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住宅の真ん中でギャラリーとコーヒーを楽しめる書店「COYAMA」に行ってきた話

本屋さんって面白いんです。

何を今さらという感じですが、小規模の書店や個人書店などが増えて、本屋さんのバリエーションがすごく広がっています。
選書のオリジナリティだけでなく、コンセプトやお店作りから従来の本屋さんの枠を飛び越えているところもあって、本屋さんという存在の可能性がぐんぐん拡張されているように感じます。

それなのに。
思えば、行くのは通勤途中にある大型チェーンばかり。
仕事の新刊チェックとして売り場を眺めるだけで、「本屋さん」という場所にあまり向き合えていなかった気がします。

本屋さんが減っている今こそ、いろんな本屋さんに行くべきではないか。
いろんな本を買って、いろんな人と話して、いろんなことを考えて。
そして、「本屋さんって楽しいよ!」と発信しよう。

そんな当たり前のことを、今年はちゃんとやろうと決意したのでした。

というわけではじめた、「おもしろい本屋さんに行こう」企画
モリが訪れた本屋さんを、誰に頼まれてもないのに勝手に紹介していくコーナーです

今回のお店は、「COYAMA」さん
デザインの仕事をされているオーナーが営む、ギャラリーとコーヒーを楽しめる本屋さんです。
(★写真撮影、SNS公開の許可はいただいております)

※※※

今回ご紹介するお店
「COYAMA」

▼ Xアカウント
COYAMA(@ccb1314)さん / X

武蔵小杉といえば、でっかいタワマンが乱立するおしゃれな街。複合商業施設「グランツリー武蔵小杉」などもあり、ファミリー中心に人気の高い地です。
そんな武蔵小杉駅の東口から多摩川に向かって7~8分歩き、新幹線の高架を抜けると、街並みが急に落ち着いてきます。再開発されたビル街から、懐かしさのある住宅街へ。
一軒家が並ぶエリアで、お店らしきものは見当たりません。本当にこんなところに本屋さんがあるのかしら?
グーグルマップのナビを頼りにしつつも、だんだん不安が拭い去れなくなってきたころ。

ぱっと白い家が現れました。

かわいい真っ白なお家

なんだか窓の中がギャラリーっぽい。もしや、ここかしら?
ちょっぴり疑いつつ入口から覗くと、本が並んでいるのが見える!

そうです、この住宅地の真ん中にあるお店が、今日の目的地・COYAMAさんでした。

ここが入口。山のようなロゴがかわいい

ガラス戸を引き開けると、お店の方が迎えてくれます。
COYAMAさんはブックカフェなので、カフェ利用の旨を伝えると席でおいしいコーヒーを飲むことができます。
僕は本屋さん利用のため、ゆっくり本棚を見せてもらうことに。

しっかりした木の柱が印象的。ウッディな温かみのある店内です。
入って右側が本棚ゾーンで、手前側が新刊書籍。奥のエリアが古本と分けられています。

本棚ゾーン
ここに新刊が置かれています

入口近くの新刊エリアは、エッセイや人文書が中心です。オーナーさんがデザイナーだそうで、建築やデザインにまつわる本も目に入りました。
と思ったら、『ゴリラ裁判の日』などの小説も見つけて楽しくなったり。小型の本屋さんはジャンル別に分かれていないので、新しい出会いに繋がったりしますよね。
手書きのPOPも付けられていて、いろんな所に本に興味を持つ仕掛けがありました。

ランプに照らされた売り場。おしゃれ
新刊棚。『うたうおばけ』を買いました
手書きのPOPが本への興味を誘います

新刊でめちゃくちゃ気になったのは、「激ムズ石材かるた」。
これ、名前の通り石材のカルタになっていて、「花崗岩!」と読み上げると、その石の模様の札を取れるようになっています。いや……マニアック……。
この機を逃すと二度と巡り会えなそうだし、すごく面白いので買おうかどうしようか最後まで悩んだんですが、結局あきらめました。横に並んでいる「月刊 石材」も気になるな!

