死ぬまでに観たい映画1001本#13 ~我等の生涯の最良の年~
どうも!TJです!
このブログは、死ぬまでに観たい映画1001本に載っている映画を一本ずつレビューしていき、最終的に1001本全部レビューしていきたいなと思っています!3日に1回ほど更新出来たらいいなと思っております。
今回紹介する作品は「我等の生涯の最良の年」です!
一言で表すならば、「戦後の新しい日常」です!
我等の生涯の最良の年 1946年 監督 ウィリアム・ワイラー アメリカ
個人的評価 星3.5
この映画では、3人の退役軍人(アル・スティーブンソン、フレッド・デリー、ホーマー・パリッシュ)について描かれた物語です。簡単にいうと戦争から戻ってくると、自分の故郷が様変わりしていて、それに葛藤する話です。その中で、家族とは何か、愛とは何かについて改めて考えさせられる内容となっています。ここで登場するのが新たな価値観の出現です。
前にレビューした「理由なき反抗」で説明した通り、1930~50年代の映画では価値観の変遷がよく見られます。この映画で見られる変遷は、生産社会から消費社会への変遷、権力の変遷、価値観の変遷など様々です。
まず、消費社会への変遷は、デパートなどが流行るという背景から見ることが出来ます。この映画の中で、女性が化粧品売り場で高級な香水を買うシーンなどからわかります。戦後の価値観として結構見られるのが、男性向けの用品から、女性、子ども向きの商品が売れるようになるということです。化粧品やおもちゃ、パーマ、服など女性にもおしゃれをする余裕が出てきたのですね。ここからどんどんと女性が自立していくんですよ。戦前の時代はどうしても男は働き、女性が家事をするという価値観がありましたからね。そこがどんどんと薄れていくんですよね。
女性が自立をすることは、すなわち男性の権力の低下にもつながります。亭主関白という言葉があるように、昔の家庭では父親が絶対的権力を持ち、妻、子どもはそれに従う。そして尊敬される。人権どうこうではなくそれが当たり前の価値観だったのです。一家の稼ぎ頭ですからね。
この映画のなかでも父親の威厳とは何かを問うているシーンがあります。富裕層である、アル・スティーブンソンが家に帰り、家族と話すシーンです。簡単にいうと息子と娘の成長に驚くシーンなんです。息子は原子力を、娘は家政学を勉強しています。そして、アル・スティーブンソンが日本刀を持ち帰り、息子にプレゼントするシーンがあります。「ジャップ」という差別用語を用いて、日本軍とたたかったことを説明します。それに対し、息子は「日本人は家族の仲を重んじる」と父親に説明するのです。さらに父親に対して、広島に落とした原爆のことを聞きます。戦争で戦った敵国をほめることはそうそうできません。自ら勉強し、自らの持論を持っていることがわかります。勉強熱心な息子の様子がわかりますね。そして、娘は家政科に入り家事のことを勉強します。かつてはメイドに任せていた家事を娘がするようになるのです。ここで父親は自分が本当に一番偉いのか疑問に感じるわけです。息子のほうが頭が良い。娘は家事などが出来るようになっている。2人とも自立は出来ている
では自分は?
そう考えるようになります。
そして他に注目すべきなのは、退役軍人の葛藤です。アルは家族の中での自分の立ち位置に葛藤していました。そして、戦場で両手をなくし、義手になったホーマーは自分の障害とどのように向き合っていくか、家族と愛する人に心配をかけないかについて葛藤します。そして、戦時中、大尉として活躍したフレッドも、自分の職探しと戦争によるトラウマを抱えながら、愛について葛藤しています。
それぞれの葛藤が、リアルです。本当にこの時代はそのような葛藤を抱えながら、退役軍人は生きてきたのだろうなと感じます。特に義手となったホーマーを演じるハロルド・ラッセルは実際にあった戦争で手を失った人がそのまま演じています。自身の葛藤をそのまま作品で演じているのです。実際に戦争の被害者を映画に登場させたのは、この映画の最大のポイントだと考えています。
歴史的な一面としても、この映画を観るのはとても良いと考えます。ここまで戦後まもなくのアメリカの情勢を細かく描いた映画はありません。また、ホームドラマとしても、様々な葛藤があって楽しめる内容となっているので、ご覧になってはいかがでしょうか。
それでは皆さん、さよなら、さよなら、さよなら。
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