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2年かけて4pの創作漫画が描けなかったイラストレーターが1年間で474Pの漫画を描き切るまで

漫画描きたいのに、描けないってしんどくないですか?
…私はかなりしんどかったです。

「創作漫画を描きたい!」と思ってからそこから約2年、描きたいのに数ページの漫画ですら描き切ることができませんでした。
しかし、その後急に描けるようになって、1年間(2022年11月〜2023年10月)で474ページの漫画を描き切ることができました。

「2年かけて4ページの創作漫画が描けなかったイラストレーターが474ページの漫画を描き切るまで」
この記事を書いている事をXでつぶやいたら、想像以上の反響がありました。

それだけ私と同じように漫画を描きたいけどなかなか完成をさせる事ができない人が多いのかな?と感じました。

「頭の中に大作はあるけど…と言う人は、言うだけで漫画を完成することはできない」
と言うことは、たくさんの方が言っています。
私も「漫画を描きたい」と思いたった時に、頭の中に200P超の大作が思い付き完全にその沼にはまった一人でした。
でも、中には頭の中の大作をちゃんと形として実現する人もたくさんいると思います。
「頭の中の大作」が邪魔して、2年間4ページの漫画すら完成することができなかった私が382ページの作品と、他の作品を含めると合計474ページを、イラストの仕事をしながら1年間(2022年11月〜2023年10月)で描き切った体験を、原因と対策、実際に取り組んだことなどをまとめました。

自分自身まだまだ手探りで、誰かに漫画の技術を教えるような立場ではありません。
なので、ここに記したのは私が描けなかった理由は何だったのか、それに対して実際に私にやったこととその結果などです。細かい技術や表現方法などはおすすめの技法書などを紹介していますので、そちらを参考にしてみてください。
是非最後までお付き合い頂けましたら幸いです。





【第1部】 はじめに


最初にこの記事を書いた目的を記しておきます。

  1. ひとりでも多くの人に私の作品を知ってもらう為

  2. 作品の一つ「筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた」は書籍化が夢であり目標なので、出版社の方に知ってもらう機会にしたい。

  3. 描きたいのに描けない時期はとても苦しく、同じように描けなくて苦しんでいる人のプラスになればとても嬉しい

この記事を読んで私の作品に興味を持って、もしひとりでも読んでもらう機会が増えたらそれが私にとって大きな見返りなので、この記事は全編無料で公開しています。


■自己紹介

簡単な自己紹介です。

ストーリー性のある何気ない日常を切り取ったイラストを描くのが得意なイラストレーターです。
普段はこんなオリジナルイラストを描いています。
ここ数年は漫画を描きたくてなかなか描けていませんでしたが…。

オリジナルイラスト「パパ、ピクルスたべて!」


オリジナルイラスト「お姉ちゃんも昔はいっぱい泣いてたんよ」

お仕事では、親しみやすい絵柄や雰囲気のイラストを活かして、出版・広告、カットイラストからメインビジュアル、ポスターなど幅広く手掛けています。
イラストのお仕事、お気軽にお声がけください!


制作実績「ケーススタディでしっかり身につく! Google Apps Script超入門」


制作実績「株式会社ティエラコム様 夏期講習会ポスターイラスト」
毎年制作させて頂いている学習塾のイラストです


制作実績「わかやま「里親」スマイルブック 漫画制作」

漫画はお仕事でご依頼があれば描いており、全く0からのスタートではありませんでした。
ただ、クライアントワークの漫画と創作のストーリー漫画は似て非なる物で、そんな所も話していければと思います。

他にもイラスト作品はたくさんあります。
私のポートフォリオサイトに掲載しておりますので、ぜひご覧ください。




■漫画作品の紹介

本題に入る前にタイトルにある1年間で描いた合計474ページの漫画を紹介したいと思います。

ひとことで「474ページ、漫画を描いた」と言っても、今この記事を読んでくださっている方の求めているクオリティはそれぞれきっと違います
私の作品を実際に読んでみて「いやいや、これだったら参考にならない。」と思う人もいれば「いいなぁ、このくらい描けるようになりたい。」と思う人もいるかと思います。
はたまた、この記事を読んでくださっている方がもし漫画家を探している人なら、仕事を依頼したいと思える水準の物かを、実際に私の描いた漫画作品を見て判断して頂ければと思います。

全て読むと時間がかかりますので、まずどれか1つだと読むとすると2作目の「そんな事どうだっていいんだ」が、48Pの読み切りなので、サンプルとしてオススメです。




【1作品目】 ハートフルストーリー

<制作期間>
1話:2022年11月3日〜11月17日
2話:2022年11月23日〜12月9日
3話:2022年12月9日〜2023年1月12日
(3話制作中は他のネームも色々作った)

<ページ数>
第1話 8ページ
第2話 16ページ
第3話 17ページ の 合計41ページ

創作漫画の第1作目です。
しゃべる鳩と青年が恋の相談をすることで友情を深める、ギャグまじりのハートフルストーリーです。
1話完結の構成で、Xよりもジャンプルーキーで割と人気でした。
「続けて!」と言ってくださる方もいて、私も楽しく描ける作品なので、楽しみながら4話5話と描いて行こうと思っています。


【ハートフルストーリーが読めるところ】

▼ジャンプルーキー

▼ニコニコ静画




【練習作品】 判断するって言うことは…

<制作期間>
2023年11月20日〜2022年11月30日

ハートフルストーリー第1話を描いた後に練習で描いた3Pの漫画です。
素直になれない生真面目な後輩と、一見適当そうに見えて可愛い後輩の成長や成功を願っている先輩のお話です。
練習なのでワンシーンだけ切り取ったような漫画です。

元ネタは、X(旧Twitter)の私の別名義で昔つぶやいたらバズった、

と言う言葉をストーリーにし、練習として漫画を描きました。

1/3
2/3
3/3

この二人なんだか可愛くて気に入っているので、ちゃんとしたお話にして、また描けたらなぁと思っています。




【2作品目】そんな事どうだっていいんだ

<制作期間>
2023年1月3日〜2023年3月2日

<ページ数>
48ページの読み切り

創作漫画の第2作目です。

「人の目を気にする男の子がエスカレーターで想いを叫ぶ話」と言うタイトルで、2023年4月にX(当時Twitter)へ投稿。
1.2万いいねを得て、ウェブザテレビジョンにインタビュー記事も取り上げて頂きました。
同じような想いをした人たちがたくさん共感して、たくさんご感想を頂きました。

▼webザテレビジョン インタビュー記事


▼note にもアップしました。

▼ジャンプルーキー!

★最終的に賞には選ばれませんでしたが、たくさん読んでもらい、ジャンプルーキー!での2023年11月・ルーキー賞のランキング1位になりました!★


▼ニコニコ静画

48Pの読み切りで、1作目の「ハートフルストーリー」よりも創作漫画の制作に慣れてきた時の物なので、とりあえずクオリティとかを見て頂くには、この1作を読んで頂くのが良いかと思います。



【3作品目】筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた

<制作期間>
2022年11月23日〜2023年10月8日
(ただし、大雑把な構想はこの時期よりも前にできていた。文章化したり具体的に落とし込んでいったのが、およそ2023年11月23日頃から)

<ページ数>
全10話(382ページ)
10話に分けていますが1話完結の話ではないので、1本の映画のような感じで読んでもらえたらと思います。
だいたい単行本2冊分です。

この作品が思いついてしまった頭の中の大作、沼にはまって2年以上描けなかった原因のひとつでもあります。

小学生の頃、クラスメイトに自分の考えたキャラクターを盗作されて絵を描くのをやめた1人の男性の、過去との決別、再生の物語です。

SNSが普及する今の世の中で、たった1人が強く認めてくれる力の強さや、例え拙い物でも心を込めた作品の持つ力を描きました。
生成AIで形が簡単に奪われてしまう今だから、ぜひ読んでみて欲しいです。

この作品にはたくさんのご感想を頂き、そのご感想の一部を第5部で紹介しています。


【Xの他に「筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた」が読めるところ】

▼noteにも投稿しました


▼[ニコニコ静画]
コメントとか入れて、是非にぎやかしながら読んでもらえると嬉しいです!

▼Pixiv

▼LINEマンガインディーズ

▼コミチ

(縦スクロールで読むならコミチ)

▼ジャンプルーキー

(ジャンプルーキー!にも投稿しているのですが、表現の規制で最終話の少しだけ内容を変えているので、できれば他の媒体で読んで頂けたら嬉しいです。)

★この作品に関しては書籍化を目指しており、興味を持ってくださった出版社様がいらっしゃったら、是非お声がけください!★

連絡先:contact@jupachi.com



■漫画を描きたいと思ったきっかけ・目指す漫画家像

前置きが長くなってしまっていますが、「漫画を描く」と言っても、いわゆる商業誌の連載漫画家になりたいのか、それとも広告漫画などのビジネスとしての漫画の仕事を得る為の技術を得たいのか、自分の描きたい物を表現できるようになったらそれでいいのか、と色々なケースがあると思います。
私が目指している方向を知った上で記事を読んで頂いた方がよりプラスにはなると思っておりますので、目を通してもらえれば幸いです。

1)喜怒哀楽、様々な感情を描けるようになりたかった。
2)漫画のスキルを伸ばし、広告漫画・企業漫画などの受注を増やしたかった。
3)自分の伝えたい事を表現して、誰かの心をもっと動かしたい。
4)小学生の頃、漫画家になりたかった。漫画を描くのが好きだった。

大きく分けてこの4つです。


1)喜怒哀楽、様々な感情を描けるようになりたかった。

自己紹介でご覧いただいたオリジナルイラストのように、ほっこりしたにこやかなイラストを得意としています。
でも、描いたキャラクター達もその笑顔に行き着くまで、色々な悲しみとか怒りも乗り越えて、笑顔でいられる時間があるんだと思います。
にこやかで幸せそうなイラストをたくさん描けば描くほど、喜怒哀楽色々な感情を描かずに、本当の笑顔を描けた事になっていないような違和感を感じるようになりました。
とは言え、いきなり怒っている一枚の絵を描くのも自分の描く世界観とは違うとも感じていて、色々な感情を表現するには、感情の流れを描ける漫画が今の私にとって最適だと感じたからです。

今までの私のにこやかなイラストを見ていた人からは、きっとあまり私が描くようなイメージにない感情を描いたコマ。


2)漫画のスキルを伸ばし、広告漫画・企業漫画などの受注を増やしたかった。

漫画がコミュニケーションツールとして高い能力を発揮するのは、企業などで多く使われていることでもよく分かります。
元々そういった企業向けの漫画は制作していたのですが、自分自身のオリジナル漫画を制作することでよりスキルアップして、企業向けなどの漫画制作の受注を増やしたいと考えたのも理由のひとつです

ここで言うスキルアップは主に、「伝えたい事、表現したい事を、分かりやすく読みやすく描けるようになる」ことです。

また、数年前に1度クリエイターEXPOに出展しました。
そして、漫画の需要の多さに驚きました。
その時、来場者の方に自分の漫画を見せる時、クライアントワークの漫画を自分の代表作として見せる事に違和感を感じました。

私は名義を2つ持って活動しておりまして、この「じゅーぱち」の方は作家としての色が強く、なんでも描きますよと言うスタンスより、まずはオリジナルの創作イラストがあり、その雰囲気や作風を大切にしています。
その為、漫画でもイラストと同じようにまず自分の作品・作風が欲しいと考えました。


