今月の書評(「よつばと!15巻」と「月ノさんのノート」を読んで)
毎月一回は読んだ本の感想をnoteに書く習慣を身につけようと思います。長くなると思いますが、よろしければお付き合いのほどお願します。
よつばと!15巻(あずま きよひこ)
漫画です。15巻というよりも「よつばと!」で書こうかと思っていました。連載中の作品であり評価が固まっていないため、15巻の感想という形で書きます。
作品のあらすじを簡単に説明します。
主人公は「小岩井よつば(5才)」で、幼稚園等への通園はしておらず、主に自宅近辺での話が展開されます。
自宅(「とーちゃん」と二人暮らし)も4月に引っ越してきたばかりです(引っ越してくるのが1巻です)。
引っ越し前はかなり田舎の「ばーちゃん」家に住んでおり、都市での生活の中で「よつば」は色々なヒト・モノ・コトに出会います。
各話のタイトルが「よつばと○○」となっているように、「よつばと!」は「よつば」が出会う事柄(読者からすれば他愛のないものがほとんど)に対する、「よつば」の反応などが描かれた作品です。
「よつば」は見た目が外国人であることが作品中に明言されています(緑色の目や髪には意味があります)。
「とーちゃん」の「拾った」との発言から、血の繋がりのない養子であることが示唆されています。
ひどいネタバレを見たと思われたかもしれませんが、上記の設定は話の中であまり意味をなしません(せいぜい母親が話に出てこない理由を説明するものです)。
どんな理由や経緯で「拾った」のか、いつから日本で住み始めたのか等の説明はありません。
あくまで主人公は「よつば」であり、「よつば」が日常の中で何かと「出会う」ことを描写する作品だからです。
とはいえ、15巻では「おっ」と思える描写がありました。
15巻では12月初旬頃の描写がされています。
おそらく「よつば」が小学校に入るまでの話なので、3月まで描けば最終巻になると思います(連載18年で15巻なので、最終巻はいつになるか…生きてるかな…)。
15巻の「ミキサー」の話(タイトルは「よつばとバナナジュース」)など、読んでいて癒されます(バナナジュースはうまいよな)が、最近はマンネリかもなと思っていました。
物を買ったりイベントに行ったりして、「よつば」がはしゃぐのを描写するのは、YouTuber的だなと感じていました(時代が「よつばと!」に追いついたのかもしれません)。過去には市販のお菓子の宣伝かと思える話もありました。
とはいえ、15巻だと「いし」と「ほん」が単純に良かったです。こういうのをマンガで描けるのは、「よつばと!」しかないと思います。特に「ほん」は、「らしさ」が出ていて満足度が高いです(カバー裏の意味が読んだ後に分かりました)。
基本的に一話完結で進むので、読んだことのない方はぜひご一読ください。頭空っぽにして読む作品です。
「何が面白いんだ?」という反応をされがちな作品ではあります。そういう反応は「あずまんが大王」の頃からありました(「あずまんが大王」だと「大阪さん」が好きで、旧版もアニメも新版も可愛いです)。
私は会話や表情に独特のクセがあるところが好きで、読んでいるとクスっとなる箇所があり、読み終わると多幸感があります。「よつばと!」と「あずまんが大王」で共通した感覚であり、あずま先生の漫画家としての才能だと思います。
「よつばと!」には物や背景の細やかな描写がすごいという評価があり、それも魅力ではありますが、私は話の「展開」に引き寄せられます。
「物を買う」系の話は展開が読めてマンネリではと思えますが、もしかして不意に裏切りを入れてくるかもという気持ちもあり(「よつば」はステレオタイプの反応をしません)、結局「展開」を読めない感じです。
結局、私は楽しんで読めており、「よつばと!」の新巻を買い続けています。私の性格上「惰性」と感じたら、古本屋に売っていると思います。
アニメ化するなら「京都アニメーション」しか作れないだろうと思っていました。「京アニ」の現状からすると、アニメで「よつばと!」の空気感を表現することはかなり遠のいたと思います。
アニメ化は多くの人に知ってもらえる機会になると思いますが、「ダンボー」経由で「よつばと!」は多くの人に知られ、社会的にも高く評価されたので、今さらアニメ化するメリットはないかもしれません。
ただ、私は元気に動き回る「よつば」を単純にアニメで見たいです。
