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短編箱

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【小説】白いサザンカ

【小説】白いサザンカ

ロンさんと僕はその日、居酒屋に居た。
「ほんでなぁ、俺、そいつのこと好きやってん」
長い長い前置きののち、ロンさんが言った一言に僕は、その後の返事をどうすべきか悩んだ。

僕たちは安い大衆居酒屋に居る。
壁に雑に貼られたおすすめのメニューはヤニが付いて黄色くなっていたし、電気の傘には埃が積もっていたし、周りにいる人たちがどこか目が虚で何か探し求めているような、雑踏とした店だ。
比較的大学から近いこ

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