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書籍用紙の世界へ旅立つ
この世界のあらゆる物事を区別して認識する感性がすごく曖昧だ。過去の日記でこんなことを書いた。
スマートフォンを起動し、YouTubeで音楽を聴こうとしてPayPayを開くことが頻繁にある。今日だけでも2回やった。アプリのアイコンが赤と白で構成されているところにしか意識が向いていないせいだ。
小松菜とチンゲンサイとほうれん草の区別をしないまま食べている。どれも美味しい葉っぱだ。
そんな私が自分に課したのは「書籍用紙」の世界への出立だ。訪れたのは新宿区にある「市谷の杜 本と活字館」。目的は「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」という企画展に行って「書籍用紙見本帳」を入手することである。そう、私は「紙」が大好きなのだ。具体的に言うと、投票用紙に使われている「ユポ紙」に触れるのを楽しみに選挙に行く、そういうレベル。
いい加減に世界を眺めていることが多い私。だからこそ、たまには感性を研ぎ澄まして、ものの違いをしっかり確かめてみようじゃないかというわけだ。
この企画展では61種類の書籍用紙を手に取って比べることができる。しかも、自分が好きなものを選んで糊付けして製本したものを無料で頂ける。ちょっと何を言っているのか分からないと思うのでもう一度説明しておこう。
この企画展では、会場に並べられた書籍用紙のサンプルを1枚ずつ手に取ってじっくり比べることができる。その中から自分の好きなものを選び(全種類を1枚ずつ選ぶことも可能)、施設のスタッフに渡すと、機械で糊付けてくれる。そして、その状態になったものをそのまま持ち帰ってよいというのだ。これらが全て無料。入館料も無料。この施設を運営する大日本印刷さんが正気なのか疑うレベルの太っ腹企画である。どうやって運営しているのだろうか、これは。
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ちゃんとしっかり試し書きが可能なサイズ感なのが伝わるだろうか。糊付けが簡易なものなので綴じたところから1枚ずつ剥がして別々に使うことも可能。
本当にいいんだろうか、こんな素敵なものを頂いて。
紙の書籍の魅力を多くの人に伝えたいという意図があって、その宣伝のための経費と割り切ってでもいるのだろうか。どうやってこの気前の良過ぎる企画が成り立っているのかが気になって仕方がない。
そして、今日の記事で「いろいろ手触りや色の違いをよく見て、確かめた結果、私が好きなのはこちら」という内容を書こうとしたものの優柔不断すぎて全然ナンバーワンが決まらない。みんな違ってみんないい、特別なオンリーワンだと言いたくなる。
ただ普段と明確に違うのは、「個性」をそれぞれが有しているということに対する私の解像度の高さ。色と手触りを比べるだけでもそれぞれに個性、持ち味があることを意識できる。小松菜とチンゲンサイとほうれん草の違いは分からないくせに。
もう少し時間をかけて一枚一枚と向き合って、好みの紙を見つけ出したい。その紙に刷られた作品を「紙とともに味わう」という体験もしたい。そう思った。