3)自分の伝えたい事を表現して、誰かの心をもっと動かしたい。

「パパ、ピクルスたべて!」と言う私のイラスト作品を見た方から、「この絵を見て、昔両親してもらった事を思い出して久しぶりに会いにいきました」とコメントを頂きました。
他にも「この人の絵を見るたび、この絵の中の住人になりたいと思ってしまう」とかそういうコメントを頂いたことがあり、こういうコメントをもらえた時の喜びは何物にも代えがたく、私にとっての絵を描く喜びでもあります。
イラストだけではなく漫画を描くことで、表現の幅を広げる事ができ、もっと誰かの心を動かせるんじゃないかと思ったのも大きな理由の一つです。


4)小学生の頃、漫画家になりたかった。漫画を描くのが好きだった。

最後は、私も小学生の頃の夢は漫画家だったと言うことがあります。

「漫画家」と言う肩書きにこだわりはないのですが、小学生の頃漫画を描くのがとても好きで、やっぱり漫画をもっとちゃんと描いてみたいと言う気持ちがイラストを描いているうちに芽生えてきました。
また、書籍化と言う子供の頃に見た夢をこの歳で実現して、自分自身にも3人の我が子にも「遠回りしても夢は叶う事はあるんだよ」と証明できたらと思っています。




第2部 描けなかった原因と描けるようになった対策と行動


■描けなかった4つの主な原因


・頭の中の大作が邪魔をして、何から手をつけていいか分からない


冒頭にもあった頭の中に大作があるけど漫画を完成させることができない。と言う沼に私もどっぷりとハマっていました。
私にとっての頭の中の大作は3作目の「筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた」でした。
自分の中でどうしても描きたい事、表現したい事があって、でも話がどんどん膨らんで大きくなってすぎて何から手をつけていいのかも、何をどうしていいかも分からない。
思い切って描こうとするけど、手を付けようとすればするほど違う気がする…をずっと繰り返していました。

あまりにも描けない自分に「ああ、自分は創作漫画を描きたいのに、多分描けずに終わる人生なんだ…」くらい落ちていっていました笑

打開策として、まずは短い漫画を描こうと、夏休みを題材にした少年の漫画を進めていたのですが、描けば描くほど「これ違う…」と気持ちも乗らず、「これ描く時間あるなら、やっぱりこの一番描きたいやつを…」と、頭の中の大作が気になっての繰り返しで、どうしても完成することができませんでした。

どうしても描き切れなかった夏休みの漫画
物語全体のネームが出来てないのに、とりあえず描けそうなページだけペン入れしてみたり段取りもしどろもどろ


・プロとしての無駄なプライドが邪魔をする


私の場合、すでに企業様から依頼の漫画制作の経験があり、漫画を描く事で収益を得ている立場でした。

漫画家と言う定義も曖昧で、漫画家といえばエンタメとしてのいわゆる漫画雑誌などで連載の経験がある人以外プロの漫画家とは言えないと言う人もいれば、漫画をコミュニケーションのツールとして制作して、企業と取引をして収益を得ていれば、それはプロの漫画家だと言う人もいます。

エンタメとしての漫画を長く教えている方に、過去のクライアントワークを見せた時に「ああ、もうプロとして描かれている方ですね」と言われたり、漫画家の人に「あなたもプロの漫画家ですよ」と言われた事もあるので、イラストだけでなく漫画もプロとして描いていると認識されている自覚がありました。

そのため、それが例え創作の漫画であってもクオリティの低い作品を世の中に出すのは、マイナスイメージになるリスクが高く、余計にプレッシャーを感じて完成をさせることの邪魔になっていました。




・自分で自分にOKを出すことの難しさ


漫画そのものの制作の経験は0ではなかったのに、いざ自分の創作漫画を作るとなるとなぜ作れなくなるのか?今思うととにかく自分にOKを出すのが怖かったように感じます。

普段のクライアントワークだと、お客様の要望、その漫画で得たいビジネス効果、形にしたい表現とか、ある程度目的とかがはっきりしています。
はっきりしていない事があればヒアリングして「この効果を得たければここが大事なのでこうしましょう」とか提案して、互いに客観視しながら時には修正をして完成に向かって制作を進めていきます。
いずれにせよ、最終的なOKは依頼側が出します。

創作漫画は人を楽しませることが大きな目的の一つで、今までしてきた仕事の漫画はコミュニケーションツールとしての役割が強く、どちらが難しくてどちらが簡単と言う事ではないのですが、技術的に共通する事は多くても目的の部分で大きく違う場合があります。

そんな中、最初は「これは面白いはず!」と描き始めたはずなのに、毎日同じ作品に向き合ってるうちに、どんどん「これ…面白いんか…!?」と分からなくなってくる時があります。
人を楽しませる事が大きな目的なひとつの創作漫画なのに、面白いのかも分からない…。

そんな悩んで悩んで冷静に客観視できなくなった面白いのか何とも言えなくなった自分の漫画と、ハードルだけ上がってしまった自分の漫画観にからまりながら、自分で自分の漫画にOKを出すことがとても怖くなっていたのだと思いました。




・先に本やYouTubeで勉強をしすぎて、頭でっかちになっていた


今思うと、色々と先に勉強しすぎて頭でっかちになっていました。
漫画の教本的な物があれば読み、YouTubeでもベテランの漫画家さんの対談から添削モノまで色々見ていました。

「最近の漫画は言いたい事を全部書いちゃうから奥ゆかしさがない」
「ここのスペースがなんか気持ち悪く感じちゃうんだよね」
漫画を何千何万ぺージと描いてきたからこそ見える先輩方の漫画論を目にしていると、やはり少しずつ心が萎縮してしまいます。

もちろん、ずっと漫画に向き合ってきた人と描き始めたばかりで同等の目線を持てるなんて思っていません。
でも、例えばスポーツでも試合に出てフィールドに立てば、ルーキーだろうがベテランだろうが関係なくなります。
絵や漫画も同じで「自分も漫画を描いて金銭を得ている身だから、投稿して見てもらうにはこんなんじゃダメなんじゃないか…。」
それとこれとは分けて考えないといけないと頭でも分かっていても、そんな事が頭をよぎります。
勉強しているつもりがどんどん自分に呪いをかけて沼にはまっていっていました。

そのような情報を描く前から大量摂取してしまい、自分の初めて描く漫画が必要以上に低レベルに見えて、描くのが怖くなってしまっていたような気がします。

その上で自分の中でこの本が最初の1作を作る上で良かったと思える物があるので、第3部の私がした具体的な勉強法で紹介したいと思います。
描けない理由として「自分は技術や知識が足りない」と思いすぎている人もきっと多いと思います。
でも、もしかしたらすでに最低限描けるのに、頭でっかちになって自分の描く物がどうしても全く魅力のない物に見えて描けずにいる人もたくさんいるのではないかとも思います。




■描けるようになった理由、描けるようになる際にしたこと、心がけたこと

ここでは、描けなかった理由に対して、何をして描けるようになったかを書いていきます。


・短いストーリーの漫画から描く


よく言われている事ですが、4ページとか8ページとか短い物から描くのが良いと言います。
これは本当にその通りで、このなんとか長い漫画を描き切れた1年間の経験から、いきなり長編にチャレンジするのはほぼ不可能なんじゃないかとさえ思いました。
実際に、8ページの「ハートフルストーリー」の1話を描いてから、嘘のようにどんどん描けるようになりました。

ただ、短い漫画から描きたくても、夏休みの短い話すら描き切れなかった私と同じようにそれができないから困っていると言う方も多いのではないかと思います。




・専門の先生に見てもらう


私が4ページの漫画すら描けなかった一番の原因は、すでに漫画で金銭を得ているプロとしてのプレッシャーとその上での自分自身にOKを出す難しさだったと感じています。

私の場合、専門の先生に見てもらうことで解消しました。
とある先生にウェブサイトから直接コンタクトを取って事情を説明をして、週に1度1時間オンラインで見てもらう事になりました。

指導して頂いた事は、主にアイデアの出し方とかそういった一番最初の段階の事でした。

いくつか先生にアイデアを提出して、その中で「海を眺めていると、鳩が喋りかけてくる」と言うのがあり、「面白いですね、描いてみましょう」と言ってくださり、そこから話を広げてネームに起こしました。
そうすると、2年間全くかけなかったのが嘘のように8Pネームが完成しました。そう、今までの苦悩はなんだったの?と言うくらい。
この時に作ったネームが創作1作目のハートフルストーリーの1話です。
文に起こしてネームにするまで、かかった合計時間は確か1日分くらいだったと思います。

あんなにもネームすら完成することができなかった私が急に8Pのネームを完成させることができたのは、やはり漫画に真剣に向き合っている人の「いいですね」と言う一言が持つ力だったと思います。

「海を眺めていると、鳩がしゃべりかけてくる」と言うアイデアに自分自身が強く「これだ!このアイデアこそ自分の求めていた物だ!」とも思いませんでしたし、仮にこの話のアイデアが先生に見てもらう前に浮かんでも、自分ひとりで描こうとしているうちは、納得して採用することはできなかったと思います。

私が教えてもらっていた先生は、最初の1作を作るのにとても素晴らしい先生でした。
私の場合、指導してもらったのは技術的な事より主に最初のアイデアの出し方とかでした。

ただ、先生はなかなかルーズなところがあって、12回の受講のうち4回が寝坊やすっぽかしがあったり、次までに読んでおきますねと言っていたのに読んでいなかったり、次はこういうのを教えてほしいとお願いして、「じゃあ次は◯◯を教えますね」と言っていた事が次の授業が反映されていなかったり、そんな事が続いたので信頼感が薄れてしまい、当時の私にとってとても価値を感じていた先生の「いいですね」と言う言葉を素直に受け取れなくなってしまったので「筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた」の制作をスタートしたくらいの時期に受講をやめてしました。

「いやいや、そんな寝坊とか小さな事…」と2回目・3回目は自分に言い聞かせたのですが、私自身が納期とかそういう細かい事を守って信頼を築いてきたと思っているイラストレーターなのでどうしても飲み込む事ができませんでした。

そんな事もあったのでここでは紹介はできないのですが、描けなかった漫画が描けるようになってとても感謝していて、教えていることは素晴らしい先生だったと思います。

アイデアの出し方とかストーリーの作り方の教本は、探したら色々とあります。
本を読んで、それで漫画を完成できればそのまま2作目・3作目と進めていけばいいと思いますが、アイデアはあるのにどうしてもネームを起こそうとするとひっかかって完成できない方は、もしかしたら私と同じような「自分でOKを出す恐怖」にひっかかっていて、短い作品ですら完成できないのかもしれません。

そんな人は私と同じように専門の先生の「OK」と言う言葉だけで、嘘のようにスルスルと描けるようになるかもしれません。
定期的な受講でなくとも単発の受講でも充分効果はあると思います。
今の世の中、情報に溢れているので、講師に直接見てもらう意味はない、独学でいけると思われる方も多いと思います。
実際に本や動画だけで独学でいける人もたくさんいます。
しかし、漫画に精通した人に実際に作品を見て意見をもらえるのは、本や動画で勉強するのとは違う価値が間違いなくあります。
みなさんもご自身に合った先生をぜひ探してみてほしいです。




