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外出自粛でも旅の気分

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旅の想い出をモニターに読む、それで少し気持ちが軽やかになる、旅の気分を持てたらと思います。 新型コロナウイルス、武漢肺炎の蔓延で三密回避・外出自粛が続きます。家に居続けるって、そ…
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2020年4月の記事一覧

吉野の葛切り《34》外出自粛でも旅の気分

奈良吉野山と聞いて思い浮かべること。一目千本の桜、大海人皇子と壬申の乱、南北朝と後醍醐天皇、蔵王堂、葛、歌舞伎義経千本桜。 奈良にはよく旅するのに、吉野まではなかなか行っていない。やはり奥の山なのだ。中学の修学旅行のときは間違いなく吉野まで来た。けれど、山の中だったなぁ、大きなお堂があったかなぁくらいで何も覚えていない。あとは学生服を着ていたこと、友人たちと旅館の大広間に泊ったことくらいか。大人の旅とは違うのだ。 奈良から近鉄特急で吉野に向かったのは2018年の5月連休だ

香港九龍大角咀《33》外出自粛でも旅の気分

モコモコした青の塊、不可思議な光景。あちこちにデッキのような出っ張りがあります。 これ、香港の高層ビル建築現場を見上げたところなのです。青は少し透けて見えるビニールシート。香港では青一色はちょっと珍しくて、紅白藍3色や白藍2色の縞柄が一般的です。建築現場、露店の覆い、荷物袋などあちらこちらで見られます。が、ここは青一色。それがかえって巨大生物をも感じさせる表情になっています。僅かに透けた内側や、開口部に格子状に見えるのは竹の足場。香港では竹棚と呼びます。このように大きな高層

朝熊山から伊勢湾《32》外出自粛でも旅の気分

伊勢の朝熊山(あさまやま)には山頂付近に金剛證寺という寺院がある。伊勢神宮の鬼門を守る寺として古くから信仰されてきたというのだ。そんなことをまったく知らず、伊勢神宮へのお参りの旅を企画していた。一度は行ってみたいところとして伊勢神宮はいつも気にかかっていたが、やっと2018年に実現の運びになった。旅の行程や周遊地点を調べていたときに、この朝熊山のことを知ったのだった。 そのなかで「伊勢へ参らば朝熊をかけよ、朝熊かけねば片参り」という言葉が目に飛び込んできた。伊勢神宮の奥之院

京都祇園切り通し《31》外出自粛でも旅の気分

ホテルのコンシェルジュで予約してもらった和食屋は祇園白川べりにありました。大通りから引っ込んだこの辺りは二階建てくらいの和建築がならび、街並みも整っていて落ち着いています。ゆっくりと夕食をしたあと、店の二階席から見えた白川の岸辺を歩きながら帰ろうと、少し遠回りに歩いていると白川の方へ抜ける小路に気づきました。石畳の路面、木の茶色い壁板、少し曲面をもつ竹の犬矢来、なかなか風情のある絵になる光景です。 スルスルと引込まれて歩いてゆくと、ここは「切り通し」という名の小路だそうです

国鉄標津線奥行臼駅跡《30》外出自粛でも旅の気分

北海道野付郡別海町は住民より牛の数の方が多いといわれる広大な町。摩周湖南の弟子屈から別海町に入り、緩やかに波打つ牧草地や林を見ながらドライブをしたのは2016年。お天気も好く、広々とした風景を見て気分も爽快。ランチののち、進路を南に向け、国道243号線を走ってここまで来ました。別海町の南東部で、視界には森が多くなってきています。奥行で国道を離れ、道道930号線に入って、さらに左折した短い道の行き止まりに、奥行臼(おくゆきうす)駅の跡がありました。 木造の小さな駅舎の向こうに

アレンテージョの水《29》外出自粛でも旅の気分

リスボン旧市街、ロッシオ広場の少し東側の通りにCASA DO ALENTEJOがあった。あまりにさりげなく、外からはそれがレストランとは気づかぬくらいの佇まいである。アレンテージョとは、ポルトガルの中南部のかなり広い地域を指す。まあ、そんな地理はいい。アレンテージョはワインの名産地なのだ。その、地方料理を出すのがこのアレンテージョ会館。旅の前に読んだ紀行書『リスボン 坂と花の路地を抜けて』(青目海著)にあまりに魅惑的に書かれていたので、地図と番地を頼りに来たこの店。 通りに

昔の時刻表《28》外出自粛でも旅の気分

自宅にいて旅の気分になれる筆頭は時刻表だと思う。駅名と時間の変化を追いなから、列車を上から下へたどってゆく。あれ、後からきた特急に抜かれてしまった、などと気づく。では、抜かれたのはどの駅だったかと、今度は少しずつ時刻を上に戻る。 古い時刻表だと、機関車が牽く列車や気動車(ディーゼルカー)の急行列車が多いため、途中駅で切り離して何両かが別の方向に向かうこともある。そんな列車は次のページはどこかな、などと探し始めることになってもう気持ちは列車の中。 列車名も長距離がたくさん走

