2021年、映画ベスト10(日本映画編)
あけましておめでとうございます。
先日、2021年の映画ベスト10の外国映画編を発表しまして、続けて日本映画編の発表をしたいと思います。
昨年もかなり映画を観ていて日本映画がとても充実していた年でした。
なかなか絞り込むのがこちらも大変でしたが、10本いってみたいと思います!
▼2021年、映画ベスト10(外国映画編)
選出のルール
基本的に2021年に公開された新作映画が対象で、動画配信のみは含んでいません。動画配信サイトがメインでも劇場で公開していれば対象になります。
昔の映画のリバイバル作品や公開日が2020年は対象外となります。
日本映画10位〜6位
10位 『由宇子の天秤』(9/17公開)
これ公開規模はかなり小さくて、知ってる方は少ないかもしれないですがすごい良作でした。
テレビの報道番組でディレクターをしている主人公は、自分が扱う事件の取材先で真実を追い求めるうちに思わぬ事実に遭遇し、決断に迫られる。そんな時に別なところでも問題が発覚し。。
メディア報道のあり方や、正しさって何なのかを考えさせられる社会派ドラマです。
主演の瀧内公美が好演していてかっこいいです。
河合優美もキーマンで登場していて、要チェックな女優陣が活躍していて良かったです。
9位 『香川一区』(12/24公開)
これもすごかった!
あの話題になった『なぜ君は総理大臣になれないのか』の続編にあたる政治ドキュメンタリーです。
先の選挙でも激戦区のひとつだったのが「香川一区」。
万年二位の小川淳也議員の地元での最大のライバルは、地元のメディア王一族にしてデジタル相として有名なあの平井大臣。
この激戦も面白いんですが、選挙ってすごく人間性が露わになるのでその中で繰り広げられる人間関係だったり、家族の話だったり実はすごく人間ドラマとしてこの映画面白いんです。
そして、めっちゃ泣きます笑 どこで?って思うかもしれないんですが真剣な人間の生き様って泣けるんです。
タイトルとかジャンルとかめっちゃ地味なんですが中身はとんでもなく面白いです。
でもまずは『なぜ君〜』から観るのがおすすめです。
そしたら本作は絶対に観たくなるはずです。
8位 『あのこは貴族』(2/26公開)
これは本当に良かった。
実に今っぽく、山内マリコ原作らしいシスターフッドな作品。
本来なら交わることのなかった別世界に住む二人がある男をきっかけに
出会い人生の中の一瞬を過ごす。
主人公たちの生活から見えない格差社会が見えてくるし、門脇麦と水原希子がバチバチやり合うのかと思いきや決着の付け方の感じが今っぽい感じ。
この空気感はぜひ映画で感じ取ってもらいたいです。
いい映画ってすごく"映画的"なシーンがあったりするんですが、この映画も東京タワーを眺めて、夜道をチャリで二人乗りするシーンとかすごい絵になって印象深い良いシーンです。
今ってこういう女性目線の作品がすごく増えてきてますが、その中でもかなり良くてこの時代の空気感を感じることができる代表的な作品じゃないかなと思います。
7位 『サマーフィルムにのって』(8/6公開)
こちらはめっちゃ好きな青春映画です!
少年のような伊藤万理華が良かった。
時代劇オタクな女子高生ハダシは、文化祭までに映画を撮ることを決め仲間を巻き込んで映画作りをスタートする!って内容なんですが、時代劇オタクっていう設定がまずいい。勝新VS雷蔵ごっこをしてる時点で100点です笑
やっぱり映画好きにとって、映画作りの話ってすごく興味を持ってしまうんですが、この作品はそんな我々にもしっかり応えられる良さを持った作品です。 青春映画でありながら、恋愛も時代劇やSF要素まで入ったてんこ盛り状態で果たして大丈夫なのか?って思ったけど全然大丈夫というタフな作品です笑
昨年は『佐々木、イン、マイマイン』が青春映画としてとても良くてランクインしてましたが、今年は本作がそれに代わる作品。
ハダシ、ビート板、ブルーハワイというあだ名の由来が実はパンフレットに書いてあったりします。
夏の青春映画として良かったです。以前にnoteも書きました。
6位 『街の上で』(4/9公開)
この作品もめちゃくちゃ面白いです!