・1作描いたらそのまま勢いに乗って描いた


ハートフルストーリーの1話を描いたのちは、先ほど紹介した先輩後輩の3Pの練習作品の「判断するって言うことは…」を作りました。

たった3Pの漫画ですが、それはもうスルスルと出来上がりました。
この練習作品の製作期間は2023年11月20日〜2022年11月30日とありますが、仕事とか「筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた」の土台作りとか色々並行して作っていたので、実際にかけた時間は完成まで2日もかかったか?と言うくらいすぐ出来ました。
2年かけて4ページの漫画すら完成できなかったのに…。

その後は、そのまま勢いに乗って次はハートフルストーリーの2話(16ページ)・3話(17ページ)に取り掛かりました。
そして上記の先輩後輩の続きの話の20ページのネーム、他にも公開はしていない40ページのネームと、どんどん描いていきました。

その間は意識的に技法書やYouTubeを見たりするような技術的な勉強は控えるようにしました。
また知識を詰め込むと頭でっかちになって手が止まってしまうと思ったからです。
それよりもどんどん描いて、描けるということを手に憶えさせる事を優先しました。

ただ、これは頭でっかちになってしまっていた私の場合なので、頭でっかちになる前にスムーズに描けた人は描けたら勉強して、段階を踏みながら並行して技法書を見ながら勉強していくのも良いのかもしれません。




・自分の体験談から物語を作る。ただし…


ハートフルストーリーを計3話完成させた後に、公開していない読切漫画のネームは2つあったのですが、それは完成させずに、創作2作目にあたる「そんな事はどうだっていいんだ」の制作に取り掛かりました。

これは私が高校の時、アップルパイを作って家に来てくれた優しくて素敵な彼女がいたのに、周りに「かわいくない」とか色々言われて別れてしまった自分の心の弱さと後悔から描いた漫画です。

これは話の案としては、描く1年近く前から考えていた話だったのですが、これも形にできずにいました。

私にとっての頭の中の大作「筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた」も、私の小学生の頃の体験からストーリーを作り、伝えたい事や表現したい事を詰め込んだものなので、どんどんふくれ上がってしまい、処理しきれない大作になり沼にはまりました。

漫画は自分の体験をネタに描くといいと言うのもよく言われている事です。
しかし、少しこれはケースバイケースとも思っていて、この「そんな事はどうだっていいんだ」は自分の体験、後悔から「どうか人の目なんて気にしないで、大切な物を手放さないで」と言う私の強く伝えたいこと、表現したい気持ちが含まれていました。
「筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた」には、もっとたくさんの表現したい事や想いを込めていました。

想いが強ければ強いほど話は膨らみページは増えますし、完成度を求めてしまって、「ああ、こうじゃない…全然描けない」となってしまい手が止まってしまいがちでした。

「漫画を描くなら自分の体験談を元にすると描きやすい」と言う言葉を聞いて描き始めたはいいけれど私と同じように想いが強すぎてハードルが高くなりクオリティを求めてしまってペンが止まってしまっている人もいるのではないでしょうか?

最初に描く漫画として、自分の体験を元にした漫画を描こうとして筆が止まってしまう場合は、もっともっと些細な体験を題材にする方が良いかもしれません。




・描きたい物と描ける物は違う


作品を見てもらった時に「じゅーぱちさんは心の成長が描きたいんですね」と、複数の方に言われました。

創作2作目の「そんな事どうだっていいんだ」も「筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた」も少年が過去を乗り越えて成長する物語です。
描きたいものは自分でもそういう「心の成長」とかなんだなと思う一方、一番そういうのを描くのが得意かと言うとそうでもないようで、実はハートフルストーリーのようなくだらないギャグを描くのが一番得意なようです。
毎度ネームを考えるのは大変ですが、ハートフルストーリーのようなネタは自分にとってはハードルが低いようで、すらすらとネームができてしまいます。

ハートフルストーリーはジャンプルーキーで割りと反響があって、「つづきを描いて欲しい」と言ってくれる人もいて、「じゃあ考えてみよかな」と思ったら、すぐにさらに2話分のネタができました。
(この記事に手間取って、まだ漫画は描けていませんが汗)
多分自分が描きたいと思っているテーマの物よりも、こういうちょっとギャグまじりの物を考えるのが得意なんだろうなと感じました。

あと、色々な本を読んでいると「描きたい物を描こう」とか、「あなたが描きたいと思って描いた漫画が一番面白い」と言う言葉を目にしますが、こういうのもなかなか呪いだと感じていて、最初は「描きたい!」と思って考えだしたのだけど、描いているうちに「これ…本当に自分が一番描きたい物なのかな…、自分が描きたい物が一番面白いって言うしこれじゃダメなのかなぁ」と雑念が入ってしまい手が止まる事がありました。
多分これは「好きと思って描いた漫画は素晴らしい」と言う類の言葉が足かせになっていた気がします。
私も、こうした心の成長を描いた作品を「自分の描きたい物」と思い完成させましたが、ゆるーい世界観のちょっとファンタジーのような物が描いてみたいという気持ちもあります。

「これが描きたい!!」と一心不乱に取り組める人はいいのですが、「自分の一番描きたい物、好きな物」って、けっこう見つけるのは難しいと思っていて、なんとなくスムーズに浮かんだ物があれば、それはもしかしてその人にとっての「描ける物」かもしれないので、それがめちゃくちゃ「好き」と感じなくても1作目は「いや、これは俺の描きたい物じゃない!」と思わずに、描いてみるのも突破口になるかもしれません。




・最初の目標や自分の理想像を思い出す


他の方の作品を見ていると、素晴らしい画力に迫力、色気があったり、斬新で深いテーマがあったりと、どうしても自分の作品が見すぼらしく感じてしまう時があります。
382ページの「筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた」は初期の段階から実質1人で制作を進めていて、日々「これで良いのだろうか?」と不安との戦いでもあったので、誰かの作品と比べては落ち込むというのは何度も繰り返していました。

そんな中で、落ち込んでしまいそうになった時に自分に言い聞かせていたのは、「とりあえず話の内容がちゃんとわかるもので、感情がしっかりと表現できていればそれでOK!」と当初自分が漫画を始めた時に目標でした。

他人と比べるなと言われても、やっぱり比べてしまうし、時には比べることもとても大事です。
でも、本来自分が目標として目指していなかった所まで、他人と比べて失望する事はないと思います。
例えば私のような漫画だと迫力やカッコ良さってそんなに必要ないと思います。(もちろんあれば良いのでしょうが)
そこを比べて自分にガッカリするのはもったいないです。

「筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた」を最後まで描き切れたのは、自分にガッカリしても、「そうだ、自分の当初の目標は話の内容がちゃんと分かりやすくて、感情が伝わる漫画を目指してるんだった」と時々立ち返って自分に言い聞かせていたからだと思います。

自分の伸ばしたかった事は何かを思い出して、反省や改善はしながらも必要以上に自分の心を傷付けないように上手に守っていきたいですね。

あと、少し話は脱線しますが、「自分しかできないこと」「オンリーワン」って言葉も、けっこう自分の心を追い詰めてしまうことがあると思います。
私は「ありきたりでも、自分だから表現できること」って考え方の方が好きです。

私の経験や伝えたい想いを込めた漫画、「筆を折りかけた僕に女神さまは舞い降りた」も「そんな事どうだっていいんだ」は、尖った作品でもないですが、たくさんの人に感動したと言ってもらえました。

もしかしたら誰も経験した事のあるような事だったから伝わったのかもしれません。
あなたの想いを込めた作品が、誰かから見て平凡な作品でもきっと大丈夫だと思います。




第3部 私がした具体的な勉強方法・漫画の作り方


■私がした具体的な勉強方法

4ページの漫画すら完成させる事ができなかった最初の2年間。
その間何もしなかったのかと言うと、ずっと勉強を続けていました。
それまで勉強していた知識があったおかげで、1作目を描いてからは堰を切ったようようにどんどん描くことができて、この1年間で484ページの漫画を完成することができたのだと思います。

描けなかった理由に「勉強しようとしすぎて頭でっかちになっていた」と書きましたが、これはいきなり上級者向けの情報も同時に習得しようとしていたせいで、勉強した事がダメだった訳ではありません。
ベテラン漫画家さんの対談や添削も本来はとてもありがたいもので、勉強することはとても大事です。




・本で勉強をする


その上で、最初の1作を描くにあたって、私が個人的に1作目を描くのにこれは良かったと思う本をいくつかピックアップしたいと思います。


●かとうひろし先生の本2冊

最初の1作を描きあげるまでは、この2冊だけを繰り返し読むぐらいでいいんじゃないか?と思えるくらい良かったと感じた本です。
「なるほど」とうなりながら読んでいました。

この本を徹底的に読んで、まず読んで意味のわかる漫画を目指して描いてみて、短いのが完成できたら次のステップくらいでいいかもしれません。


●東京ネームタンクさんのコマ割り本

こちらもすごく勉強になる素晴らしい本でした。
途中から添削になるのですが、これは例題を提供してくれているので、実際に自分で描いてみるといいと思います。
自分の場合、気持ちばかり焦りすぎて、自分の作品として公開できない練習用の作品を作るのが時間がもったいないような気がしてこの練習問題をしなかったのですが、おかげですごく遠回りをしたと思っています。


●田中裕久先生の漫画の作り方が丁寧に書かれている本

これを読んで短い話が作れなかったら、私と同じで自分でOKを出すことに恐怖を感じている可能性がある気がします。
そんな方は直接誰かに作品を見てもらうことで完成できるようになるかもしれません。




・「なぜこういう表現を使っているのか」と言う事を意識して読む


実際にプロの漫画家の描いた漫画を読む上でしていた勉強法として、毎晩「なぜこのコマはこういう表現をしてるのだろうか?」と考えながらたくさんの漫画を読んでいました。

例えば、このコマはシーンの切り替え、これは時間の経過のコマ、このシーンがあることで2人が同じ部屋にいることが分かるコマ、このコマは何か次のコマで起こることを予感させる…とか、頭の中で「このコマで表現したいのは何か?」を自分なりにできるだけ言語化して読み進めていました。

筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた 5話から
筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた 5話から

他の方の漫画作品を勝手アップしたり、描き込んだりするのは当然NGなので自分の作品で例にしていますが、例えばこんな感じでそのコマが何を言おうとしているかを自分なりに答えを出しながらずっと読んでいました。




・「分かりにくい」と感じたら、自分ならどうするかを考える


色々な作品を見ていると、描いた方に失礼なことですが たまに「分かりにくい」と感じる時があります。
もちろん私自身が若い頃より新しい漫画を読む為の理解力が低下している事もあるのでしょうし、その漫画が親切な分かりやすさより、テンポの良さや、ダイナミックな迫力を優先した作品かもしれません。
その作品がダメとかそう言う意味ではありません。

でも、私の場合、分かりやすい漫画を描けるようになると言う明確な目標がありました。
何か違和感を感じた時は学びのチャンスなので、自分の中でなぜ分かりにくかったのか、自分ならどうすべきかをその都度考えてみました。

筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた 3話

また自分の作品を例にしていますが、上の画像は私の作品の1ページで、
あまりいいコマ割りの仕方じゃないと思うページです。
なぜかと言うと、右上の5コマから順に下へ見ていかないといけないのですが、1コマ目を読んだ後、すぐに視線が左の大きいコマに行ってしまいそうだからです。
特に最初は「平野くん?」と言うセリフが赤字の位置にありました。
そうすると、さらに右上のコマから下の4コマを読む前に、すぐ左の「平野くん?」と言うセリフに目がいってしまう可能性があります。

