読書録100 「証言 橋本真也 破壊王とアントニオ猪木「相剋」の真相」
宝島社のプロレス「証言」シリーズは、本当に面白い。
UWFの時もそうなのだけれど、キーパーソン達の証言を、読めば読むほど「真相」から遠のいていくのが面白いんだよね。
SNSに頻発する「陰謀論」と同じ縮図なんだけれど、こっちの方が平和に楽しめるから良い。
同じ場所で顔を合わせて一つの事象に立ち会っていた人達が、全員違う見解の証言を真顔でしちゃうあたりに、プロレスの「曖昧さ」「妖しさ」「好悪の感情」「自己保身」みたいな人間のあらゆる煩悩を飲み込んでしまう大きさを感じるんだよ。
「橋本真也」というプロレスラーは、「煩悩の塊」みたいな人だが、それ故に無邪気で、魅力的なんだけど、人によってはとてつもなく苦手だったりもするんだろう。
己の燃え尽きかけた命すらプロレスに賭けて逝ったボス「冬木弘道」の遺骨を抱いて、WEW川崎のリングで電流爆破の有刺鉄線に突っ込んだ破壊王は、鳥肌立つほどかっこよかった。
その後、冬木未亡人と付き合いだしてズッコケるんだけど(笑)
いろんな意味で面白かったけど、「橋本真也」本人に踏み込む意味では「紙の破壊王」シリーズの方が勝ってるかな。
後は、宿敵にして最大の盟友「小川直也」の「証言」が無かったのが、やや画竜点睛を欠く感じがしたね。小川の印象を悪くしがちなのはイージーに過ぎると思う。