『愛がなんだ』の今泉力哉監督の最新作にして最高傑作。
やっぱり今泉監督って、こじれた恋愛群像劇が得意な監督ですが、今回はその真骨頂って感じで、最初から最後まで面白いです。
元々、下北沢映画祭のために制作された作品なだけに全編下北沢ロケで、あの店もこの店も好きなお店がたくさん出てきます。実際にある古着屋さんやラーメン屋、カフェだったりするので大好きな人は聖地巡礼的に行ってみるのもいいかもです。
話は、古着屋のスタッフがひょんなことから学生映画にエキストラとして参加することになるというものなんですが、そこで出会う人たちや彼女との関係などが複雑にこんがらがってきて爆笑するほどのアンサンブルを見せるラブコメディです。
すかした感じの成田凌とかもうサイコーです笑
若葉竜也や萩原みのり、古川琴音ら今や映画に出まくってる若手俳優もみんないいです。
日本映画5位〜1位
ここからは後半戦です。
前半もかなり良作ぞろいですがここからも傑作ぞろいです!
5位 『空白』(9/23公開)
とっても重厚で重い、超ヘビー級な大傑作!
これは余韻がハンパないすごい映画です。
古田新太にとっても、吉田恵輔監督にとっても間違いなく代表作となる一作。
万引き少女が店を出たところで交通事故に遭って死んでしまう。
元々クセの強い少女の父親は次第にモンスター化し、彼女を追いかけた店長を追い詰めてゆく。
それらを取り巻く人間関係や、報道するマスコミ、風評被害、さらに少女は本当に万引きをしていたのかなど様々な要素が絡み合っていく。
被害者が加害者になり、加害者が被害者になる。
正義とは何なのかを痛いほど突きつけてくる強烈なメッセージ。
ものすごいヘビーなパンチなんですが、すごいものを見せてくれることは間違いないです。
そして役者が隅々までみんないい!
特に車を運転していた女性の母親を演じた片岡礼子さんがこの年の助演俳優賞です。あのお葬式のシーンは、もう涙腺崩壊でした。
想像を超えてくる切り返しで、主人公の心が変わったとても重要なシーン。
それを見事に演じきって、とても素晴らしい演技でした。
4位 『ドライブ・マイ・カー』(8/20)
カンヌ国際映画祭にて見事に脚本賞を受賞して話題となった本作。
村上春樹の短編小説を原作とした濱口竜介監督作品です。
これも良かった〜
約3時間というなかなかの長尺なんですが、全然長さは感じなくて見れちゃいます。
元々の原作は短編なので車中での会話だけの話なのですが、短編集に入っている「シエラザード」や「木野」という別の短編の内容も盛り込み、さらに「ワーニャ伯父さん」、「ゴドーを待ちながら」などの演劇の要素も入れて、ドライブする行き先が演劇の演出のために行く広島になるなど設定は多少変更されていますが、見事にまとめきってます。
複数の話を織り交ぜることで、三浦透子との車中の会話だけでなく、桐島れいか演じる奥さんのミステリアスな話や、演劇に参加する岡田将生演じる俳優の危うさを含んだ行動、それに広島での各国の俳優が手話を含む様々な言語で参加する演劇など、映画としての深みがグッと増して格も上がります。
これをひとつの話に見事にまとめた脚本が本当にすごいです。
個人的には岡田将生が車中で奥さんについて"物語の続き"を話すところなんてすごいゾクゾクしちゃっていいシーンでした。
車のサーブも原作では黄色なんですが映画では赤。これは背景に映えるのが赤い車だったということだったみたいです。
3位 『すばらしき世界』(2/11公開)
こちらは西川美和監督の最新作にして大傑作!