「う〜ん、右の5コマを横並びにしたら…、でも左の大ゴマはやっぱり縦長にしておきたいな…。」色々と考え直した結果、セリフを左下に下げて視線がすぐに「平野くん?」と言うセリフにいかないようにしました。

この選択がベストの答えだったかは分かりませんが、こういう風に考えられるようになったのは、読んでいて「ん?今のどういうこと?」と思った時に、その理由を考えて「セリフの位置をもう少し移動させたら」とか「ここにこんなコマ入れたら」もっと分かりやすくなるんじゃないかと自分ならどうすると考えて読んでいたからだと思います。
もちろんその私が読んで分かりにくいと感じてしまった漫画のここにこんなコマを入れたらと私が思った存在しないコマは、プロの漫画家さんがテンポを良くするために省いたコマかもしれません。

でも、最初に申しましたように私の場合「分かりやすさ」を優先した作品作りをしたかったわけなので、自分なりの「私なりの分かりやすい漫画を描く為の答え」を探すことが大切だと考えました。

そして、私の中の答え合わせとしては、読んでいただいた方から「読みやすかった」「分かりやすかった」というご感想も多かったので、ひとまずは間違ってはいかなかったと感じています。




・コマ割りのざっくり模写


よく完全にコピーするくらいの気持ちで漫画の模写をしよう!と言う話を聞きます。
これは素晴らしい練習法だと思いますし、どんどんやっていけば良いと思います。
しかし、私の場合すでにイラストの仕事を並行していて、日々収益を得ていかないといけない者としては、漫画の完全模写を何十・何百ページもする時間を取るのはなかなか厳しいです。

私の場合は、限られた時間の中で優先的にすべき事は、コマ割りのパターンをたくさん知る事だと考えました。

なので以下のように、本当にざっくりとコマを割って、1ページの中での流れや要素を学べる程度の模写をたくさんしました。

筆をおりかけた僕に女神さまが舞い降りた 10話(最終話)

これも他の方の作品を使う訳にはいかないので、自分の作品で例をつくりました。
右に対して、左くらいざっくりと書いていました。
チェックするのは、先述したこのコマが何を表しているのか?、視線がどう動いたか?、吹き出しの大きさ、文字量とかそんな事を意識しながらざっくりコマ割りと要素を模写しました。
例はデジタルですが、これをする時はデジタルではなく紙に描いていました。
紙の方が全体のバランスとか把握しやすいので。

私はネームを右上から順に描こうとすると、まずページの1/3くらいの位置に横線を引こうとしてしまう悪癖があるので、色々な方のコマ割りをざっくり写すのはとても勉強になりました。
縦に細く割ってるのに、こんなに分かりやすく要素が入るんだ…とか、当たり前のように見ていたコマ割りですが、本当にたくさんの技術が詰まっていて目からウロコの学びの連続です。

どんな漫画を模写するのかはそれぞれ好きで良いと思いますが、個人的には、偏りすぎずに色々な漫画を見てみるといいと感じました。
コマをぶち抜いて迫力があったり、キャラが魅力的に見える思える物もあれば、コマ数が多めで迫力はなくても「こんな小さなコマでも状況説明ってできるんだ!これだけでこのキャラとこのキャラが駐車場に連れていかれたのが分かった。丁寧ですごい!」と発見がたくさんでした。


と、描けない間は2年間くらいこんな勉強を繰り返していました。
ただ、頭の中でいくら勉強していても、しょせんは知識で、実際に描いていて初めて血肉になります。
まずは、あれもこれも頭に詰め込みすぎずにとりあえず描いてみて、そこから色んな人の作品を見ながら、自分の中の違和感を修正して少しずつ成長していくのが良いかと思いました。




■私なりの具体的な漫画の作り方


それでは、私が普段どうやって漫画を描いているか、具体的に書いていきたいと思います。
「まどろっこしい描き方してるなぁ」と思われる方もいるとは思いますが、これは2年間で4Pの漫画も完成させられなかったイラストレーターが1年間で474ページ描き上げる事ができた際にした方法です。
自分なりにできるだけ途中で躓かないようにして進める作り方です。




・まずは文章で全て起こす


私はいきなりネームに取り掛かるには、まだまだ経験不足だと感じていて、まずは文章で全て起こしていきます。
使っているのはiOS間で共有できるアプリとかを使っています。

私はGoodnoteとか、メモアプリ・Notefileなどのテキストアプリを使っていますが、私はメインの作業がiMacなので、ipad・iphoneや漫画を描くソフトの入っているPCと共有できれば便利だと思います。

読切「そんな事どうだっていいんだ」48p
まずはこんな感じでシーンを箇条書きのような感じで書きだしました
今度はもっと具体的なセリフやシーンや状況を文字にして書き出す

セリフだけではなく、情景やシーンがうつったことや、感情やその流れなど全て書いていきます。
小説のようなレベルの高い文章は必要ないので、基本的には自分が分ければOKだと思います。

シーンが移ったとか誰が誰に話しているとか自分の頭の中で理解しているけれど、読む人からするとちゃんと丁寧に描かないと分かりにくい漫画になってしまうので、この文章を見ながらネームを起こす時に重要な情報が抜けてしまわないように、できるだけ具体的に描くのが良いと思います。




・A4サイズのコピー用紙を8つ折りにして小さな枠にネームを描く

文章ができたら、A4サイズのコピー用紙を8つに折り、そこに小さなネームを描いていきます。
この1/8の小さな枠1つを1ページと想定してネームを描いていくわけですが、1ページの枠を小さくすることで、セリフなどのテキストが小さくなりすぎたり、描き込みすぎたり、要素を詰め込みすぎたりするのを防ぎます。

この小さなネームはすぐ捨ててしまうので、当時の物が残っていなくて、新しくサンプルで描いた物です。
最初のページ割なのでもっとざっくりでも良いかと。
青でおおよそ目星をつけるのも描きやすいです。

作品全体を俯瞰して見るのにも、とても良いです。
今回の作品は8ページしよう、だからこのシーンは7ページのこのあたりに…じゃあこの4ページにはここまで進んでいないといけないな、など全体が見えることでかなり描きやすくなります。

このページはどこのシーンまで入れるかを考えて、水色の色鉛筆などちゃんと見えるけど目立たないくらいの色で文字で描きこんでおきます。例えば(ヒロインが微笑んだシーンまで)とか。
右上から描いていくと言うよりかは、そのページで一番見せたいコマを先に位置と大きさを決めて描いて、そこに至るまでのコマを埋めていく感じで描いていました。

また、8ページ単位で見れるので、似たようなコマがページをまたいで大量にないかとかもチェックする事ができます。

全然描けなかった最初の2年間は、ipadのprocreatでネームを作ろうとしていたのですが、そうすると結局拡大してしまい、余計な描きこみをして手が止まったり、全体が俯瞰することができていなかったような気がします。
なので、私としては慣れないうちはA4コピー用紙を8つ折りにしてざっくりページ配分とコマ割りを考えるのが良いかなと思っています。

382ページの作品を描き終えた今、これからはiPadでネーム描けるのでは?と思ってやってみたのですが、やっぱり一番最初のとっかかりのネーム作成は、私はまだ紙のA4を8つ折りにした物の方がやりやすいようです。




・ネームを考える時はPCのない場所で

話のネタやネームはPCのない環境に移動して作っていました。
PCがあると他の仕事とか気になったり脱線してしまうリスクがあるので、紙とペンや、iPadとキーボード(メモアプリにセリフやテキストを打ったりする為)など必要な物だけを持ってカフェとかに出かけていました。

あとは、タイマーをかけて1時間以内に描き切ると決めて、とりあえずネームをざっくり描き切って形にしてから、別の日にチェックして修正を繰り返しました。




・先ほどの8つ折りネームを写真を撮ってクリスタに貼り付ける

私は基本クリップスタジオでのデジタル作画なので、デジタルでの制作を前提で話を進めていきます。

だいたいのネームの内容が固まったら、先ほど描いたA4サイズを8つ折りにしたネームを写真を撮ってデジタルの画面に1ページずつ貼り付けていきます。
その際、私は貼り付けるサイズを裁ち切りラインではなく、内側の枠(基本枠)内にするようにしました。

これは、このざっくりしたネームからもっと具体的なコマ割りや絵作りをしていくうちに、「こことここの間に小さくていいから時間経過のコマが欲しいな」とか「このコマはもっと大きくしたい」とか色々と出てきます。
そんな時に余白があると画面の修正がしやすいので気持ちの余裕もできます。

余白があるのでスペースを取りやすい

慣れた作家さんとかでしたら、そんな必要はないかもしれませんが、慣れないうちは修正する際の余白があると作りやすくなると感じています。
もしかしてそんな断ち切りのコマの作り方はダメだ!とお叱りを受けてしまうような方法かもしれませんが、とりあえずこれはなかなか漫画を完成されられなかった私が、漫画を完成させやすくする為にやり易さをとった方法です。




・文字の流し込み

次に最初に作った文章の中からセリフやナレーションをだいたい決めた位置に流し込んでいきます。

その時、文字だけを追っても目線が泳いでしまわない位置にする事とか、文字とざっくりした絵だけでも意味が分かるようする事と、文字はできるだけ大きめにする事を意識していました。

経験を積んだ作家さんだと、もっと絵と連携した視線誘導とかもっと深く考えていると思いますが、最初はそこまで考え過ぎずにできる範囲で考えようくらいの方が良いかと思いました。

もちろん私も視線の流れは気にして作っていて、文字だけでもだいたいページの内容がわかるようにとか、行数や一行の文字数が多くくならないようにとか、視線の流れに合わせて文字と文字で絵を挟むとか、絵と文字の情報の順番の整理とか、誰が言っているのかちゃんと分かるような文字配置とかそのくらいです。
それでも、私の作品でも「とても読みやすかった」とたくさんコメントを頂いたので、そこまで高い技術がある作品でなくてもちゃんと気持ちよく読んでもらえるし意図は伝わり、感動してもらえます。

私自身もっともっと勉強を続けていく必要がありますが、一番最初から自分に色々と求めすぎるとつまづく可能性があります。




・バランスを見ながらコマ割りをする


文字が入ったら、吹き出しの大きさを確保して最初のネームで考えたコマの大きさや入れる絵が妥当か改めて考えます。
「この1コマだけが思いつかない!」と言う時は「未定」とかだけ書いて空けておきました。
ここでその1コマが思いつくまで考え込んでしまうと、また手が止まってしまうのでどんどん先に進める事を優先しました。

とりあえずページ全体のバランスを取るのを優先する為に、この順番で描いてます




・コマの構図が決まらない時はフィギュアを使う


ネームを描いていて、構図が決まりにくい時が何度もありました。
そんな時は頭で考えていても思いつきません。参考にしようと漫画をペラペラめくっても、やっぱりシチュエーションや流れが違うのでピンと来ない時が多いです。

そんな時はフィギュアを並べてシーンを作り、スマホのカメラで色々な角度から見ることで思いつく事が多くありました。

セリフの入れるスペースはあるか、シーンとしてあおりにした方がいいかとか、頭で考えるより実際にシーンとして形にした方がイメージはしやすいです。
最終的にこんな感じ。
最終的には背景にもっと角度つけて、パースもある程度無視してるけど、状況分かれば個人的にOK。