世界にはまだまだ知らない本がありますね。こうした一期一会も紙の本の楽しさです。だからやめられない。

謎の石ゾーン

お店の奥側は古本エリア。
カフェ利用の場合、店内で本を読むことができます。新刊本は購入しないと読めませんが、古本は購入前でも読むことが可能。小説から芸術書までいろんなジャンルの本が並んでいるので、コーヒー読書にぴったりです。

いろんな古本

古本エリアで見つけた、お店についての冊子。
コンセプトや店名の由来などが書かれていて、見入ってしまいます。

デザインの仕事をしている店主が
仕事のヒントとなる本を選んでいますが
その本は生活を豊かにするヒントにも繋がります

冊子より

COYAMAという店名は「小山」からきているんですね。お店のコンセプトがとっても素敵。
本って生活を豊かにするヒントが詰まってるんですよね。

素敵な冊子

冒頭で書いた通り、COYAMAさんはブックカフェです。入って左手の窓沿いには長机が置かれており、柔らかな光を受けながらコーヒーを飲むことができます。

飲み物を提供している本屋さんは多いですが、COYAMAさんはフードが充実しています。アイスやサンドイッチのほか、アフォガートやチャイシフォンケーキなんかも!
カフェ利用のために訪れるお客さんも多いそうです。

充実のメニュー表
古本エリアのソファでもコーヒーが飲めます

COYAMAさんの特徴はもう一つあります。
それは、ギャラリー部屋が併設されていること。

さまざまな展示やイベントを行っているそうで、企画は持ち込みも可能(HPをご覧ください)
僕が訪れた時は「小山古道具ノ会」というイベントが開催中でした。(※9/28まで)

展示の説明はこちらです。

もう使わないけどなかなか手放せない
でも誰かの手に渡るなら手放してもいいかな……
という物たちを持ち寄ったり持ち帰ったりする会です
会場は自由にご覧いただけます

看板より

うーん、面白い!
見知らぬ誰かと、そっと使い込んだ道具を交換し合う。遊び心があって楽しいですね。
そして古道具がギャラリーに展示されていると、なぜか芸術性の高いアートのように見えてくる不思議。

新刊と古本の間にある、ギャラリースペース入口。
ギャラリースペース内
これはもうアートでは?

お店をゆっくりと見回っていて感じたのは、居心地のよさです。
僕はすぐに緊張しちゃう質なので、はじめての場所はそわそわしてしまうのですが、COYAMAさんでは気持ちが落ち着いて、ゆったり過ごすことができました。

ここはもともとオーナーさんの祖父母が営まれていた印刷所で、そちらをセルフリノベーションして現在の姿になったそうです。
随所に昔の姿を残されており、天井や柱・調度などから当時の佇まいを窺うことができます。
そうした温かみが、実家に帰ってきたような安心感を与えてくれたのでしょうか。

こうした本屋さんが住宅街の真ん中にあるって、本当に素晴らしいことだと思います。本と交わる場が日々の生活圏内にあることで、「ちょっとコーヒーを飲むついでに本でも読もうかな」といった機会が生まれますし、そこから店内に置かれている次の本に繋がっていくかもしれません。
充実したカフェやギャラリーの存在など、コミュニティの場としても進化していきそうで、地域の人々に長く愛されるお店になってほしいです。

武蔵小杉や川崎に出かける用事があれば、ぜひ足を伸ばしてみてください。今回は時間がなくて飲めませんでしたが、コーヒーもこだわって淹れられているそうです。
ちなみに僕は武蔵小杉から歩きましたが、最寄りは向河原駅です。徒歩3~5分程度で到着するので、お好みの駅からどうぞ。

木の温かみを感じる柱と天井
味がありますね
この立て札、いい


★★★

<最近読んだ本>
山本幸久
『社員食堂で三つ星を』
いろいろあるけど、明日も頑張るかぁ……と元気をもらいたいときは、山本幸久さんの小説を読むと間違いない。 田舎の家具メーカーの社員食堂で働くことになった主人公が、めんどくさいお局様と戦いながら、仕事に向き合います。食の健康も学べる本


★過去の記事はこちらのマガジンから。
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森潤也|文芸編集者
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