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出会いに満ちた高架下の書店「counterbooks」に行ってきた話

本屋さんって面白いんです。

何を今さらという感じですが、小規模の書店や個人書店などが増えて、本屋さんのバリエーションがすごく広がっています。
選書のオリジナリティだけでなく、コンセプトやお店作りから従来の本屋さんの枠を飛び越えているところもあって、本屋さんという存在の可能性がぐんぐん拡張されているように感じます。

それなのに。
思えば、行くのは通勤途中にある大型チェーンばかり。
仕事の新刊チェックとして売り場を眺めるだけで、「本屋さん」という場所にあまり向き合えていなかった気がします。

本屋さんが減っている今こそ、いろんな本屋さんに行くべきではないか。
いろんな本を買って、いろんな人と話して、いろんなことを考えて。
そして、「本屋さんって楽しいよ!」と発信しよう。

そんな当たり前のことを、今年はちゃんとやろうと決意したのでした。

というわけではじめた、「おもしろい本屋さんに行こう」企画
モリが訪れた本屋さんを、誰に頼まれてもないのに勝手に紹介していくコーナーです

今回のお店は、「counterbooks」さん
高架下にある、出会いと刺激に満ちた本屋さんです。
(★写真撮影、SNS公開の許可はいただいております)

※※※

今回ご紹介するお店
「counterbooks」


鉄道の高架下が好きです。
有楽町の高架下(ガード下)のように、古い飲食店が軒を連ねるのも味があるし、日比谷のように再開発されておしゃれなショップが並ぶのもいい。
商店街とも違った長屋を思い出す佇まい。頭上から聞こえる列車の通過音も風情ですね。

東急東横線の学芸大前駅。
学生街かつ住宅地としてにぎわう土地ですが、改札を出ると高架下にお店が並んでいます。
ピカピカしたお店ばかりでずいぶんきれいだなあと調べてみたら、7月にリニューアルしたばかり。
2021年に「みんなの学大高架下」というプロジェクトが発足して、地域の人たちと話し合いながら再開発を進めてきたそうです。再開発は広範囲にわたり、いろんな施設が順次オープンしていくのだそうな。

そんな高架下を歩いていると、ぱっと色とりどりの本が目に飛び込んできました。
今回の目的地である「counterbooks」さんです。

「counterbooks」さんの入口。扉はいくつかあります

高架下の一角なので、外観に大きな特徴はありません。真っ白でシンプルな見た目。雑誌のラックなども置かれておらず、遠目には本屋さんだと気づかないかもしれません。しかし近づくにつれ、大きなガラス窓からたくさんの本が見えてきます。

店内に足を踏み入れると、本がぎっしり並ぶ本棚エリアと、テーブル・椅子が置かれたカフェエリアが目に入ります。
(※店内は盛況でお客さんが多かったため、お顔が映り込まないようにヒキの写真は控えめです。いつもより雰囲気が分かりづらいかもしれませんが、ぜひお店に行って確かめてください)

本棚エリアで存在感があるのは、大きな丸テーブルです。
両手を広げたくらいの直径を誇る丸テーブルに、びっしり本が並べられています。小説や思想系などジャンルは様々で、見ていて飽きません。

平台の本の並べ方ってお店の特徴が出るもので、選書はもちろん、本と本との隙間や何冊重ねるかでも雰囲気が違います
「counterbooks」さんはすごく元気がある印象で、うまく言えないのですが、パワーを感じる陳列だなあと感じました。

丸テーブルの平台。パワーを感じませんか?
ジャンルも幅広い

窓際にはちょっとしたフェア平台もあり、すごく面白かったんです。

本の横にディスプレイされた「ABC」という立て札とビール缶。これは読書に合うビールを提案する「ALE&BOOKS&CIDER」という企画だそうです。
〈ビールを飲みながら読むのにぴったりな本〉という切り口からそそられますが、そのビールもこのお店で飲めるという。

読書はいろんなマリアージュが出来ると思っていて、コーヒーと一緒に読むのもいいし、ビールと一緒に飲むのもいいし、ウイスキーと一緒に飲むのもいい。
合わせ方次第で時間がより豊かになるわけで、こうした読書体験を提供してくれるフェアは素晴らしいですね。
いつまで展開されているかは分かりませんが、休日のお昼に、ビール片手に読書するのも乙ではないでしょうか。

ビールに合う本

(▲「ALE&BOOKS&CIDER」という企画について)

壁沿いには背の高い本棚が据えられています。囲うように設置された鉄パイプは、本棚の補強なのかデザインなのか。どちらにせよ武骨さが逆におしゃれ。

棚で目を引くのは、人の顔が入ったパネルです。
「counterbooks」さんではお店による選書のほかに、様々な人が選書した本も置かれています。それも単なる著名人ではなく地域にまつわる人々が多いようで、学芸大前という土地とのつながりを感じます。

選書棚はいくつかあり、選書人によってラインナップがまったく違います。ビジネス書中心の人もいれば、小説ばかりの人もいたり。
本ってたくさんあって、どれを選べばいいか分からない……という人も多いですよね。そんなときは、まず誰かのおススメ選書からのぞいてみてもいいかも。

鉄パイプが張り巡らされた本棚
選書棚。いろんな人の棚がありました
棚も魅力的です

冒頭にカフェエリアがあると書きましたが、「counterbooks」さんはカフェバーでもあります。昼はコーヒーを楽しめて、夜はカクテルをしっぽり飲むことができるのです。
バーとしても充実していて、蒸留酒はジン、ラム、焼酎、メスカル、アブサンなど60種ほどそろっているそうな。
カウンター席も広いので、会社帰りに一人でぷらりと寄って、軽く一人酒にもぴったり。

ちなみにフードも充実していて、世界各国の食文化からインスパイアされたメニューもあるとのこと。ランチ利用の方にもおすすめ。

カウンターの下にも本が飾られています(写真はレジ付近)

店内をブラブラして感じたことは、出会いが多い本屋さんだなあということ。
本屋さんってそういうものだと言われればそれまでですが、本棚のラインナップ、著名な人の選書、世界各国のフードなど、刺激に満ちているんです。
出会いという意味では、お店の人との出会いも加わるかもしれません。店長さんはひっきりなしのお客さんで忙しそうでしたが、その中でもきさくに話してくれ、きっとカウンター席ではいろんな楽しい話が聞けたりすることでしょう。

高架下に、出会いに満ちた本屋さんがある。
駅近くというのは休日や会社帰りに寄りやすい場所で、日常の延長とも言えます。当たり前の日常に刺激を与えてくれる場所があるのは、すごく幸せなことだと思うんです。
変わり映えのしない日常に小さな刺激があれば、明日が少し鮮やかになるかもしれない。本から得るもの、飲食から得るもの、人から得るもの。それらが何かを変えるきっかけになるのかもしれない。そんな可能性を感じるお店でした。

本も、飲食も、人も。人生にささやかな出会いをくれる素敵な場所。
ぜひ遊びに行ってみてください。

目印の看板

★★★

<最近読んだ本>
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森潤也|文芸編集者
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