フィギュアを使う時は100均のブックエンドに、フィギュアと同じスケール(私の場合1/12)で1m毎に線を描いていき、撮影することでパースラインが分かりやすく背景も楽に描けます。

ブックエンドの一番上がだいたいマンションとかの天井の高さ。
ドアとか窓とか、マグネットシートを切り取って作っておくと鉄製のブックエンド貼り付けるだけで部屋が出来上がり。
同じシーン角度違い。
畳も6畳分マグネットシートで作っておけば、並べるだけで和室になるので便利でした。

3Dとか使える人はどんどん使っていいけばよいかなと思いますが、こうしてフィギュアを使うのもパパッと並べて手軽に扱う事が出来て便利です。

このコマで何を表現したいか、見せるべき人物が見えやすいか、どこに吹き出しを入れるかとか考えて何枚か撮っていきます。

こんな風にフィギュア並べて構図を決めてしまうと迫力のある画を作る為の想像力の邪魔になったり、自由な発想の邪魔になるのでは?ペンを走らせて考えた方がいいのでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんし、どんな漫画を描くかでも方法も違ってくると思いますので、状況に合わせてご自身のスタイルに合いそうでしたら使ってみてください。

私はシチュエーションとかを伝えるロングのコマを描くときに特によく使いました。




・ネームができた時点で一度プリントアウトしてチェックをする


ネームが出来た時点で、面倒でもプリントアウトして確認するようにしておりました。
不思議な物で、紙にプリントされた物になると、それまで気付かなかった違和感に気付くことがあります。

それで修正を繰り返し、ネームが完成したら下絵、清書と進めていきます。




・漫画を描く上で、絵を描く事自体がまだまだ上手くいかないと言う人は

そもそも絵が上手に描けないと言う方は、この記事でやった特にいろんな角度の模写やクロッキーや、自分が普段描きそうにないキャラクターの模写と資料作りは、漫画作りにおいてとても役に立ったと実感しているので良かったら見てみてください。

元々、イラストレーターとして、1枚絵のキメポーズみたいなのを多く描いていた私ですが、これらの練習をしていたおかげで、色々なシーンを分かりやすく描けたのだと思います。



ここまでは、単話(1話分)の具体的な私の漫画制作方法です。
次は、例の382ページの「筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた」のような長い話を完成させた際にした事を書いていきます。



■長編(382ページ)の漫画を完成させた時にしたこと

ハートフルストーリーを描いて、練習作品の3ページの漫画を描いて、「自分はちゃんと漫画を描けるんだ!」と実感する事ができました。
もし、連載作家を目指すなら、「じゃあ、これから賞を取るためや、担当に付いてもらうための持ち込みする読み切りをたくさん描いていきましょう!」「担当が付いたら連載に繋げる為の、目に止まる面白そうな企画をたくさん考えていきましょう!」と、おそらくなっていくのだと思うのですが、私の場合、連載作家になるのではなく、まずは兎にも角にもこの頭の中に出来てしまった大作「筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた」をどうしても描き切りたいと言う気持ちがありました。
これは技術向上のためでもあるし、ビジネス面・お金の事もあるのですが、想いを詰め込んだ分、それだけでは割り切れない「漫画家になりたいより漫画を描きたい、漫画を描きたいと言うよりこの『筆を折りかけた女神さまが舞い降りた』を描きたい」と言う気持ちになっていました。

しかし、8〜48ページの短い物と違い、最初の構想で200ページを超える作品となるとやはり勝手が違いました。




・大きな流れを箇条書きにして、1話20ページ程度と仮定して10話に分けた


長編「筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた」の制作に取り掛かろうしたのですが、最長でも48ページ以上の漫画を描いた事のない私は、当然「さてどうしよう?」と手が止まりました。

このボリュームを描く時、
「どこからつくればいいか分からない」
    ▼
「とりあえず頭から描こう」
    ▼
「つまづく。描けない。どうしよう」
思い返せばそんな泥沼の繰り返しでした。

そこで真っ先にしたのは現時点で思いついているシーンの大雑把な書き出し。
以下の画像のように、主なシーンや重要な要素をざっくりと箇条書きにして書き出しました。

この段階では尺とかシーンの重要性とか気にせずに、思いついたままどんどんシーンごとに書き出していきます。

(この「筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた」をまだ読んでいない人は、ネタバレを含んでいるので、先に漫画を読んで頂くか、さらっと見るだけにしてもらえると嬉しいです!)

こんな感じに箇条書きに。
ちなみに登場人物の生田の名前が最後までなかなか決まらず、当時は五島と言う名前にしていました。
12までしか載せていませんが、こんな感じでまずは20個書き出しました。

次にこれを何分割にしようかを考えました。

読み切りなどいくつか短いページの作品を描いていると、前よりかは「このくらいの内容だったら何ページくらいになるかな?」とある程度の予測を立てれるようになってきました。

そして箇条書きにした情報から「全10話(1話約20ページ)くらいで行けそうか」と予測を立て、全体の内容を10分割にしました。
その上で各話の大雑把な内容をまずは文章に起こしていきました。

この時の1話のボリュームをだいたい20ページを想定したのは、雑誌での短期連載と言う可能性があるのではないかと思ったからです。
(当時漫画を見てもらっていた先生にこの資料を「担当が付いたら連載の企画として見せればいい」と言って頂いたため)

最終的には、短期の連載でと言う可能性はかなり低そうだと感じて、web投稿にしようと方向を決めたので、1話およそ20ページと言うルールはとっぱらい、7話は46ページ、10話は56ページだったりと制限をなくして描くようにしました。

ただ、最初から「何ページに制限なく描いていいよ」より、例えば20ページと自分でまず制限を決める事で最初の構成はすごくやりやすくなると思います。
20ページを目指して描いて、その上でどうしても足りないなら増やす、と言った感じで作ると制限なしで考えるよりも間伸びもしないかと思います。




・描き手の伝えたい事と読者の読みたい事のギャップ


私のこの382ページの漫画「筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた」は、
・このSNSの時代にたった1人が認めてくれる力を描きたかった
・想いを込めた作品の持つ力
・あの日言えなかった言葉
・あなたのおかげ
・なりたい自分になる
・手元にある小さな成功や隣にいる人が愛おしく思える物語

そんな表現したい事やテーマとかがあります。

私の言いたい事・伝えたい事ははっきりしていたので、それらのテーマを中心に話の大筋が出来てきたのですが、「これを最後まで読んでもらうにはどうしたらいいんだろう…?」と考えました。

伝えたいことを伝えるためだけに描いてしまうと、自己満足なお説教漫画みたいになってしまう可能性があります。
また、この「筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた」は前半の展開が大人しいと言うのも悩みのタネでした。
ただ私の場合は、「伝えたい事を表現できるようになりたい」が漫画を描き出したきっかけの一つだったので「伝えたい事」の内容を崩してしまうと描く意味がなくなるので、「伝えたい事」を優先して話の軸を作り、そこに読者に楽しんでもらえるギミックを入れると言う順で作りました。

楽しんで読んでもらうための一番大きなギミックとしては、「誰が本当のヒロイン?」と言う、サスペンスとかでもよくあるラストシーン直前から遡って行くかんじのやつです。
「それでも僕は君が好き」(原作.徐誉庭先生  漫画.絵本奈央先生 )を読んだ時に誰が本当のヒロインかが気になって一気に最後まで読んでしまったのを思い出したからです。

これをいれたおかげで、「どっちが真のヒロインか分からないようにんしないといけないから、今ここではこの内容は描けない」とか、色々と表現に制限も出て大変でしたが、「最後まで女神さまがどっちか分からなくて面白かった」「続きが気になって一気に読んだ」と言うご感想も多く、反省点は多々あるものの、ちゃんと読み物としての面白さも確保できたのではないかと嬉しく思いました。




・冒頭から無理作っていこうとしない


8ページとか40ページくらいのボリュームの漫画を作る時は漫画の冒頭を作るのにそう悩まなかったのですが、いざ200ページを超える長編となると冒頭を作るのが急に難しく感じました。

読者に最初の数ページを読んでもらった時「ああ、この漫画はこういう漫画なんだ」と思ってもらわないといけないわけなのですが、それがあまりにも難しくて…。
冒頭に情報を詰め込んだら読む人の負担が大きくてよほど興味がないと離れてしまうし、読みやすいようにすると冒頭が長くなってしまうし、これを取ればこっちが成り立たなくなるの繰り返しで一番苦労しました。

何度やり直したか分からないくらいネームをやり直したのですが、やっぱりこの第1話が今でも一番納得がいっておらず、少し時間をかけて再構築ようかとも考えています。

結局、1話の内容を固めたのは一番最後で「もうこれ以上悩んでいてもキリがないので清書をスタートした」タイミングでした。

どういうタイプの物語をつくるかにもよるとは思いますが、長い話を作る時に冒頭がつまづいたら途中から描いていっても良いと思います。

ただ、途中から描くと言っても「じゃあ、どこのシーンをページの最初に描き出せばいい?」と違う問題が発生するので、物語を全10話・10分割にしたのがとても有効でした。
10話とかに分けてしまえば、例えば2話からとかでもネームは考えられます。
物語全体の冒頭は難しくても、2話目の冒頭は割と簡単だったりすることもありました。
長編という物も分割して考えたらとても作りやすくなりました。

1話から絶対に描かないといけない状況でない限り、話を分割してあっちこっちを飛びながら制作することのもアリかなと感じました。
少なくとも私は頭から順番に描いていっていたら、間違いなく今もなお完成していなかったと思います。




・迷ったら飛ばしながら他のページから進めていく


先ほどの「冒頭から無理に作らなくてもいい」と言う話と通じると思いますが、ネームを進めていると、「ここの展開どうしよう」とか「ここのコマとセリフどうしよう」と手が止まってしまうことがあります。
そういう時はある程度スペースを空けて、ネームをどんどん進めていきました。

見開きとして全体としての流れがあるから、だいたいのスペースを空けて進めていくと言うのは良い方法とは言えないかもしれません。
週刊連載とかだと、そんな事も言ってられないかもしれません。

でも、経験値が少ないのに完璧なやり方を自分に求めてしまうと、どんどん作品の完成が遠のいてしまいます。

せっかく連載と違い、冒頭から作らないといけないわけじゃないし、締め切りがないのですから、まずはざっくりとしたタタキ台として完成できそうな部分を完成させて、そこから検証を重ねていけばいいと思います。




・期日を決める


「期日を決める」と言うと、さっきせっかく連載と違い締め切りがないって言ってたのに自分で期日を決めちゃうの?と思う方もいるかもしれませんが、これは全く別の問題です。

仕事と同じで、自分で期日を切っていかないと、いつまでもダラダラと修正を繰り返したり、描きたいシーンでずっと悩んで停滞してしまったりします。
「第2話のネームはこの日まで終わらそう」と決めて、ボロボロでもいいので何が何でも形にしてしまう。
チェックする日は別の日にする。チェックして納得できない事があったら、◯時間以内に修正案を出す、いつまでに修正すると決める。と、時間制限をかけていきます。
それの繰り返しでブラッシュアップしていきます。

クライアントワークや連載と違うのは、達成できなかったらまた新しい期日を設定できると言う所です。
「期日を延ばせちゃうなら、最初から設定する意味なんてなくない?」と思われる方もいるかもしれませんが、期日を設けて取り組んだ結果と期日を設けずに取り組んだ結果は全く違ってきます。

