂廻
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