本のパン祭りが行なわれている書店「パン屋の本屋」に行ってきた話
本屋さんって面白いんです。
何を今さらという感じですが、小規模の書店や個人書店などが増えて、本屋さんのバリエーションがすごく広がっています。
選書のオリジナリティだけでなく、コンセプトやお店作りから従来の本屋さんの枠を飛び越えているところもあって、本屋さんという存在の可能性がぐんぐん拡張されているように感じます。
それなのに。
思えば、行くのは通勤途中にある大型チェーンばかり。
仕事の新刊チェックとして売り場を眺めるだけで、「本屋さん」という場所にあまり向き合えていなかった気がします。
本屋さんが減っている今こそ、いろんな本屋さんに行くべきではないか。
いろんな本を買って、いろんな人と話して、いろんなことを考えて。
そして、「本屋さんって楽しいよ!」と発信しよう。
そんな当たり前のことを、今年はちゃんとやろうと決意したのでした。
というわけではじめた、「おもしろい本屋さんに行こう」企画。
モリが訪れた本屋さんを、誰に頼まれてもないのに勝手に紹介していくコーナーです。
今回のお店は、「パン屋の本屋」さん。
お名前通り、パン屋さんと本屋さんが合体したお店です。
(★写真撮影、SNS公開の許可はいただいております)
※※※
今回ご紹介するお店
「パン屋の本屋」
▼(Xアカウント)
https://x.com/panyanohonya
突然ですが、「パン読書」が好きです。
コーヒー片手にパンを食べながら読書すること、すなわちパン読書。
たとえばベーカリーで買ったデニッシュを公園で食べながら読書したり、待ち合わせ前にカフェに入ってサンドイッチをつまみながら読書したり。
僕は朝方なので、休日の朝には駅前の喫茶店でモーニングを食べながら読書したりもします。
ふかふかの食パンに、バターのきいたクロワッサン。合間にコーヒーを挟みながら好きな本の世界に没頭する。
カフェ読書をもう一段豪華にしてくれて、パンは読書時間を彩ってくれる最高のお供だと思います。
※
最寄りは山手線の日暮里駅。東口から出てロータリーと大通りを超えると、とたんに落ち着いた住宅街が広がります。小学校やスーパーもあり、家族で住みやすい街並みですね。
そんな住宅地の中に、ぱっと現れるのがシックな建物です。黒い木の壁にウッディなテラス。軽井沢に迷い込んだようなお店を見つけたら到着。
ここは「ひぐらしガーデン」という場所で、敷地内には「ひぐらしベーカリー」というパン屋さんと「パン屋の本屋さん」という本屋さんがあります。
もともとフェルト工場を営んでいたオーナーが、地域の人々に寄り添う新事業を考えた時に、パンと本だと思いついてスタートされたそうな。
やっぱりパンは読書時間を豊かにしてくれますよね。
パン屋さんと本屋さんは中庭を挟んで繋がっていて、パン屋さんを通り抜けると、小柄なかわいい本屋さんが姿を見せます(外から本屋さんに直接行くこともできます)
本屋さんは一目で全体を見渡せるくらいの広さ。黒壁に似合うシックな色合いの本棚が並んでいて、テーブル島も設置されています。
入って右手が児童書、左手が大人向けの一般書籍という分け方ですが、様々なジャンルを取り揃えられていて、幅広いニーズに応えてくれるラインナップ。
住宅地の真ん中ということで、お客さんは家族連れが多そうです。それに合わせて特に児童書が充実しています。
絵本や図鑑、知育に子供向け雑誌。自由研究の本も揃っていて、親御さんに連れてこられた子供たちはきっと本が好きになるだろうなあ……と眺めているだけで嬉しくなりました。
※
仕事柄つい児童書に注目してしまうのですが、大人向けの一般書籍も充実しています。
雑誌や小説、エッセイにレシピ本まで一通りそろっていて、エンタメ的な大衆書籍が中心。スペース的に数は多くありませんが、そのぶん厳選されていることが伝わってきます。
※
店内を眺めていて「パン屋の本屋さん」らしいなあと顔がほころんだのが、パン本コーナー。
パンにまつわる本のコーナーが設けられていて、これぞまさに本のパン祭り。棚と平台がパンだらけです。
絵本がメインですが、大人向けの小説やグッズもありますね。パン好きでなくてもワクワクしちゃう売り場です。
そういえば編集担当した『縁結びカツサンド』という本を紹介して帰ればよかった!……と帰宅途中に気づいたのでした。
ちなみに、棚の各ジャンルは、こんがり焼けたパンが教えててくれます。随所にパン屋さんらしさがあって、とっても楽しいのです。
※
お店の構えは新しくておしゃれですが、本の取り揃えとしてはいわゆる独立系書店よりも「街の本屋さん」だと思います。
本に詳しい人だけでなく、あまり本を読まない人も気軽に立ち寄れる。「たまには話題の小説でも読もうかな」とベストセラーを買ったり、育児の悩みのヒントになる本を探したり。子供に「小学二年生」を買ってあげたり。
そうした「街の本屋さん」は、一見ふつうの本屋さんに見えるかもしれませんが、実はとても奥深い存在です。
売れ筋をおさえつつ、お店の個性も見せつつ、地域のお客さんのニーズも汲み取りつつ。それらのバランスをとりながら売り場づくりをしていかねばなりません。尖りすぎてもいけないし、尖らなくてもいけない。きっとその塩梅が難しい。
「パン屋の本屋さん」は間口をできるだけ広くしつつ、このお店ならではの魅力が詰まっていて、本当に素晴らしい「街の本屋さん」でした。近くにあったら絶対通っちゃう。
こうした本屋さんが本を身近にしてくれて、本を好きになるきっかけを作ってくれるはずで、「街の本屋さん」があることの大切さをあらためて教えてもらいました。
ちなみに隣のパン屋さんでは、絵本に出てくる動物のパンなど、本と連動したパンが売られていることもあるそうです。
パンをきっかけに本に興味を持つこともあるでしょうし、本を読んだからこそそのパンを買おうと思うかもしれない。パンと本がすごく有機的に融合しているのだなあと感じました。
店内や中庭でコーヒーも楽しめるので、冒頭に書いた「パン読書」にもぴったりな場所。
近くにお住いの方はぜひ立ち寄ってほしいですし、パンと本が好きな人は足を延ばして遊びに行くことおすすめです。
★★★
<最近読んだ本>
しんめいP『自分とか、ないから。教養としての東洋哲学』
さいきんずっと迷ってるんですよ。もはや自分が迷子と言っても過言ではなくて、どうして人は悩むのか、嫉妬は生まれるのか、人生は苦しいのか……みたいなしょうもないことを考えてしまいがちなんですが、そんな時にちょっと心を軽くしてくれる本に出会えました。
老子や荘子などの東洋哲学がウルトラスーパーわかりやすく解説されてて、哲学者たちの生きざまと思想を学べます。
特に哲学者たちの人生がすごく面白くて、「ああ迷ってるのは僕だけじゃなかったんだ……ていうかみんな迷い続けてるんだね」と安心を貰えます。
この本を読んで答えが見つかるなんてことは言いませんが、そもそも人生は難しいもんだよということを学べるだけで、すごくいい。読みやすいし楽しいので構えずに読める本としてとてもおすすめ
★過去の記事はこちらのマガジンから。
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