期日は「納期」として、誰かに決められるからしんどくなります。
自分で決めた期日は、達成感やワクワク感に変わったりもします。




・ペン入れは、ほぼ全てのネームが終わってから始めた


例えば2話のネームが終われば2話からペン入れをして完成させていきたくなってしまいそうですが、私はほぼ全話のネームが終わってからペン入れを始めました。

今回描いた382ページの作品「筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた」は、全10話の作品ですが長い物語を描きやすくするために10話に分けただけで、どちらかと言うと1本の映画に近い作りだと思っています。

なので、キャラクターのセリフ一つの変更で、前の話のキャラクターの感情やセリフの意味が変わったりするので、何度も何度も1話から10話の間を行ったり来たりして修正しました。

その為、私は全話のネーム・下書きがほぼ完成した時点でペン入れを始めていきました。
「ほぼ」と言ったのは、どうしても決めきれないシーンがいくつかあったのですが、それを決めてから描き始めるのは効率が悪かったので、何か所かは空けたままペン入れを始めました。

それで不思議な物で、ペン入れして絵に命が吹き込まれていくと、悩んで悩んでどうしても決まらなかったシーンがあっさり決まることもありました。




・箇条書きや出来事から話を繋いでいったら感情がゴッソリと抜けていた


プロットから出来事、流れを書いていき、ネームに落とし込んだ時に当初260ページ程度のボリュームになりました。
話としては破綻なく描けていたと思うのですが、細かい感情の面がゴッソリ抜けている事に気付きました。
話は成り立ってはいるのだけど、都合よく物語が進むために人物たちのセリフや感情が綺麗すぎたり、いやいやそんな風に割り切れへんやろ〜、ホンマは下心もあったんちゃうの〜、と突っ込みたくなるような、もっと葛藤があるだろう。と思ってしまう部分が大量にありました。

例えば、
・登場人物の男女の心がすれ違い、口をきかなくなる。
 ↓
・理由がわからない、でももう一度話したい。友人に助言を求める。「言葉が通じないなら誠意で」
 ↓
・数か月前にされた絵の描き方についての質問にちゃんと誠実に答えていなかった事を思い出す。
 ↓
・だからそれが答えかどうか分からないけど、自分なりの誠意として、今まで勉強をしてきた事をノートにまとめる。
 ↓
・卒業式の日に追いかけてノートを渡し、二人はまた会話をするようになる。

こう書くと一見成り立っているように見えて、最初のネームではすんなりと迷いもなく追いかけて、ちょっとドキドキしながらノートを渡します。

しかし、繰り返しチェックする内に、主人公の性格から「そんなすんなり渡せるか?」と言う疑問が自分の中にわいてきました。
「ノートを渡すといっても、質問されたのも、もう何か月も前の事…」
「自分の無神経な自己満足が、また彼女を傷付けるんじゃないのか」
そんな風に考え、ウジウジと葛藤しながら走るんじゃないかと思いました。

箇条書きをすると、物語の大筋を俯瞰してストーリーの流れを俯瞰して見るのに便利でしたが、ひとりひとりの感情をあまり深く考えられていないままどんどんネームを進めていたことが多かったです。

個人的には、違和感を感じた時は音楽を聴きながら外を歩きました。
そうすると、頭の中で登場人物の劇が始まって「ああ、この子はこんな風に考えていたのだろうな〜」と思いつくことが多かったです。
私は感情を表現するシーンはPCの前ではなかなか思いつかないので、シーンの作り込みを考えたい時は、コワーキングから帰る時に2駅離れた駅まで30−40分かけて歩いていました。

元々、感情をちゃんと描けるようになるために描き始めた側面もある漫画だったので、感情表現をおそろかにすれば描く意義が少なくなってしまうので、そこからどんどん丁寧に描きたし、最終的には260ページから382ページになりました。

シーンによっては、何十回と内容を描き直したシーンがありました。
もちろんページを増やせば良い物ではなく、むしろ減らす方が技術として求められるのですが、でも、「感情の流れがリアル」「よかった」「感動した」と言ってもらえるシーンでもあったので、妥協せずに感情をしっかり描いて良かったなと感じています。




・スケジュール表を作り、達成感を感じながら進める


制作の順番として、382ページ分先にペン入れをして、それから全ページのベタやトーンなどを入れて行く仕上げの作業を行いました。

私は線画はとても好きなのですが、カラーにしたり仕上げをするのが実はあまり好きではないです。

特にバケツ塗りは便利で早いのですが、作業としての楽しさはそれはもう面白くないの境地です。
アナログで筆ペンを使って黒く塗っていくのは、なんだかんだと楽しいのですが、デジタルで塗って行くこの作業感が本当に楽しくないです。
それでも早くできるのでデジタル作業をする私としては、バケツ塗りとかの存在には感謝しないといけないのですが、これが382ページ残っていると改めて感じた時はゾッとしました。

話が逸れてしまいましたが、そんな状況の中、モチベーションを保つ為にエクセルでスケジュール表を作り達成感を感じられる表を作りました。
まず、目標の完成日を設定して、完成したページに日付を入力していくと、自動的に完成ページ数と残りページ数が表示されて、何%達成したか、目標の日に完成するには1日あたり何ページ終わらせる必要があるかを自動的に計算してくれるようにしました。

やっと半分…
お…終わりが…見えて…きた…

量が見えないと実際以上に多く感じてしまう事があるので、こうしてスケジュール表を作って終わりが目に見えるだけでかなりモチベーションが保てたと思います。




第4部 投稿など制作後のこと


■持ち込みの体験談など(作品を誰かに見てもらうことの大切さ)


元々、雑誌の連載作家は目指していかなかったのですが、先述の最初に漫画の作り方を指導して頂いた先生のススメでいわゆる週刊や月刊などの漫画雑誌の出版社への持ち込みもしてみました。

持ち込みすることは元々考えていかなかったとは言え、小学校の頃は漫画家になることが夢だったのもあり、いわゆる雑誌などで活躍されている漫画家の方々は憧れの存在で尊敬の念が当然あったので、持ち込みをすすめられて、まだ見ぬ世界に対して何が起こるのかワクワクするようになっていきました。




・商業誌への憧れと仕組みへの興味


漫画雑誌の連載作家を目指していない理由は、なりたくてもなれるのはほんの一握り、今から漫画制作にウェイトを置いて死に物狂いで努力をして、仮に超絶狭き門を潜りぬけて連載作家になれたとしても、たどり着いたその先が一握りしか食べていけないのであれば、妻子のいる身で今あるイラスト仕事を捨ててまで挑戦する理由はないと言うのが本音でした。

目指していないから私も連載漫画家そのものに興味がないかと言うと、そう言う意味ではなく、漫画雑誌の連載作家と言うのは、小学生の時に見た夢・憧れ、絵を描く漫画を描く私にとって本当に魅力的な誘惑のある世界です。
実際に持ち込みをすすめられた事で、自分もこの漫画界にちゃんと生計を立てながら関わって行く方向性があるのならチャレンジしてみたいとも思いました。

と言っても、これからまた新しいネームや企画を持ち込んで漫画雑誌で連載したいかと言うとそういう訳でもなく、私の当面の願いは「筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた」をとにかく完成させることだったので、この「筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた」が10話くらいの短期連載が可能性がありそうならチャレンジしてみよう、でも短期連載とかそもそも無理そうなら、自分で描き切ってSNSやネットにアップして書籍化を目指す。
そして、これだけのボリュームの漫画をちゃんと描ける作家だと言う事を認知してもらい、漫画案件の受注に繋げていくと言う方針に固めました。

ちなみに家族がいるから夢を諦めると言う意味ではなく、私の一番の望みが子供たちが自分のやりたい道に進む時、ちゃんとサポートできる父親になる事が何よりの目標だからです。




・隔週刊青年誌の場合(人に見てもらう大切さ)


そんな中、隔週刊の漫画青年誌の編集者の方とオンラインでお話できる機会を得ることができました。
打ち合わせの事前に送信していたのは、読み切り「そんな事どうだっていいんだ」と「ハートフルストーリー」の完成原稿と、「筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた」のまだ200ページ程度だった時のネームでした。

打ち合わせの開始早々
「ごめんなさい。(筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りたの)ネーム、時間がなかったので4話までしか読めていません」とのこと。
4話まで読んで興味が出なかった、新連載として検討する価値を感じなかったと言うのをオブラートに包んでおっしゃってくださったのだと思います。

そして話をしていくと「そもそも絵を題材にした漫画ってたくさんありますし、絵を題材にするなら画力ないとキツくないですか?」と、気にしていた部分をグッサリと言われました。
私自身も美大とか美術部とかのルートを通らずここまで来て「自分の画力で絵を題材にした作品を描いていいのか」と、どこかコンプレックスを抱えていました。
でも、私のこの「筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた」は、登場人物たちが絵の高みを追及していく作品でもなく、むしろそんな自分のような劣等感を抱えている主人公が、誰か一人が強く認めていくことで事でそれを心の糧に道を切り開いてく事がメインテーマなので、絵が題材ではあるものの画力が高いわけではない私が描いても大丈夫と言う気持ちがありました。

ただ、そう指摘された事で、そもそも私が表現したいと思っている事が最初の4話でちゃんと表現できていないのだと気付けました。
そこから冒頭部分をかなり変えることが出来、当初よりもこの漫画がどういう物語かが分かるものに改善できたと思います。

また、その編集者さんは私を傷付けようとした訳ではなく、「あなたの絵柄とかでしたら、例えば『◯◯◯◯』と言う作品があって、こういう方向なら絵のテイストも合って、いいと思います」と貴重なアドバイスもしてくださいました。
その青年誌で連載させて欲しかったら素直に受け入れてチャレンジすれば良いし、そのアドバイスた私の望む方向性でなく納得がいかなければその青年誌へのアプローチをやめればいいだけです。

「絵を題材をにした漫画なのに画力ないとキツくないですか?」って言葉も、私自身気にしていた部分でもあったので、正直なんだかんだとグサリとくる言葉だったのですが、これはビジネスなのでオブラートに包んだ優しい言葉よりもハッキリと引導を渡してくれた方が本来有り難いものです。
ただ、漫画とかイラストとかそういう作品の怖い所は、作品は自分の分身のように感じ、否定されるような言葉を言われると自分自身を否定されたような気持ちになります。
しかも、この「筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた」は、自分自身の体験や想いをかなり詰め込んだある意味分身のような作品だっただけに、冷静を装っても言われた瞬間はそれなりに心にダメージもあった気がします。

でも、おそらく毎日たくさんの漫画が届く編集者さんが将来自社にとってモノになるかどうか分からない漫画家志望者に1時間とか時間を割いて話をしてくれる中、オブラートに包んで作家が傷付かないように話して欲しいと言う方がそもそも無茶な話ですし、思わせぶりな状況になってもいつまでもこちらも方向性が間違った無駄なアプローチをすることになるので、一番気にしている部分を指摘されても逆に「ハッキリ言って頂いてありがとうございます」くらいの気持ちで望みたいものです。

また、ずっと気になっていた10週だけの短期連載って漫画雑誌側にとってメリットがあるかなど、色々と質問をさせて頂きました。
「皆、人気作家目指してるのに、逆に10週でいいんですか?」
とおっしゃっていて、「うーん人気作家の連載準備期間のつなぎくらいにはなるとは思うのですが…」のような感じで編集者さんも不思議そうでした。

