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バレてはいけないこと

昨日、手先が中途半端に器用なために仕事を増やしてしまった話を書いた。今日のもそれに関連する話だけど、今日のは助けられた話。
かつバレてはいけないこと。

大ボスが趣味で集めた水彩画の掛け軸が職場に掛けられてるが、以前、それをお客さんの子供が破いてしまった。
外側の飾り部分というのか、そこは無事だったけど水彩画自体が3cmちょっと切れた。

いつも冷静な上司が、
「これ…140万したって、言ってたな…」
お客さんの前で口を滑らせ、お客さんが凍り付くような表情になったのを見た。
破ったのはお客さんの子供だけど、そんな高価なものを手に届くとこに置いといたこちらにも非がある。

上司はお客さんに「お気になさらず」と伝え、恐縮しまくったお客さんが帰ると、
「どうにか、ならないか」
と言ってきた。
そんな簡単に出来る訳ないけど出来ないと、大ボスはお客さんかお客さんを帰した上司に請求しかねないし、僕ら職員にも管理が出来てないとイチャモンを付けかねない。
会合で出かけた大ボスが帰ってくるまでの残り5時間。
それまでにどうにかしないといけない。

「必要なものがあれば用意する」

上司に言われ、考えて考えて、半紙と無地の和紙、小学校の時に使った白い糊。平筆と綿棒を買ってきてもらった。

破れた部分に糊を塗ってくっつけると接着面が少ないため、自重で裂ける可能性がある。
なので水彩画の裏に裏張りするための紙に半紙と和紙を。当ててみたら半紙の方が厚みがなく、違和感が無かったので半紙で裏張り。
水彩画の紙の色がとろろ昆布より少し薄い感じだったので、食堂でしょうゆを借りて水で薄めて色を調整して裏張りした半紙に平筆で塗った。
色味を合わせたのは万一、大ボスが掛け軸を変える際に裏張り部分の色の違いに気付かれないための保険。
綿棒は平筆だと大きすぎる場合と破れて毛羽だった部分に当てて転がし毛羽立ちを抑えるため。

半紙を使ったのは国内外問わず美術館で絵画を修復の際に和紙を使うと聞いたことがあるので。
白い糊を使ったのは液状の糊だと水彩画の紙に浸透する可能性があるので粘度の高い糊を。
色味の調整の方法は映画やテレビの撮影で壁などに塗ることで古い建物、日焼けした壁を再現するための方法。ドラマ「相棒」で昔、観たやり方。
こういったテレビで知った知識を実践する時が来るなんて思わなかった。

作業は大ボスが帰ってくるまでに、どうにか完了。
この日の午後はこの作業だけして終わった。
破れてる箇所を知っていて、よく見ないと分からないレベルまで直すことが出来た。
大ボスは自分で飾ったくせに大して見てないので、数年経った今も気付いていない。

上司や同僚から事務より、こういう仕事の方が合ってるんじゃないかと言われた。
直せなかったらお客さん、上司。職員一同。
誰かしら、もしかしたら全員が被害というかペナルティをを受けたかもしれない。

芸は身を助ける

この言葉を実感した出来事。

ジュースが飲みたいです('ω')ノ