3DCG技術がより進化すれば、アニメで「よつばと!」の世界観を表現できるかもしれません。
「よつばと!」が持つ空気感まで3DCGアニメーションで表現できそうなのは「たつき監督」かなと個人的に思っています。「たつき監督」ならどういうアニメ表現をするのか見てみたいです(CMとかで試しに作ってくれたらいいなと思っています)。
月ノさんのノート(月ノ 美兎)
エッセイです。VTuberの「月ノ美兎(つきのみと)」さんの初エッセイです。
VTuberでは「電脳少女シロ」や「アイドル部」が書籍を出しています(シロちゃんが英語を得意とするように、「.LIVE」は知的な印象です)。
「にじさんじ」のこういった書籍は珍しく、「にじさんじ」のトップランナーである「月ノ美兎」が執筆したものなので、買って読んでみました。
税込1430円は高いかなと思いましたが、ファンの方が書いたnoteの感想を見ると、「月ノ美兎」がnoteに書いているコラムとは違って、考えや内面も分かる文章も書かれているとのことで、興味を持ちました。
TSUTAYAでは売っていなかったため、アニメイトで購入しました。
私はニコニコ動画の一視聴者なので、YouTubeは見たいものがある時しか見ません。
VTuberは2017年12月頃に「四天王」(キズナアイ、輝夜月、ミライアカリ、電脳少女シロ、ねこますさん)から知りました(五人揃って四天王。企業勢に人気が集まる中で、ねこますさんは個人勢の裾野を広げた立役者だと思います)。
厳密に言えば、キズナアイの「ふぁっきゅー」の動画でVTuberの存在を知りました。
「月ノ美兎」は当時のVTuber最速で登録者10万人を達成したことで知り、「10分でわかる」と「Moon!!」で好きになりました。
「Moon!!」は「月ノ美兎」のファンであるiruさんが作られたオリジナルのイメージソングですが、配信やライブでも歌われる公式ソングです。
「艦これ」の那珂ちゃんの「恋の2-4-11」のように、一ファンがニコ動に公開した理解度の高い非公式ソングが、本人に公式ソングとして歌われるようになるのは感慨深いです。批判もあるかもしれませんが、私は『正解』を見ることができた気分になります(「やらせ」は嫌いですが、熱心なファンやにわかファンにも高く評価されるファンメイドは良いものです。「剣持刀也」の「Sharpness…」も好きです)。
「にじさんじ」と「ホロライブ」は、2019年8月の「VTuber甲子園」で知りました(パワプロ好きなので見ました。「にじさんじ」は一期生、「ホロライブ」は「ときのそら」しか知りませんでした)。
「舞元啓介」「大空スバル」「椎名唯華」「天開司」を知り、「登録者数が(四天王に比べて)少なくても面白いVTuberがいるんだな」「この層も見ておくべきだ」と思い、ニコ動の切り抜き動画やYouTubeの配信やニコニコ大百科を見て、監督や選手で出たVTuberを把握しました(「笹木咲」の引退関連の切り抜き動画群が一番面白かったです。あとは「舞スバ」絡みで「しぐれうい(ういまま)」に衝撃を受けました)。
昨年の「にじさんじ甲子園」も面白かったです(「にじさんじ」vs「ホロライブ」は両方とも数が多いので、もう無理でしょうね…「VTuber甲子園」をやれたのは当時だからこそで、奇跡的でもあったと思います)。
前置きが長くなりましたが、本エッセイのコンセプトは、にじさんじ学園の高校生「月ノ美兎」が落とした「なんでもノート」を拾い、中身を盗み見るというものです(見出し画像のとおり、装丁もB5版のノートそっくりで、凝った作りです)。
『まえがき』後に、「月ノ美兎」が書いた文字をフォントにした『♡かわいい文字♡』という題名の文章があります。
「イラストは上手なのに、字は下手だな」と思って読んでましたが、読みきれたので「まだマシなほうだ」と思いました(「漢」の草冠が大きいのが、個人的に違和感がありました)。
「らしい」文字ではあります。
丸文字とか使って他人の目を気にした着飾った文字ではなく、淡白で飾らない(伝わればOKな)文字なのが「月ノ美兎」らしいです。
私が勝手に思う「月ノ美兎」のイメージは、「ニコ動を中心としたネット文化を見て育った面白い女の子」でした。
本エッセイを読んでいて、少しショックだったのは「コンサータ」です。