最後は「また、新しい作品や質問とかあったらいつでも連絡くださいね」とも編集者さんはおっしゃってくださったので、まぁ自分の作品も捨てたもんじゃないのだろうと、そこは勝手にポジティブに受け取る事にしました。


あと、私は持ち込みをする直前に、漫画進路相談室フロンの東西サキ先生のオンライン相談に申し込みました。
(最初に私が漫画の1作目を作る時に見て頂いた先生とは別の人です)

これが非常に良くて、東西サキ先生の話を聞く前に持ち込みをしていたら、「ああ、自分の作品は全然ダメなんだ」と思ってしまっていたかもしれません。
どのような話をしてもらったかは、東西先生のコンテンツなので私からこのnoteで話すことはできませんが、気休めとかではなく根本の話をしてくださるので持ち込みの結果がダメだったらダメでも、その理由をちゃんと考えられるようになるし、漫画家を目指し持ち込みをしようと思う方には本当にオススメです。
もちろん持ち込みとかだけでなく色々な方向性がある事も教えてくれます。


話は戻りますが、その編集者さんとの話は続いたのですが、話の内容は漫画自体の内容についてと言うかは題材について主に話をしました。

編集者さんは色々例を話してくれたのですが、「ね?こういうのだったら読まずにはいられないじゃないですか」と言う感じでおっしゃっていました。

雑誌の編集者の方がそこを重要視するのは当たり前で、日々これだけ大量の漫画作品が発表される中、よくある題材で勝負したいのなら、それこそ圧倒的な画力とか目を引く要素がないと1話目も読んでもらう事すら難しいと、自分自身が作品をネットで発表し終えて改めて感じています。

例えばこの「筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた」も、「小学生の時に盗作にあった自分の漫画作品を当時の愛読していた読者の友人2人とタイムリープして取り戻しにく。そして、その作品を盗んだ当時の同級生は実は人の形をしたAIだった!」とかの方が掴みとしては多分面白そうで、もしこんな感じで方向変えましょうか!と提案していたら、もしかしたらもう少し興味を示して話を聞いてくださったかもしれません。

でも、それじゃ私の伝えたい事は表現できないし、描く意味がそもそもなくなってしまいます。
持ち込みをした結果として何か話に繋がったわけではないですが、こうした機会を頂けたおかげで、私は連載漫画家になりたいと言うより、自分の表現したい物をちゃんと表現できるようになりたいと思っている事。
そして今は「筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた」を描き切るのが私の一番の望みなのだと方向性や気持ちを整理することができました。




■SNSや漫画投稿サイトへの投稿


・投稿先で反響は全然違う


これも先述の東西サキ先生に色々とアドバイスを頂いて投稿していったのですが、本当に投稿先で反応が違いました。
色々と投稿してみて、「X(旧Twitter)」以外で反応が割とあったのは「ジャンプルーキー!」と「ニコニコ静画」でした。

X(旧Twitter)に関しては漫画投稿時には一応2万を超えるフォロワー(ただし3年くらいほぼ放置していたのでアクティブでない人も多いと思う)がいたのと、一番のターゲットの絵を描いている人がたくさんいる場所だったので予想通り一番反響がありました。
感想の一部は第5部で紹介しています。

ジャンプルーキー!は、ちゃんと丁寧に読んでくれる読者がいて、初動で少し読んでくれる人がいたら、その後ジワジワと読者が増えていく印象がありました。
「人気作品」「オススメ作品」「日間・週間・月間ランキング」など様々な入口から作品を探せる仕組みがあったらからだと思います。

対して「ニコニコ静画」は、かなり読者が多く、投稿してから少しの間「新連載」の項目に表示され、この間になかなかの数の人がチェックしてくれます。
ただ、投稿される作品数が多いせいか1話目で話題になったりガッチリ読者を掴んでおかないと2話目以降投稿してもすぐに表示から流れていってしまい、どんどん下火になるイメージです。

他にも「コミチ」「LINEマンガインディーズ」「マンガボックスインディーズ」「マンガノ」など色々な所に投稿してみました。
おそらく読者自体が少ない所、読者層が自分の作風と違うところ、反応は本当に色々でした。
私の作品はタイトルとか題材が、誰も見た事ないような尖った物ではないので、そういう意味では「ジャンプルーキー!」のように、ちゃんとじっくり読んでくれる人がいる所が合っていたのかもしれません。

自分の作品がどこに合うかなんて本当に投稿してみるまで分からないものです。
私の漫画は青年誌向けだと、色々な方からアドバイスを頂いていて、「ジャンプルーキー!」は、ジャンプ+のインディーズ版のような物なので少年誌向けだと思っていて、その少年誌向けであろう「ジャンプルーキー!」でたくさん読んで頂けたことは意外な結果でした。
違うと思ったところに意外な反応があったり、行動して初めて今まで気づかなかったことに気付くことができます。
それに投稿したその時はあまり反応がなくても、投稿して目に止まる所に作品があれば今後何があるかもわかりません。
それが本当に低い確率の可能性でも、投稿しなれば見てもらえる可能性は0です。
なので、権利の問題や大きなリスクがない限り恐れずに投稿すれば良いと思いました。
せっかく描いた作品を1サイトだけ投稿して期待したような反応がなくて「自分の作品はダメなんだ…」と思うのは、あまりにもったいないです。




・アプローチの仕方を変えてみる


とりあえずSNSや漫画サイトへの投稿を一通り終えて、とても嬉しい感想を頂いたり、表現したい事をちゃんと表現して伝える事ができたと実感しています。
しかし、書籍化などのチャンスには届いておらず、まだまだたくさんの人に読んでほしいと思っています。

だからと言ってXのようなSNSで何度も同じ人に「読んでほしい読んでほしい」と呟いていても正直新しく読んでくれる人は少ないです。

同じところに何度も同じようにアプローチするのではなく、このnoteの記事のように違う角度から作品に興味を持ってもらえるようなアプローチが必要なのではと感じました。

作品が毎日大量に発表される中、尖った切り口はとても大切ですが、尖った切り口のある作品=良い作品というわけではないと思ってます。
興味を引く尖った入り口は何も作品の題材やタイトルだけではなく、どんな形でも(違法とかじゃない限り)作品を知ってもらえる機会を増やせれば良いので、そう言う意味では、私がこの漫画を描き上げるまでの過程である「2年で4P描けなかったのに1年で424Pの漫画を描き切った」と言う事実は、実は作品そのもの以上に興味を引くきっかけになってくれる可能性があると感じて記事を書き始めました。

他にも下のような登場人物のカラーイラストを描いてSNSに投稿したりして、少しでも作品を知ってもらえる機会に繋げる方法はまだまだ私が知らないだけでいくらでもあると思います。

この投稿からも、作品を読んでくれた形跡がありました。
ちゃんとした表紙画像やロゴも作りたいと思ってみます。

表紙と冒頭を作り直したら、今度は10話にわけずに382ページ一気に投稿とか、色々やってみたいです。




・結局行動の先にしか、自分の答えはない


この「筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた」も、描き始める前は書籍化と言う目標はありませんでした。
それはそうですよね…、だって最初は書籍化どころか2Pの漫画すら完成させることができなかったんですから…。

でも、誰かに見てもらい色々な可能性を示してもらい、持ち込みをして、投稿をして、何が現実的で何が非現実的な事かを感じて、少しずつ少しずつ目標や可能性も具体的に感じる事ができるようになりました。

私は、現実は厳しくて基本うまくいかないと思ってます。
「書籍化とか言ってるけど、漫画の世界そんな甘くねーぞ」とか、そんな声も聞こえてきそうです。
でも、手探りで這いずり回って懸命に取り組めば、想像した以上の結果が得られたり、その夢や目標を追う過程から新しい道が開かれることも今までの人生で何度も経験しています。

今、この記事を読んでくれている漫画を描き切れなくて苦しんでいるあなたのこれから描き上げる漫画が、絶対に成功するなんて事は私には言えません。
でも、インターネットで「漫画家になるには」と検索して得た表面上の知識と、自身で行動して時には否定されて傷付いて、その道中で得た知識や経験では、天と地との差があります。

この記事を見ても、ペンを手に取らなければ漫画は完成しません。
どれだけ知識を得ても、結局自分にとっての答えは行動の先しかありません。

時間を割いて書いたこのnoteの記事が私自身に何をもたらせてくれるのか。
誰も読んでくれなくて何も起こらないかもしれないし、書籍化が実現するきっかけになるかもしれません。
ただの恥ずかしい一人相撲で、書籍化なんて夢のまた夢だと思い知らされるかもしれません。
誰かの役に立てて自分の心が満たされるかもしれません。

でも、声出して、一歩踏み出して、恥かいて、やってみる事でそういうことも少しずつ分かってきて、次の行動を起こす基準になってくるのだと思います。

まだまだ人に漫画を教えるような経験値ではないので、テクニックとか技術的な事ではなく、ただ自分の感じた描けなかった理由、描けるようになるためにやった事、投稿をして起きた事感じた事を全部書きました。
お互い自分の願いをかなえる為に、ペンを取って失敗して苦しみながらも、それでも絵を描く喜びを思い出し、楽しみながら漫画を描いていきたいですね。




第5部 「筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた」の感想の紹介とか


ここまで読んできて、「じゃあその じゅーぱち と言う作家の描いた『筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた』と言う作品は、実際にどんな作品なの?!」と気になっているはずです。

そう、気になっているはずです!!
騙されたと思って、6話まで読んでみて欲しいです!!
(10話構成ですが、ボリューム的には6話終わりでちょうど折り返し)

この第5部では、この「筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた」に込めた想いとか、そういうのを書こうと思っていたのですが、「作者としてこんな風に読んで欲しい」気持ちが強く出てしまっていたので、一度打ち込んだ内容を全部消して、頂いたご感想をご紹介することにしました。

他にもあらすじや、登場人物を簡単に紹介したいと思います。
まずは、読んで頂いたとても素敵なご感想をいくつか紹介します!


・頂いたご感想


他にもたくさん本当に嬉しいご感想を頂いていて、これらの感想に対する作者の感想は「生きてて良かった」くらい嬉しかったです。
改めて本当にありがとうございます!

表現したいと思った事をちゃんと伝えられるようになりたくて漫画を描きだしました。
当然まだまだスタートしたばかり、これからももっと勉強をしていくわけですが、ひとまずその点は目標達成できたと思っています。




・あらすじ


絵を描くのが大好きだった主人公・平野は、小学生の頃にあったある出来事で「自分は絵を描くのが得意だと思ってはいけない」と思うようになり、絵を描くのを辞めてしまう。
しかし、高校3年生の頃、二人のクラスメイトの女の子に出会い、時が再び動き出す。

「鋼鉄の心も、華やかな才能も持たない僕が今こうして絵を仕事にしているのは、筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りたから。
だから、ここで再び君と出会えた時、奇跡だと思ったんだ」

平野にとっての女神さまとは誰なのか…?