東京タワー《27》外出自粛でも旅の気分

2008年の1月に出かけた東京タワーです。スカイツリーができる前ですから東京一の電波塔です。展望台に昇ると360°展望ながら、昔と違ってタワーに挑戦するように背の高い高層ビルも周囲にたくさん見えます。昭和33年(1958年)にできた東京タワーは高さ333m、平成24年(2012年)完成の東京スカイツリーは634m。二倍近い高さなのですね。 地上150mにあるメインデッキの展望室は、一部が透明な床になっていて真下が見えます。これは昔はなかった気がするので、途中の改造で設置され

グレートバリアリーフ、ケアンズ《26》外出自粛でも旅の気分

20年近く前のことですが、テレビ「世界ふしぎ発見」でここケアンズがテーマだった時です。まだ小さかった娘がここに行ってみたいなっとつぶやきました。旅好きな我が夫婦はここぞとばかり旅行決定。晴れてケアンズに来たのでした。 ケアンズはオーストラリア、クイーンズランド州北東の街。有名な割にはこじんまりとした市街地です。でもここはグレートバリアリーフ観光の拠点。沖の珊瑚海へのツアー観光船がたくさん出ています。シュノーケリングで海の素人でも見事な珊瑚と魚たちを眺められます。また内陸側に

香港中心街の印刷屋《25》外出自粛でも旅の気分

香港は中心街のセントラル(中環/Central)の光景です。通りに面したビル壁面にある印刷屋さんです。初めてこれを目にしたときはギョッとして立ち止まってしまいました。働く人の前はビル内部の階段の裏側でしょう。この店の奥行きはこの階段幅プラスビルの壁の厚さ。その壁厚の部分に紙の束が積んであります。仕上がった印刷物でしょうか。歩道から数段のステップ上がって作業場の床。右には閉店時に開口部をふさぐのであろう板戸が紐で結んであります。 上には「有恒印務」と堂々とした書体で屋号が記し

サバ州コタキナバル《24》外出自粛でも旅の気分

南洋のビーチリゾートです。えっ、普段旅先は都市が多い私だってたまにはリゾートに行くこともあるのです。ボルネオ島北部のマレーシア領サバ州の州都です。北緯6度弱、ほぼ赤道直下。 州都といっても大都市ではなく、慎ましやかな市街地と空港があるここは大型リゾートホテルがいくつかあります。ロビーには熱帯の外気が風となってそのまま流れ、エアコン環境と違う心地よさ。ホテルの庭は海に面していて、西に向く地形のためきれいな夕空が眺められます。もちろん空は万人に開かれて、市街地の港や市場、小さな

春国岱、根室《23》外出自粛でも旅の気分

北海道東部の根釧台地を東に進んでゆくと、それまで近くを並んで走ってきた国道44号線と根室本線が厚床で別れる。鉄道は南に進み太平洋側を根室に向かう。国道はというと、そのまま東を目指して進む。そして根室半島のつけ根の北側で根室湾に出会う。そこは低湿地で、左に風蓮湖、右に温根沼があって陸地部分が僅か。双方とも汽水湖、つまり海水と淡水が入り混じる水辺なのだ。まるで根室半島がちぎれて島になるギリギリのところでつながっているようだ。 何年も前に花咲線と呼ばれる根室本線の厚床で下車し、駅

下灘駅の海景《22》外出自粛でも旅の気分

松山駅を発車した「伊予灘ものがたり」号は高野川駅の辺りからグンと海に近づき、車窓には瀬戸内海の伊予灘が大きく広がります。この列車はまさにこの伊予灘の海景を楽しむための観光列車で、海側席の多くは窓に向いています。次の伊予上灘駅をゆっくり通過したあとも海景は窓いっぱいに続き、列車は海のすぐそばを走ります。 下灘駅は松山を出て約50分。初めての停車駅です。ここで10分弱の停車。乗客のほとんど全員が観光客なので、それぞれホームに降りて記念写真を撮ったり、大きな海を眺めたりして楽しみ

長岡の花火《21》外出自粛でも旅の気分

新潟県長岡市の信濃川河川敷でおこなわれる大花火大会。山下清画伯の絵にもなったに全国有数の、いやもしかすると日本一の花火大会だ。長岡駅から商店街の大通りを歩いて信濃川へ。さすが大河が越後平野に出てきたところなので、川幅は広く河川敷もとても広い。この花火大会は毎年8月2日と3日におこなわれます。 でも、1日にも花火が上がるのです。 それは、昭和20年、1945年の8月1日に長岡がアメリカ軍の空襲を受け1,000人以上の方がなくなったのだそうです。そのため翌年の同じ日に鎮魂祭とし