【才能】おそるべし川上未映子!彼女の才能はどこまで行くんだろう?
こんなに才能の女神に愛された
作家もそうはいないでしょう。
川上未映子さんのことです。
プロデビュー14年で獲得した
文学賞は数しれません。
デビュー作(2007)
『わたくし率イン歯―、または世界』で
早稲田大学坪内逍遥賞奨励賞をもらい、
幸先よく芥川賞候補に。
超~ぶっとんだ作品は、
いかにも新進気鋭らしい登場でした。
2作め(2008)
『乳と卵』で今度は芥川賞をあっさり受賞。
3作め(2009)
『ヘヴン』で芸術選奨文部科学大臣新人賞。
紫式部文学賞も。
斜視によるイジメをテーマにした、
それでいて、いじめをテーマにとは
いいがたい総合的な小説になっている。
ここまで一年ごとに作品を発表して、
しかも実力・売上ともに圧倒的。
おそるべし川上未映子。
2年後には、4作め(2011)
『すべて真夜中の恋人たち』は
賞こそ獲得しなかったものの、
川上さんはこうした定番恋愛小説も
お書きになるのねと唸らされました。
5作め(2013)
『愛の夢とか』は、初の短編集で
言葉を魔術師のようにあやつる軽快さは
もう絶品です。谷崎潤一郎賞を受賞。
もはや円熟したベテランの域に。
6作め(2015)
『あこがれ』は少年の語り口で
世界を語る長編で、渡辺淳一賞を受賞。
こんなに他の追随を許さない創作の
濃さと深さと神々しさを持った作家は
なかなかいないでしょう。
7作め(2018)
『ウィステリアと三人の女たち』は
2度めの短編集で、
最近、文庫になりました。
そして8作め(2019)
『夏物語』は毎日出版文化賞を獲得。
英語に翻訳され、世界からも
注目されるようになりました。
また、詩集でも、2009年、
『先端で、さすわさされるわそらええわ』
で中原中也賞、
2013年『水瓶』で高見順賞を。
作家になって12年で、
このラインナップと人気の高さは、
恐るべしですね。
作家になる前、数年、
シンガーソングライターとして
思うような結果を出せなかった人が
作家に転身してこうも成果を出し、
実力者になれるとは?
もう存在が「奇蹟」ですね。
そんな川上未映子はエッセイも
実に冴えているんです。
「髪の毛というものはじつに大変な
ものであって、長いのか短いのか
まだはっきりとはよくわからない
これまでの人生を振り返ったときに、
髪の毛についていったい
どれくらいの熱量と時間をかけて
取り組んだことであろうか。
『人生で信号待ちをする時間を
全部集めたらば半年間』という
話がありますが、たぶん時間にすれば
優にその三倍はあるだろうと思います。」
これは川上さんのエッセイ集
『世界クッキー』(文春文庫)の
冒頭「髪の思春期」の冒頭です。
単に髪の毛のことを言ってるようで、
実は人生の中での「髪の毛」の
占める領分について迫るような!
向田邦子さんのエッセイのように
気さくに読み始めたら、あららら?
「不思議の国のアリス」の迷宮の
庭に誘い込まれたような
興奮と陶酔がありますね。
まあ、エッセイ1つでも
こうも雄弁な彼女ですから、
彼女の小説がどれくらいの
熱量をもって書かれているか?
彼女は太宰治『パンドラの匣』の
映画にも出演したりして、
その時も、キネマ旬報の
新人女優賞をもらいました。
うーむ。恐るべし川上未映子。
この先、彼女は一体、何を
成し遂げてしまうんでしょう?
未来のノーベル文学賞に
もしや手が届くかもしれません。
彼女の最新刊『夏物語』は
フェミニズムとどこか符牒が
重なるような、女性のサガが
テーマですから。