▼コミチさんがとても上手に紹介してくださっていたので。
そう、「絵を描くことでつながる救いの輪」でもあります。


・登場人物

平野 匠(ひらの たくみ)

本作の主人公。
小学生の頃、絵を描くのが大好きだった少年。小学生の頃にあった出来事をきっかけに絵を描かなくなる。
真面目で優しい性格だけど、言いたい事が言えない気の弱さもある。


三神 心春(みかみ こはる)

平野の高校三年生の時の同級生の女の子。
整ったルックスに気取らない笑顔。
明るい性格。正義感が強く優等生気質なのにユーモアがあって、嫌味がない。いつも近くに誰かがいるクラスの人気者の女の子。
誰かの絵を見るのが好き。
実は関西人。


生田 小町(いくた こまち)

教室の隅っこでいつも絵を描いている内気な平野の同級生。
主人公・平野の過去を知っている、ちょっと怪しい雰囲気のある女の子。
鳥(ハト)に懐かれる不思議な魅力がある?
内藤のことを心の中で「闇堕ちくん」と名前を付けている。


内藤(ないとう)

平野の同級生。
体格が良いアメフト部の少年。
平野とは小学6年生の時 同じクラスで顔見知りのはずだが、平野にはいつも強く当たる。
粗野な性格だけど、実はちょっと詩人な一面がある。
(小学生卒業と同時に引っ越して、平野とは高校で再会する。)
口は悪いが、ちゃんと ごめんなさい できる子。


トリナイト

平野が小学生の頃描いていた漫画の主人公。
弱くてビビりだけど、仲間がピンチの時には勇気を振り絞って助けに来る。


富田(とみた)

平野の小学生の頃から仲のいい幼馴染。
生真面目な平野と違い、いつもおちゃらけている。


七星 光(ななほし ひかる)

平野の同級生で、サッカー部のエース。
文武両道で学校一と言われるくらいの評判のイケメン。
謙虚な性格。


鳥居(とりい)

内藤の友人。内藤とは中学生からの同級生。
内藤と一緒にアメフト部に所属している。
ちなみに内藤のポジションはLB(ラインバッカー)で、鳥居はDB(ディフェンスバック)。


・「筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた」が読める所

最初にも読める所は紹介しましたが、最後にもう一度紹介させてください!

例え拙い作品でも、想いを込めた作品には魂が宿っていると思っています。
生成AIで簡単に作品や作風が盗めてしまう今の世の中、ぜひ読んでみて頂きたいです。


▼X(旧:Twitter)

▼[ニコニコ静画]コメントとか入れて、是非賑やかしながら読んでもらえると嬉しいです!

▼Pixiv

▼LINEマンガインディーズ

▼コミチ

(縦スクロールで読むならコミチ)

▼ジャンプルーキー

(ジャンプルーキー!にも投稿しているのですが、表現の規制で最終話の少しだけセリフを変えているので、できれば他の媒体で読んで頂けたら嬉しいです。)

★この作品に関しては書籍化を目指しており、興味を持ってくださった出版社様がいらっしゃったら、是非お声がけください!★

連絡先▶︎ contact@jupachi.com



さいごに


頭の中の大作、382ページの「筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた」を2023年10月8日に描き終えて、2023年10月14日からXなどに10日間かけて投稿。

結果としては、たくさんの方々に本当にもったいないくらいの素敵な感想を頂けて、気持ちの部分では、「大成功」。
ビジネスとしては「さぁ、ここから」と言う状況です。

最初に書いたように、この「筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた」の書籍化が当面の私の夢であり、目標です。

現実問題として、かけた時間の分だけお金やチャンスに変えていかないといけない問題もあるし、ただ純粋にもっとたくさんの人に読んで欲しい気持ちもあります。
とりあえずはやれる事を全力でやっていこうと思います。

色々な漫画サイトに投稿するも、Xで何度か自分でリポストしてアピールするもさらに大きな読者増につながらず、さてさてどうした物かと思っていた時に、次の一手としてこの記事をnoteで発信することにしました。

目的としては、一人でも多くの人に作品が目に止まって少しでも話題になって書籍化のチャンスに辿り着くこと。
でも、自分の望みを叶えたいなら、まずは読んでくれる人や興味を持ってくれる人の役に立つのが大切。
その為に、自分の今までやってきた事を包み隠さず洗いざらいこの記事に書きました。
(漫画の先生に直接指導を受けた内容だけは、その先生の大事なコンテンツなので書いていませんのでご了承ください!)
その上で、同じように漫画が描けずに苦しんでいる人の少しでもプラスになれたら、私もとても嬉しいです。

もし、この記事が役に立ったとか面白かったと思ってもらえたら、作品に対するご感想やこの記事に関することをSNSとかブログで声を出してもらえると、最高に嬉しいのです。
いっしょうのおねがいです。

いっしょうのおねがいです

こうして「書籍化、書籍化」と言っていますが、私はとても臆病で、「『筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた』、書籍化希望です!」と言いまわるのも本当は少し怖く感じる時もありまして。
「この程度で!?」「今どき実績あるベテランでも紙の本は難しいよ??君ごときが何言ってるの!?」色々な声が聞こえてきそうです。

「いやいや、この漫画はすごくいいから書籍化する価値が絶対ありますよ」と強気な自分もいれば「はい…生意気言ってすみません」とシュンとしてしまいそうな弱気な自分もいて葛藤の毎日です。

描いてる途中も、特に物語の後半は自分の体験から来る感情を、もうこれでもかと詰め込んで、しょっちゅう涙を流しながら描いていて、でもある日ふと他の人が描いた奥が深くてなんか文学的でたくさんの人が絶賛している素敵な漫画を見たら、周囲から見たら自分の作品がすごく幼稚でつまらないんじゃないかと思えたり。
でも、想いを込めたこの漫画のファイルを開いて描き始めて、また自分で泣いて。でも自分で涙を流すと言う事は、「自分の作品を俯瞰して見れていない証拠なのでは!?」と不安になったり、「いや。でも、やっぱりこの漫画はめっちゃいい!」と持ち直したり、妻子のいる身でお金になるかどうか分からない活動に時間を費やすのがすごく不安や焦りを感じたり。
気持ちが天まで昇ったり地に堕ちたり、本当に毎日が感情のジェットコースターでした。

そんな「漫画描くの楽しかったー」じゃ片付けられない中、なんとかこの「筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた」を描き切りました。
描き切ったらすごい充実感の中、「さあ!いざ公開するぞぉ!」と言う気持ちになると思っていたら、とんでもない恐怖が心を襲ってきて「公開するのやっぱりやめようかな…」くらいまで気持ちが落ちていきました。
この漫画にはあまりにもたくさんの想いや感情を詰め込みすぎて、前に短編を投稿した時とはプレッシャーが全然違いました。
「涙を流しながら描いた、自分の気持ちを詰め込んだこの漫画が、誰も読む価値のない物だったらどうしよう」
怖くて怖くて仕方ありませんでした。

そんな時に、パパのおかげで絵を描くのが好きになったと言ってくれる次女が真っ先に完成原稿を読んでくれて「私もいつかパパみたいな人を感動させられる漫画を描けるようになりたい」とボロボロと流した涙が背中を押してくれて、無事公開することができました。

2023年10月14日より、毎日20時に1話ずつ投稿。
特に1話目の投稿は本当に手が震えました。
前半がおとなしい漫画なのでちゃんと読んでもらえるんだろうか。
不安は的中。なかなか伸びない数字。
でも、投稿したら見慣れたいくつかのアイコンが投稿時間を待っていてくれたように通知欄に出てくるんです。
大きな展開のない回でも、絞り出すように引用で感想を書いてくれたり、そんな優しさにどれだけ励まされて、私の心を守ってくれたか。
…それはまるで、女神さまのご加護のようで。

漫画も後半戦、6・7話からコメントや拡散が増えていきました。
そこからは私も自信もあったので、思った通り、いや思った以上の反響がありました。
「感動した」「泣いた」「夢供養ができた」「救われた」本当にもったいないくらいの想像以上に嬉しい感想を頂きました。
画力に自信があるわけじゃないので、そんな自分が絵を題材にしていいのかと思っていたので、「絵がシンプルで可愛くて読みやすかった」とか絵を褒めてくださる方もたくさんいて嬉しかったです。

この「筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた」は、このSNSの時代に、たった1人が強く認めてくれる力を描いた物語です。
自分で描いた物語を投稿する過程で、それを凄く感じる事ができました。
もちろん綺麗事抜きで「数字」は本当に大切で、この漫画も多くのフォロワーのいる影響力のある人が拡散してくれたので、たくさんの人に届き、たくさんの感想を頂けました。
でも、「たったひとり」の感想や想いがどれだけ素晴らしい事かを表現したかった。
業界全体から見れば大した画力もない私でも、絵を題材にした作品を描き、ちゃんと伝わって、想いを込めた絵の持つ力の強さを少しだけでも表現できたんじゃないかと思ったりしてます。

とは言え、私なんかは欲深くてしょうもない生き物なので、こんなに素敵な感想をもらえたのに、周りの作家さんがどんどん書籍化が決まったり、メディアに取り上げられたり、とても素敵な漫画を描くたくさんの人に賞賛されているデビュー前の人とかの作品を見ると、一瞬「ウッ」と思ってしまうことがしょっちゅうあります。
でも、SNSとかでも 1いいねが貰えたら10いいねが欲しくなって、10いいねが貰えたら今度が100いいねが、100貰えたら1000、1000貰えたら1万、1万が貰えたら10万。
そんなに貰えたら今度は逆に不安になるかもしれません。
(10万ももらったことないので、知らんけど!)
気持ちが欲張り出した時は頂いた感想を思い出します。

この記事を読んでくれている人の中には、作品を完成させる怖さや公開する怖さと戦っている人がたくさんいると思います。

でももし、あなたの投稿した作品に1つでもポジティブな反応があったら、その作品は大成功だと思って欲しいです。
ひとつも反応がなければ、そっと自分でいいねして、自分で自分を認めてあげてください。
反省は大切だけど、どうか全否定しないで。
作品を作り上げて投稿して、恐怖に打ち勝ち一歩踏み出した人は、きっとそれだけでカッコいいヒーローです。

人生の大切な事の大半は他人からの評価で、好きな人と交際できるかも、昇進もお給料も仕事の依頼も、大事なことはだいたい自分じゃない他人からの評価。
なのに不思議な物で「何が幸せで成功か」は、自分しか決められないんですよね。
この物語の主人公の平野が掴んだ小さな成功。
成功者からしたらどうってことない手元にある小さな小さな成功を「女神さまがくれた奇跡」だと彼自身が定義しました。
主人公がヒロインに贈った心を込めて描いた絵は、美術の世界からすれば評価にすら値しないかもしれません、SNSにアップしてもたいして「いいね」もつかない絵かもしれません。でも、彼女にとっては想いの込められたその絵は人生を変えるくらい価値のある物でした。

なんでもかんでも優しい言葉を求めるのがいいわけではありません。
誰かの厳しい意見に耳を傾けるのはとても大事です。
でも、それを受け入れるには誰かが少しでも認めてくれた愛が必要な気がします。
この先チャレンジしていけば、ボロカスに言われる事もたくさんあると思います。
でも、批判は受け止めて改善したり、ただの悪口は受け流す事ができたら、それはこの作品を受け入れてくれた皆さんの温かい感想が私の心を守ってくれたからだと思います。

心から描きたいと願った「筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた」を2023年に描き終えて、一旦は仕事の営業とかにもう少し力を入れようと思っているので、作品の発表ペースは落ちますが、これからも漫画もイラストもたくさん描いていきたいと思います。

長い記事ですが、最後までお付き合い頂きましてありがとうございました。
是非、作品を読んでご感想などなど、よろしくお願いします!!
目指せ書籍化!!

▼noteにも「筆を折りかけた僕に女神さまが舞い降りた」を投稿しました


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