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郷愁と愛

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すきだからね。
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2021年10月の記事一覧

京都紀行文④

京都紀行文④

4日目の朝である。あいにくの曇天だがまだ泣き出しはしないらしい。安心した。ホテルの食堂で流れているニュースを見ながら朝食を摂り、今日の予定をぼんやり頭の中に描いていく。行きたい場所は決まっているので後はどう回るかである――(3日目はこちら)

八木邸今日は新選組巡りをすると決めていたので、まずはホテルの西側に位置する八木邸へ向かうことにした。一駅分電車に乗って四条大宮へと到着し、住宅街を縫うように

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京都紀行文③

京都紀行文③

京都3日目。曇天続きだった京の都に、晴天が垣間見える。季節はもう秋だというのにどこかじっとりとした夏の空気が混じる。朝食を済ませた後、何も決めていなかった3日目をどう過ごすか逡巡した。足の向く方へ行こう。僕はとりあえず外へ出てみることにした——(2日目はこちら)

四条~祇園四条方面へ裏道を進みながら新京極の方面へ向かう。新京極のカフェで時間でも潰そうかと思ったが、時刻は9時30分。さすがに店が開

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京都紀行文②

京都紀行文②

2日目。行きつけのホテルは四条烏丸あたりなので非常にアクセスが良い。僕は四条辺りが好きで、夜散歩に出かけたりする。
お世話になっているホテルは朝食が非常においしく、(写真は撮っていない)満腹の状態で出発できるのが助かる。(1日目はこちら)

御金神社烏丸を北上し、二条城の方面に歩いていくと、閑静な住宅街の中に御金神社が現れる。金属と鉱物の守り神である「金山毘古命」を祀った神社である。
どこに行こう

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僕と紅茶と…

僕と紅茶と…

僕はゆるゆると紅茶を飲むことが好きで、それはその紅茶の香りだとか味とかに固執するわけではなく、ただひたすらに紅茶を飲むという行為、またはそれによってもたらされる空間や時間が好きだという意味に近い。
ふわりと立ち上るはるか遠くの国を想像させる香り。じんと腹の底から熱くなってくる感覚。ゆったりと流れていく時間と纏まらない思考が落ち着く瞬間。
そういうモノが好きで、僕は紅茶を飲む。
だから、正直言って茶

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京都紀行文①

京都紀行文①

先月、気晴らしに京都へ足を運んだ。
梶井基次郎は京都から逃げ出して何百里も離れた仙台や長崎にいってしまいたいと檸檬で述べていたが、僕の逃げ出す先はこの京都だった。
東京のギラギラとした喧騒と希薄な人間の佇まいなどから離れたくなって、逃げるように京都へ向かったのだ。
先に断っておくが、療養のためではない。僕は僕自身の心の安寧を求めて京都へ足を運んだ。

京都へ向かう時の僕は実に乙女的で、まるで京都に

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