システムは個別の苦しみに応えられるか?②― エンジニアのための「隠喩としての建築」読解with GPT4o
【前回より】
本稿は、新人バックエンドエンジニアが柄谷行人さんの「隠喩としての建築」(講談社学術文庫)の難解な文章をGPTに助けてもらいながら読み解き、未来に必要なものづくりについて考えていく記事です。
前回の議論に引き続き、レヴィ=ストロースやソシュールの哲学を通して、ものごとの抱える単純性と、現代社会の単純化の傾向を乗り越えるためのアイデアをAIとともに哲学のなかに探していきます。
自己組織化するシステムの集合体として捉える
あなた:
あなたが前回紹介してくださった 哲学者 のアイディア には、システムを個別のシステムの集合体 という見方をして 自己調整をする 機能があると捉えたところに共通点がありますね?
ChatGPT:
まさにその通りです。
紹介した哲学者たちのアイデアには、「システムの集合体」として見る視点と、「自己調整機能」を持つものとして捉える考え方が共通しています。
それをもう少し整理すると、以下のような共通点が見えてきます。
1. システムを集合体として捉える
これらの哲学者たちは、現実の構造や社会を一つのシステムとして捉えるのではなく、複数のサブシステムや要素の集合体として捉えています。これは、単一の目的やルールだけで説明しきれない現実の複雑さを理解するための重要な視点です。
ルーマンは社会を複数の独立したサブシステムの集合体と見なし、デリダやホワイトヘッドも、システムの多様性や変動性を重要視しました。
2. 自己調整や自己組織化
それぞれのシステムや要素が自己調整する機能を持っていると考える点も共通しています。この考え方は、システム全体が外部のコントロールによらず、内部のプロセスを通じて適応し、調整していくというものです。
ラブロックのガイア理論では地球全体が自己調整的な生態系として機能しているとされ、ホワイトヘッドのプロセス哲学や複雑系理論も、変化や調整を内在的なプロセスとして重視します。モランやルーマンも、システムが自らの調整や変化を内側から行うことを重視しています。
3. 多様性と非線形性の尊重
単一の視点ではなく、多様な視点や要素が絡み合っていることを前提にしています。これにより、システムが多様な条件や状況に応じて柔軟に反応できるような枠組みが生まれます。
多様な要素の集合が非線形に影響を及ぼし合うことで、単純な入力・出力の**因果関係を超えた「複雑な動き」**が生まれるという視点が根底にあります。
4. 全体は予測不可能であることを前提とする
これらの思想には、システムの全体的な挙動が単純に予測できないものとして捉える傾向があります。これは、個々の要素が独立して自己調整しているため、全体の挙動が非線形的であり、複雑な動態を持つと考えられるためです。
特に複雑系理論やモランの哲学では、全体が固定された一つの状態ではなく、常に変動し、新たな秩序やカオスを生み出すダイナミックなものとして捉えられています。
5. 調和と共生
最後に、これらの考え方は、システムが調和と共生を目指していると捉えています。ガイア理論やホワイトヘッドのプロセス哲学では、自然や社会が複雑でありながらもバランスを保ち、共存していくことを重視しています。システムは、個々が独立しながらも全体として調和を持ち、持続的に存在し続けることを目指す姿勢が共通しています。
これらの共通点を通して、これらの哲学者たちは、現実の複雑な問題に対して単純な解決策ではなく、自己調整や相互作用を通じて複雑な現実と向き合うためのシステム観を提供しています。このアプローチは、現代の社会や環境の問題に対して多様な解決策を模索する上で大変有用です。
パーソナルイシューはソーシャルイシューに接続できるか?
あなた:
もう1つ、これらの哲学のアイデアはプロセスで考えるというところが共通点だと思うのですが、 デメリットとして、全体の複雑さと調整関係を見ようとすると、社会課題が壮大になりすぎてしまう、ということが言えると思います.
最近のユーザーは、単純でわかりやすいものを好む傾向が強く、社会課題の議論が深まりにくい側面があります.
個人の身近な課題とダイナミックな自己組織化する複雑なシステムの細部をつなげるような考え方をした哲学者はいますか?
またそのような分野横断的な研究はありますか?
ChatGPT:
個人の身近な課題と、自己組織化する複雑なシステムをつなげようとした哲学者や研究分野はいくつかあります。
以下のアプローチや思想家が、この接続を考えようとした代表的な例です。
1. ガストン・バシュラール
バシュラールは科学哲学者で、日常的な経験や人間の思考プロセスと、複雑な科学理論の関係を考察しました。彼の「近接的経験」という概念は、個人の日常的な思考や認識が、実は科学的発見や社会的課題の根底にあるという考え方です。バシュラールは、「理論」と「日常」をつなげ、複雑な概念も一歩一歩積み上げることで理解できると主張しました。
2. ユルゲン・ハーバーマスの「コミュニケーション的行為の理論」
ハーバーマスは、社会のシステムがいかにして個々の人間の「生活世界」から形作られるかを探求しました。彼の「生活世界」とは、個人が日常的に相互作用を通じて意味を共有する領域を指します。この理論は、社会の複雑なシステムの構造が個人の日常的な対話や行為から築かれていくプロセスであるとしています。これにより、個人の身近な問題から社会的な課題に至るまでのつながりが強調されます。
3. メレオロジー(部分と全体の関係を研究する哲学)
メレオロジーは、部分と全体の関係についての哲学的研究で、特にシステム全体がいかにして個々の要素から成り立つのか、という問題に取り組んでいます。最近の複雑系やシステム科学でも、この視点が注目されています。つまり、個人や小さな単位の行動が全体にどう影響を与えるかを研究し、複雑な社会課題をより具体的な部分に分けて考えるアプローチです。
4. 人新世(アントロポセン)研究
人新世は、地球全体に影響を与える人間活動をテーマにした新しい時代概念です。この研究分野では、個人の日常的な選択や行動が、地球環境や気候といった大規模システムにどのように影響を及ぼすかが探られています。たとえば、個人の消費行動やエネルギーの使い方が地球全体の環境に影響を与えるという考え方で、個人の身近な問題と社会的・環境的な大きな課題が接続されます。
5. サイバネティクスと二次サイバネティクス
サイバネティクスは、フィードバックループや自己調整などのプロセスを研究する分野で、二次サイバネティクスでは「観察者の役割」が強調されます。これは、観察者自身がシステムの一部として機能し、システムの全体的な挙動に影響を与えるという考え方です。これにより、個々の行為や意識が全体のダイナミックな自己組織化プロセスにどう関わるかが解明されようとしています。
6. ネットワーク科学やエージェントベースのモデリング
ネットワーク科学やエージェントベースのモデリングも、個人(エージェント)レベルの行動が全体のネットワーク構造にどう影響を与えるかを探求しています。特にエージェントベースモデリングでは、各エージェントがシンプルなルールに従って動くことで、全体として予測不能な複雑な動きを生む様子をシミュレーションすることができます。これにより、個人レベルの行動が社会の複雑な構造にどのように影響するかが分かりやすく示されます。
これらのアプローチや哲学的視点は、日常的で個別的な課題と複雑な全体システムとのつながりを明らかにし、特に現代のユーザーが好むシンプルさを保ちながらも、より深い社会的な議論を可能にする視座を提供しています。
(続く)