長編小説【三寒死温】Vol.10
第二話 律儀な看護師の旦那
【第二章】慈善事業を勘違いしている
現場に着くと、二人いるはずの保護者も一人しかいなかった。
PTAとて強制ではない以上、場合によってはこのようなケースが出てしまうのも仕方がない。早めに来てよかったと思いながら、私は一人だけで信号機の前に立っていた保護者の男性に「遅くなりました」と声を掛け、横断歩道を渡って反対側の信号機の下についた。
保護者の男性はちらりと私を一瞥しただけで、特に何も言わなかった。
会釈の一つもないのかと思ったが、そういえば