明るい調子で書かれていましたが、私は考えさせられました。
「月ノ美兎」は言葉選びが上手(当意即妙)だったり、地震が来たら配信途中で辞めたりする分別(リテラシー)のある子なので、ガチだという前提で読みました。
「発達障害」にも色々タイプがあって一概には言えませんが、「米津玄師」も公言したように、特別な才能を持つ人にはよくあることと思います。
私見ですが、何かの才能に特化した「天才」は、大多数の「凡人」からなる社会では、異常に見えるのかもしれません。
だからと言って、自分はある分野の「天才」だと思い、上手くいかないのを「周りのせい」にしても才能は伸びません。
「変わり者」だが多くの人から「信頼」を集めることができる人は、ある種の「天才」だと私は思います。
芸能人や歴史上の偉人等に「発達障害」の方は多いと言われますが、その才能(変わっているところ)が認められて、能力を育て発揮できる『居場所』があれば全く問題ありません(Win-Winです)。
『居場所』は、最初は与えられたものかもしれませんが、謙虚に取り組み続けることで、最終的には自分で築き上げるものだと思います。
私は、どうせ「凡人」で生まれたのなら、「天才」を殺す「凡人」ではなく、「天才」を活かす「凡人」でありたいと思います。そのほうが世の中が面白くなると思うからです(私はニコ動だと「才能の無駄づかい」をする動画が好きです)。
「月ノ美兎」は「にじさんじ」のVTuberで本当に良かったなと思いました。
「マリン船長」とか「VTuberで本当に良かったな」と思える人は結構います。
私は、公式放送以外のニコ生の配信は苦手ですが、VTuberなら見ることができます。
イタイ人ではなく、面白いキャラクターとして受け入れやすいのかなと思います。
普通のYouTuberだと、芸能人ぶった素人のノリに対して気持ちが上滑りする(自己顕示欲が受け入れ難い)ので、ハマりません。一方で、エガちゃんはテレビで見慣れており、個人番組だと思って見ることができるので慣れもあるのかもしれません。
アニメキャラと声優さん(中の人)を同一視していないのがベースにあるので、それと同じ感覚でVTuberは見やすいです(「文野環」は「野良猫」としか形容できないから見ていて面白いです。キャラクターとして見ています)。
ネタバレにならないようになるべく中身に触れずに、簡単に感想を書きます。『まえがき』と『あとがき』を含めると合計16項目になりますが、気になった項目だけを書きます。
・『♡かわいい文字♡』は、既述しました(「月ノ」フォントが盛大に使われているのはここだけです)
・『創作できません』は、若者らしい嫉妬の話(成績の良い人が「勉強していない」と言ってるのを聞くのと似たような感じです。「絵師」は同感ですが、だからこそ「しぐれうい」に衝撃を受けました)
・『Bへの怒り』は、「腫れ物」扱いされる人の話(私も協調性がなくても悪意はなさそうな人なら普通に接するタイプだなと思いながら、共感して読みました)
・『症状が出たな』は、既述しました(「ここに病院を建てよう」というタグがあってもネタなので、本気にしないようにしてください)
・『月ノ美兎は箱の中』は、カル○ス・ゴーンみたいなことを「月ノ美兎」もやったという話(VTuberのリアルイベントは大変だろうなと思います)
・『元一期生』は、「樋口楓」が一緒にいる配信で聞いたような話(「にじさんじ」は偶然の積み重ねであり、最初から狙ったものではないだろうと思います)
・『ライン』は、炎上の話(アイマス界隈などネット文化を知っていて察知能力の高い「月ノ美兎」は、一線は越えないだろうという謎の安心感があります)
最後に「映研部」での経験談を書いていました。「月ノ美兎」のルーツなのかもしれません。「ヨーロッパ企画」のゲームへのツッコミが面白いのは、作り手への目線もあったからかなと思いました。
興味がある方は、ぜひご一読ください。「月ノ美兎」の面白さを再確認するのに、このエッセイは良いと思います。
初見の方にはぜひ「10分で分かる」動画シリーズを視聴した上で、「Moon!!」を聴いてほしいです。
今月は以上の2冊について感想文を書きました。
VTuber関連も書いたので長くなりました。ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。