日々是妄想: 歌舞伎町でアート?
「とうとうたらりたらりた」@新宿歌舞伎町能舞台とホストクラブ
地下鉄新宿三丁目駅を降り、延々と地下を歩き、最寄り出口を上がり目的地まで歩いた。
目指すビルは確かにすぐそこだったけど、能舞台の入り口を探して歩き回ること数分…。
煌々とドギツイまでの煌めきを纏った歓楽街の真ん中に神おろしの場があるとは。
能の『翁』からの引用である「とうとうたらりたらりた」は法華経の唱歌であり、演目の『翁』は能であって能にあらずと言われる最古の演目だとか。
随分と捻った展示である。主催には歌舞伎町のホストクラブ運営をしているSmappaグループが名を連ねる。
第二会場は営業していないホストクラブとそのビルの屋上である。屋上に向かう踊り場で四股を踏む映像と能舞台が不思議な連鎖を見せる。更に言えば、ブルーのトタンに書かれた昭和天皇の人間宣言と言われる文章。神から人へ。存在の変容、ケガレとキヨメ。ぼんやり見てたら何も入ってこない怖い展示だった。案内地図に描かれた蟹川について調べたら暗渠。その昔、ここに水源があったらしいこともわかった。花園神社の由来も興味深い。昔から水源には神社がつきもの、そうやって古代から水は守られてきた歴史がある。そして流れる水には禊ぎもつきものだったはず…
いやはや、面白い気づきがあるものである。
あのあたりの独特な風情は決して嫌いじゃないけど、なんだかびっくりするような発見があり後を引く展示である。
そういえば伊勢神宮周辺も昔は歓楽街、五十鈴川辺りはお伊勢参りの客目当ての遊び場で大いに賑わったとか。飲む、打つ、買うは人間の本能。混濁があるから人は生きていける。そして川は禊ぎの場にもなる。簡単に水に流せば済むことではないけど、清廉潔白だけじゃ生き残れない。A面とB面、自分の身に引き寄せて考えたらわかること。
芸術は確かに生きることに繋がっている。
呼ばれなければ観なかった展示だけど、面白かった。実は多様性は歴史の混沌の中でいつも問われ続けるが、中々答えは見つからない。
違いがそこにあると知ることで受容するしかないのかもと思う様になった。
有象無象、色即是空、空即是色。異次元から召喚された何かが、依代を求めて夜空を飛び回る。ゴーストの時間だ。
歌舞伎町のビルの屋上から眺める夜は当たり前だけどキラキラだった。
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