【創作】読者の心を引き付ける秘訣は、じれったさ?
「のっぴきならない」。
身動きが取れない、の意味。
私が編集者として、
漫画家さんや原作者さん、
また、時々小説家志望の方に
口酸っぱく言ってきた言葉です。
恋愛にしろ、ミステリーにしろ、
スポ根にしろ、
私たち読者が読みたいのは、
自分の都合と力でサクサク進む
優等生の人生ではなく、
がまん強く耐え、努力し、
人生の流れや世間の流れに
負けないで生きる人々の話です。
いつもママならない、
いつもかなわない、
いつも何かが足りない、
そんな人生を乗り越え、
賢明に生きる人の話が知りたい。
なのに、だいたい、
小説家志望の方は、
まず、主人公を、
都合よく動かしますね。
すぐに親と対立し、
すぐに一人暮らしする。
都合よく仲直りもする。
それじゃあ、
読者はついて行く気にもならない。
読者なら、
対立するにしても、
色々な誤解によって対立する様を
丁寧に読者に見せていきたい。
自分勝手過ぎる人物に
読者は応援したくはならない。
のっぴきならない、
どうあがいても、
そうしか選択肢がないくらい、
主人公は追い詰められるのがいい。
読者というのは、
実は主人公の現状の辛さに
共感するマゾヒストです(笑)。
恋愛だってそうで、
すぐに好き同士になる、
すぐにキスをする、
なんて流れは
よほど、あとあと伏線回収で
面白くなる自信がある
実力の高い作家しか
やっちゃだめ、新人では難しい。
まずは、
恋愛しようとしたら、
まず、ヒロインは
本命ではない男子にきをひかれたり、
本命とはいつも喧嘩しがちだったり、
とにかく、読者はみんな、
確実にヒロインが一番幸せになれる
選択肢えらびを知っているのに、
ヒロインはいつもそこにこなくて
迷子になって、
でも、恋愛もののパターンは
まずそれが基本で、、、
つまり、読者はさっと本命同士が
出会い、結ばれることを
望んではいないんですよね。
ヒロインの不運やドジぶりを
楽しんでいるフシがあります(笑)。
もちろん最後は幸せになってほしい。 でも、簡単には、そうなって
ほしくないっていう読者心理。
私たち読者はつくづく
たちが悪いなあ。
ところが、創作側に回ると、
なぜか、みんな、途端に
都合よく恋愛して結ばれて?
入部して、練習して、瞬く間に
大会優勝してしまって?
イジメを受けて、クラス1の
女子があっさり助けてくれて?
これじゃあ、
たちが悪い読者はついてこない。
来てくれない。
読者はもっと、
主人公がピンチを乗り越えていく
頑張りっぷりをみたい
「欲しがり屋さん」です。
創作の秘訣は、
主人公に、
これでもか、これでもかと、
次つぎに試練やピンチを与え続け、
一度は挫折する主人公…。
でも、努力と才能とアイデアで、
ミッションを攻略していく。
漫画「ガラスの仮面」
「こち亀」「北斗の拳」は
みな、同じ《背骨》で
できているんですねえ。
創作している方で、
もしこれを読んでくださった方が
いたら、ちょっと、
読者のたちの悪さは
多めに見てあげるとして(笑)、
そのマゾヒズムや
欲しがり屋さんであることを
忘れないでくださいね。
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