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【先入観】『星の王子さま』サン=テグジュペリの半生はショックがいっぱい?
『最終飛行』。
佐藤賢一。文春文庫。
今年いちばん衝撃の本に
出会いました。
作者はフランスや日本の
歴史小説で定評ある佐藤賢一。
買って損はないはず。
衝撃を受けたのはその中身です。
主人公は、サン=テグジュペリ。
そうなんです、
あの『星の王子さま』の作者の
半生が描かれているんです。
今までこの本の存在を
知らなかったこともビックリですが、
サン=テグジュペリの生涯を
小説にするなんて、
そんなこと、ありなのかよ?
という衝撃もありました。
あの『星の王子さま』があまりに
神格化された私の中では、
サン=テグジュペリの生身の姿なんて、
書いて許されるものではなく、
小説化されるなんて
有り得ないことだったからです。
それから。
サン=テグジュペリについて
その実生活について、
ご存知の方なら
衝撃もないのでしょうけれど、
中を読んでいたら、
サン=テグジュペリは、
わがままで、憎めなくて、
夫人以外に愛人がいて、
しかも、かなりの巨体だったと
佐藤賢一は書いています。
佐藤賢一は、
史実をよく丹念に調べてから書く
歴史小説家だから、
そのどれもが本当なんでしょう。
今まで『星の王子さま』の作家に対して
私が勝手に抱いていた先入観は、
痩せた、病気がちな、
でも哲学的な思考が好きな
おとなしい人物、、、
なんてキャラクターでしたが、
いやあ、まるで正反対でした。
(笑)。
わがままで、
愛人がいて、
健康で、巨体で、、、、
このほうが、
パイロットらしいですね。
病気がちで、地味な人間では
パイロットに向かないというか
パイロットにならないですね。
それにしても、
『星の王子さま』好きには
この評伝小説は、
オススメすべきだろうか?
あまりオススメしないほうが
いいだろうか?
サン=テグジュペリに対して
思い込みや先入観が
ない方にはオススメですね。
サン=テグジュペリを
神格化してしまっているファンには
オススメできないかも。
まあ、そんなふうにして
自分の勝手な先入観を壊して行くのも
本好き人間として、
たまには必要かもしれない。
ちなみに、
この『最終飛行』は、
サン=テグジュペリの最期をも
美しく描いています。
そこだけでも
読む価値はありますね。
本は、どんな名作でも、
生身の人間が書いているんですね。
所詮、作品も、人間が生み出す
ものであることを改めて痛感しました。
先入観は、裏切られるために
あるのかもしれませんね。