僕&DESIGNMENT
デザインを仕事としているのはデザイナーだけではない。
料理人はお皿に料理を盛り付けるごとに、デザインしている。日々、生活の中にデザインは存在していて、写真を撮る時なんかも、構図をデザインする事になる。
僕が好きなのは「間」。
愛していると言っても過言ではない。
満ちているより欠けている。埋まっているより空いている方が好みなのだ。
僕が初めてデザインを意識したのは29歳の時。
遅い。
大阪の堀江にあった「D&DEPERTMENT」に出会った瞬間だ。
1階に雑貨、2階に家具、3階にダイニングを備えた場所で、真っ白なコンクリートの四角い箱のような建物。モノトーンに統一された店内は「シュッとしてる」そのものだった。デザイナー・ナガオカケンメイが手掛ける空間に魅了された。
そして営業成績トップだった会社を辞めて、アルバイトとしてDの門を叩いた。
脱サラして「D&DEPERTMENT」のダイニングで働く間、僕に撮っては赤子が言葉を覚えるように何から何まで勉強だった。
田舎の野球少年が経済学部に入り営業マン9年を経て、初めて「デザイン」の世界を認識するに至ったのだ。
壁の手触りや、窓から刺す陽光の入り方、席の配置からスタッフの所作、黒板に書かれたメニューも「計算された空間デザイン」なのだと知った。詰め込み過ぎる場所には存在しない「間」がデザインされていた。
SETTAをデザインする上で重要なのは「履いた時の美しさ」。
商品そのものがカッコよく見えるのはもちろんだが、履いた時の女性の足が美しく見えるよう意識している。
アシンメトリーなデザインは、コーディネイトに合わせて左右のSETTAを履き替えて楽しんでもらう。鼻緒に使用するビンテージの生地を選定する時は、シャープで発色の良いものを選ぶ。
一見、派手すぎるかもしれない柄は鼻緒という小面積になった時に生きてくる。
足の裏に触る「天」の部分には、丈夫さと肌触りの良さを兼ね備えた上でのカッコ良さを求める。
制限とセオリーを掻い潜って、迷路の出口を見つける。その作業の中でデザインに「間」を設ける。
店舗を作る時も、SETTAの新しいデザインを考える時も、僕の愛する「間」がそこかしこに盛り付けされている。