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「天-天和通りの快男児/福本伸行」赤木の死に際のセリフが深すぎた


カイジをはじめ、黒沢、トネガワ、アカギと個性的な作品を生み出し続けている福本伸行先生。
キャラクターの顎が特徴的と言ったコメントや、例の「ザワ」がウケ狙いに使われたりするほど認知度が高いですが、大人になって読むとめちゃくちゃ深い!と思うセリフもすくなくありません。

今回リンクを載せた「天」は麻雀の東西戦の話。
西と東の猛者たちが集い、どちらが勝つかを描いた作品です。

〜ネタバレありますので注意ください〜

ちなみに、赤木は東陣営。

そんな日本一とも評される雀鬼の赤木。
本作品のラストは、赤木の死で幕を閉じます。

彼はアルツハイマーにかかり、モヤのかかった頭で生きていたくないと自死を選びます。本作品のラ16〜18巻は、赤木と東西戦で戦った友人たちと一対一で対話が繰り広げられます。

このとき、西陣営のトップ「原田」に赤木が語った言葉が刺さりまったので、長文ですが引用します。
実際は会話ですが、赤木のセリフのみです。

・積みすぎたってことさ・・・!
・お前は成功を積みすぎた・・・!
・勝つこと・・・成功は必要だ・・・!生きていく以上・・・
・どうしたって「成功」は目指さざるを得ないっ・・・!
・それは仕方ない・・・
・ただ 俺は「成功」を少し積んだらすぐ崩すことにしてきた・・・!
・意図的に平らに戻すようにしてきた・・・
・じつは「成功」はなかな曲者でよ・・・一筋縄ではいかない代物・・・!
・最初の一つ二つはまぁいいんだが・・・・
・10・20となるともう余計・・・余分だ・・!体を重くする贅肉のようなもの・・・
・お前はいいやいいやで無用心に積みすぎた・・・!
・動けねぇだろ・・・?お前今・・・動けねぇだろ・・・?満足に・・・!
・最初は必要な意味ある「成功」だった
・勝つことによって人の命は輝き光を放つ
・そういう「生」の輝きと成功は最初つながっていた・・・
・なのにどういうわけか・・・積み上げていくと・・・あるだんかいでスッ・・・とその性質が変わる
・成功は生の「輝き」ではなく枷になる
・いつの間にか成功そのものが人間をしはい・・・乗っ取りに来るんだ・・・!
・「成功」が成功し続ける人生を要求してくる・・・!
・本当は・・・あえてここは失敗をする・・・あるいはゆっくりする・・・そんな選択だって人にはあるはずなのに・・・積み上げた成功がそれを許さない・・・!
・縛られている・・・まるで自由じゃない・・・それは何でもできそうに見える暴力団の組長・・・それも半端な組じゃない関西で1・2を争う巨大組織の頂点原田克美でも変わらないっ・・・!
・「成功」ってヤツは・・・人を自由にしないんだ・・・ハダカを許さない・・・装うことを要求してくる・・・!
・大物らしく振る舞うことを要求してくる・・・!となりゃぁいちいちメソメソなんかしていられない ましてお前は暴力団の組長・・・さぞや窮屈だろうぜ・・・!
・悲しい時も泣けず・・・おかしくても笑えず・・・怒りが込み上げてきても安々と爆発なんかできやしねぇ・・・!いちいち拳を振り上げてたら命がいくつあっても足りない稼業
・我慢をしてるはずだ相当・・・!そんなストレスのかたまりみたいな日々を・・・お前は営々とこなしている スケジュール通り・・・!
・生きてると言えるのか・・?お前・・・それで・・・!
・おまえは「成功」という名の棺の中にいる・・・!
・もう満足に・・・お前は動けない・・・死に体みてえな人生さ・・・!

暴力団の組長に向けて放ったセリフなので、一部、自分達には当てはまらない言い回しもありますが、いかがでしょう?

原田を自分に置き換えると、自分はたぶん赤木に言い返す言葉がありません。

確かに、今の生活に不満があるのか、全てを捨てて自由になりたいか?と問われれば、100%での断定はできなくてもNOと答えるでしょう。
でも、何の疑問を持たずに高校、大学と進学し、それなりに名の知れた大手企業に就職。結婚もし、子供もでき、俗にいう「普通」の生活を営めている。

仮に過去の自分の人生をおこがましくも「成功」とラベリングするなら、確かにそれらは自分を縛る枷になっていることは否定し難い事実かと。
全てをかなぐり捨てて世界を放浪したい、訪れたことのない土地に行き、会ったことのない人に会い、死ぬまでにいろんな経験もしてみたい。
過去に会った人にも再会したい。

赤木はいわば裏稼業で生きてきた人間であり、家族もないという設定です。
そんな極端な人間のセリフ、だれにでも当てはまるわけではないでしょう。

ただ、命の輝きとか、生命の躍動と言った観点で人生を考えると、「我慢し続けること」が答えではない気もしますね。

どうせギャンブル漫画でしょ、と毛嫌いせずにセリフを噛み締めると、スルメの如く味が出てくる漫画だなぁと思った次第。

深い、深すぎる福本先生!

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