新作映画『カモン カモン』と『パリ13区』の共通点がおもしろい!
楽しみにしていた映画が2本、同日公開となりました。
マイク・ミルズの新作『カモン カモン』とジャック・オーディアールの新作『パリ13区』。どちらも素晴らしく心に染みる作品でそして偶然にも共通点の多い作品でしたので2作品あわせて共通点とともに紹介していきたいと思います。
『カモン カモン』(4/22公開)
ひょんなことから甥っ子のジェシーを預かることになったジョニーは、風変わりな少年ジェシーと時間を過ごすうちに心を通わせていく…
という話なんですが、いやーしみじみ良かった。
大事件とか起こらないんですが、心の機微が伝わってほのぼのするし、最後ウルっときちゃうしすごくいい映画でした。
めちゃおすすめです!
マイク・ミルズ
監督のマイク・ミルズは、CMディレクター出身です。ナイキやギャップのCMやパルプやエールのMVなどを手がけてきた人で、その後『サムサッカー』で映画監督デビューをしています。
前作の『20センチュリーウーマン』では自身の幼少期の母親との関係性をテーマにして、その前の『人生はビギナーズ』では大人になってからの父親との関係性を描いた作品をつくり、ここ最近は半径10メートル以内の身近なところで映画をつくってる感じです。(どちらも面白い!)
本作『カモン カモン』は甥っ子との話ですが、自分に息子が生まれてその距離感から思いついた企画なんだそうで今回も身近なところからヒントを得た作品となってます。
マイク・ミルズはクリエイターとして好きです。
『パリ13区』(4/22公開)
パリ13区で暮らすアジア系のエミリーに教師の黒人青年カミーユ、大学に復学したノラとカムガールのアンバー・スウィートと多様な人種の若者たちの暮らし、仕事、セックス、人間関係などを描いた群像劇のラブストーリー。
パリの若者たちを描くいい作品って時代時代であるんですが、まさに今の時代を象徴する作品でした。
モノクロで映し出されるパリの美しさ、パリの若者たちの等身大の悩み、多様な人種(13区はアジア系など移民も多い地区なのだそう)が感じられるとてもいい映画です。
セリーヌ・シアマが脚本に参加
監督のジャック・オーディアールは、今年70歳のベテランなのですが今回は共同脚本に若手の女性作家レア・ミシウスとセリーヌ・シアマが参加しています。
シアマは傑作『燃ゆる女』の監督です。
同性愛やトランスジェンダーをテーマとした作風が魅力でとても評価も高いです。こういう才能を取り組んでいるあたりがいい!
ノラ役のノエミ・メルランは『燃ゆる女』の女優さんです。
『カモン カモン』と『パリ13区』の共通点
それではここかからは、自分なりに感じたこの2作品の共有点を挙げていきたいと思います。
1.4月22日公開
これはもう完全に偶然ですが笑
最初は考えてませんでしたがよく見たら公開日も一緒だったのでついでに挙げさせてもらいました。
2.モノクロ映像
2作品ともに全編モノクロ映像です。
映し出している時代はどちらも現代で昔の映像という訳ではないのですが、モノクロの美しい映像で撮られています。
それによって現代の話ではあるのですがどこか普遍的なおとぎ話のような印象を受けます。実際のパリ13区やニューヨークなど特定の街を映し出しているのですが色がない分特定の場所という感じもせずこちらもパリのどこか、アメリカのどこかという印象さえします。
インタビューによると、ジャック・オーディアールは前作が緑豊かな田舎が舞台だったから次回作は都会で色彩なく作りたかったそうで、マイク・ミルズの方はとても身近な話なのでモノクロ映像で寓話っぽくしたかったのだとか。
それぞれ理由は違うけどモノクロにしたい意図が面白いです。
3.パリ、アメリカの特定の街を描く
『パリ13区』は、その名の通りフランス・パリの13区を舞台としています。
アジアの系の多いこの地区で中華街や中華料理店なども出てくるのですが、モノクロ映像で統一されているので、赤に金色みたいな中華の色彩は出てきません。その分街の雰囲気にはパリとしての統一感が感じられます。
『カモン カモン』は、デトロイト、ロサンゼルス、ニューヨーク、ニューオリンズの4都市を旅します。(途中、ジェシーの母親が滞在するオークランドも入ります)
ロサンゼルスの太陽やニューヨークの夜景など見慣れた色彩は出てきませんがモノクロでもその雰囲気を感じられる特徴ある街並みです。
モノクロではありますが、それぞれ現代の街並みです。
キレイな海外の街を楽しめるというところもこの作品たちの魅力です。
4.過去の名作からの影響
『カモン カモン』の歴史も風景も全く違う4都市を巡るストーリーは、ヴィム・ヴェンダースの『都会のアリス』からインスパイアされているんだそうです。
”ドキュメンタリー性を盛り込んだ寓話”として表現したいというのもモノクロにこだわったポイントだそうです。
モノクロで現代のパリを映し出した『パリ13区』は、現代のマンハッタンをモノクロで映し出したウディ・アレンの『マンハッタン』に映像的なオマージュを捧げているそうです。
様式美に飾られたパリ中心部よりも時代の活力が感じられる13区をモノクロで映し出すことで”現代の時代劇”としてのパリを見せたそうです。
『都会のアリス』も『マンハッタン』どちらも名作です。
そして言われてみれば確かになストーリーや構図ですので、もし作品が気に入ったらこの辺りの過去作もあわせて観てみるとより好きになれるかもしれません。
5.こじらせ人物たち
『カモン カモン』の甥っ子ジェシーは学校に友達もおらず変わり者です。そんなジェシーの面倒を見るジョニーもジェシーの母親である妹や母親とは一時疎遠だったり人間関係に問題を抱えています。
『パリ13区』のエミリーも高学歴なのにコールセンターで働き、そこでもお客さんへの対応が悪くクビになってしまう。好きなのに言えず不貞腐れて悪態をついてしまう。
出てくるキャラクターがみんなどこかこじれていてコミュ障なところがあるんですが、それでも等身大でこういう人いるよね、自分にもこういうとこあるよねって思えてどこか自分ごとのように感じてしまえるようないいキャラクターたちなんです。
そんなところも共通していていいポイントでした。
6.最後に希望がある
どちらも人間関係がこじれていて、人生うまくいってない人たちなんですが、いろいろすったもんだがあった挙句には最後に希望が見えて、人生そんなに悪くないもんだなってしみじみと思わせてくれます。
そんな映画の余韻もいい感じで似ています。
7.パンフレットが大島依提亜デザイン
パンフレットのデザインがどらちもいい!というのがまたまた共通点。
そしてこのパンフレットをデザインしているのが、映画パンフ界のトップランナーである大島依提亜さんなんです。
いやー、デザインいいなーって思ってたら両方ともそうでした笑
映画パンフについては以前にnote書いてますので参考に。
最後に
今回は面白かった新作映画2本にすごく共通点を感じたので、まとめてみました。
自分で思ってた以上にまとめ出したら共有点が多くて面白かったです。
良作ともすごい良い作品なのでおすすめです。
まだ公開されたばかりですが劇場で上映されている間に鑑賞されることをおすすめします。
最後までありがとうございます。