【小川洋子】タイム誌が選ぶ「2024必読書100冊」
小川洋子さんが選ばれた。
『ミーナの行進』が選ばれた。
よっし!
個人的には小川洋子さんの中でも
最高傑作と信じていた作品が
ついに世界から選ばれた。
やっと世界が気づいてくれた。
嬉しい。
まるでわがことのように嬉しい。
先週末、アメリカの「タイム」誌が
「2024年必読書100 冊」に
小川洋子『ミーナの行進』が
選ばれたことが二重に嬉しい。
(日本の作品ではこれだけだったそう)
単行本は2006年に刊行されている。
まず、世界の文学作品に
小川洋子さんが選ばれたこと。
もう一つは、中でも
優れているのが『ミーナの行進』
だということ、です。
小川洋子さんなら、
本屋大賞に選出された
ベストセラー『博士が愛した数式』や
以前、海外の権威ある文学賞に
ノミネートされた
『密やかな結晶』などが
小川洋子ワールドの代表作と
言われがちでした。
確かに『博士の愛した数式』は
大ヒットしましたが、
小川洋子さんらしくは余りなかった。
小川洋子ワールドは、
ガラスの天井のような
壊れやすさ、繊細さ。
また、それとは正反対に
人生の大切なことを手放さない
したたかさ。
この二つが共存するシュールさが
底流に流れている。
それが小川洋子文学の結晶です。
そうした小川洋子作品の
エッセンスが一番ぎゅっと
詰まったのが、
今回「2024年の必読書100冊」で
タイム誌も称賛した
『ミーナの行進』なんです。
それまでの初期の作品は、
壊れそうな繊細さが
前面に出ています。
『妊娠カレンダー』(芥川賞)
『シュガータイム』
『薬指の標本』などは
そうした代表作たちでしょう。
読む人の心をざわつかせる。
心理的な不安感が
無性に中毒になる不思議な魅力。
そうした壊れそうな繊細さとは
また違う作品を描いていったのが
小川洋子さんを、
稀代のストーリーテラーに
のし上げていきました。
『博士の愛した数式』や
『猫を抱いて象と泳ぐ』
そうして『ミーナの行進』です。
『ミーナの行進』ってどんな話か?
というと、芦屋の洋館で過ごした
忘れられない1年の少女時代の記憶を…
あ、これはやはりここから先は
みなさんが直に入って下さい。
独特のモノローグや文体自体が
えも言われぬ魅力となって
あっと言う間に、あなたを
ミーナの世界に惹き込むはずです。
小川洋子さんは今年62歳。
今、成熟への境地を目指して
じっくり、かつ、まっすぐに
つき進んでいるようにお見受けします。
どうぞ小川洋子さんらしい
美しい作品を書き続けて下さい。
楽しみにしています。