西川監督の作品は大抵好きなんですが、本作も良かった。
役所広司演じるヤクザ気質な男が出所後の第二の人生をどう生きていくかという物語。
当然、そう簡単にはいかず前科者の生きづらさがあるんですが、それをユーモアを交えながら優しくも厳しい眼差しで描いていく作品です。
役所広司が作り出す少し狂気を孕んだような人物像がすごくこの主人公にマッチしてて伝わってきた。普段は気がいいのにカッとした時に何を仕出かすか分からない怖さを見事に演じきってました。さすがです。
もう映画が始まってすぐに「ああ、これはきっと傑作なんだろうな」って思いました。そういう雰囲気を持つ作品でした。
西川監督の映画づくりが上手いというのもあると思いますが、いい映画って見始めると結構分かったりするものです。
詳しいシーンは言いませんが、タイトルが出るのが結構ラストなんです。あのタイミングでこのタイトル出すって本当にすごいセンスです。
その辺りも含め、すごい傑作なのでぜひ観ていただきたいです。
2位 『偶然と想像』(12/24公開)
こちらも濱口竜介監督の作品。
『ドライブ・マイ・カー』に続いて2作品がランクインしました。
こちらは、三話の短編からなるオムニバス作品です。
そして、これがめちゃくちゃ面白い!!
もう絶対観て!と誰にでも勧めたくなる作品です。
『ドライブ・マイ・カー』がアート寄りだとすると、こちらはエンタメ寄りなテイスト。なので非常に見やすいし、誰にでも分かりやすい内容です。
公開規模がすごく小さくて現状東京だとBunkamuraル・シネマでしかやってないので混んでると思いますが、ル・シネマが開館以来初の邦画を上映したという話題作でもあります。
濱口監督が大好きなフランス人作家のエリック・ロメールを意識して作ったという「偶然」から転がり出すそれぞれのエピソードがどれも「想像」を超えてきてたまらなく面白いです。
劇場も大爆笑でした。
よくこんな話書けるな〜と感心すらしてしまいました。
濱口監督の脚本力は本当にすごいと思います。
スター俳優や巨額の制作費がなくても、面白い映画は作れるんだっていうことを体現してくれました。
1位 『花束みたいな恋をした』(1/29公開)
そして結局1位はこちらでした。
もう観終わった時の興奮はすごかった笑
分かるわかるの連続ですぐにでも誰かと話したくなる、カルチャー好きには特に刺さる内容だったのではないでしょうか。
劇中に登場する固有名詞がどれもリアルで絶妙なタイトル。分からないやつもその後チェックしてみたくなるのでそこから読んだ本もありました。
パンフレットがその辺りのタイトルをみんな網羅していていいです。
「観た人用」として以前にnoteも書きました。
当初は、菅田将暉と有村架純のラブストーリーということでありがちな恋愛映画だと思って敬遠しちゃってたんですが(失礼)、評判がとてもいいので観に行ったらびっくりという映画でした。そのギャップもすごい笑
坂元裕二の凄さを分からされた作品でもありました。
誰にでもあるような恋愛の瞬間と、そこにいつもエンタメが寄り添ってる感じの演出がとても刺さってしまいました。
この作品は興行的にも大ヒットしていて昨年の興行ランキングでもトップ10に入ったほどなので観てる方も多いかと思いますが、こういうオリジナル作品がヒットして良かったです。
2021年日本映画ベスト10
Instagramでひと足先に発表
インスタではちょい早くベスト10をそれぞれ発表しました。
テキスト量は少なめですが、カジュアルに映画ネタを投稿していますので、こちらもチェックしてもらえると嬉しいです。
最後に
外国映画編に続いて、日本映画編を発表させていただきました。
こちらも良作が多くて絞り込むのが大変でした。
10本に入りきらなかった作品も結構あって、外国映画編と日本映画編で惜しくも10本に入らなかった作品、動画配信のみだったから対象外となった作品だけをまとめてみても面白いかなとも思いました。
今回発表した10本もレンタルや動画配信で観れるものも多いので、少しでも映画選びの参考になればと思います。
最後までありがとうございます。