清水正浩

生まれ持った反骨精神、でも、併せ持ったポンコツエンジン

清水正浩

生まれ持った反骨精神、でも、併せ持ったポンコツエンジン

最近の記事

読書録139 しげる著「アメトイブームはどこへ行ったのか」

童心忘れがたいのか、フィギュアの類いは大好きだ。 そうたくさん買えるものでもないので数は少ないのだけれど、スパイダーマンやヴェノムに最近の作品ではザ・ボーイズのキャラクター達が我が家にもいる。 大人向けというか、本国アメリカでは子供が遊ぶアクションフィギュアが、大人がコレクションしても恥ずかしくないどころかオシャレみたいな価値観が産まれたのは、たしかに90年代のアメトイブームだったのかもしれない。 表層面でしか知らなかった「アメトイブーム」の内側を、キーパーソンによるイ

    • 読書録138 佐藤満春著「凡人の戦略 暗躍する仕事術」

      「放送作家」と「出役」を、現在進行形で兼業しているのはレアな存在で、出役を諦めて放送作家に転向するか、放送作家として名を売ってから出役に転ずるか(この場合看板だけは放送作家を名乗りがち)の両パターンが多い。 後者の場合、自分の名前を前面にだしたプロデュース的な仕事をメインとしたり、番組制作上の守秘義務違反じゃねぇの?って内容の本を出版したりと承認欲求がバグってしまってる事例も多いと感じるのだけれど、我らがサトミツ氏は独自の存在なのである。 とにかく「無私無欲」仕事を同じく

      • 読書録137 鈴木忠平著「嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか」

        82年の近藤貞雄監督率いる「野武士軍団」による優勝のあたりからのドラゴンズファンなのである。 インターネットの無い時代、関東地方のドラゴンズファンというマイノリティは、テレビで巨人戦か大洋戦の中継を見るくらいしか情報収集の手段がなく、スポーツ新聞を見てもスタメンとスコアと一言寸評しか載ってなかったのである。 そんなドラゴンズが、紙面の一面を飾ったりCMやらスポーツニュースやらで注目されるようになったのは、「好かれた監督」星野仙一の登場からだろう。(後は、珍プレー番組での宇

        • 読書録136 殿山泰司著「殿山泰司ベストエッセイ」&新藤兼人著「三文役者の死」

          どちらかといえば、小説よりエッセイを好むオレとしては、ちくま文庫の「ベストエッセイ」シリーズはとてもありがたいのだ。 小説作品と比べてエッセイの類いは絶版になりやすく、名作と言われる作品ですら古本屋を巡るしか入手できなかったりするので、ダイジェストとはいえ過去の名作が発掘されるのはうれしい。 読みたかった「三文役者シリーズ」とも、やっと出会えた訳で、テレビや映画でインパクトある脇役だった「タイちゃん」のエッセイは、自由奔放で楽しかった。 タイちゃんをもっと知りたくなって

          読書録135 星野源著「いのちの車窓から2」

          源さんほどの多才な才人でも、いやだからこそか?これほど傷つき、生々しく血を流しながら「普通」とか「世間」という曖昧かつ傲慢で時に刺々しい「価値観」と対峙しなければならないのだな。 ラジオやテレビや楽曲なんかで源さんに感じる「生き方の達人感」の舞台裏を知る事で、オレはますます源さんが好きになってしまった。 たまたま見ていた、オラが地元tvkの人気番組「saku saku」にゲストで来ていた気さくな青年は、大病から復帰したばかりだと言っていた。 なんとなく気になって、その後

          読書録135 星野源著「いのちの車窓から2」

          読書録134 真山仁著「ロッキード」

          週刊文春に連載中から気にはなっていたのだけれど、なんとなく読んでなかった作品。 文庫版もなかなかの大ボリュームで、さらになんとなく躊躇してたんだけど、思い切って読んでみたら面白いこと!! 物心ついた頃には田中角栄は悪い的な世論ではあったのだけれど、演説をする姿のカリスマ性がすごくて、後に早坂茂三元秘書が語り、書いた「田中角栄」に大ファンになっただけに「ロッキード」とは何なのか?というのは気になってたんで、本当に面白かった。 キッシンジャーという稀代の謀略家の仕掛けも、日

          読書録134 真山仁著「ロッキード」

          読書録133 神立尚紀著「決定版 零戦最後の証言1〜3」

          読み終えてしまったなぁ…というのが1番最初に来る感想だ。 文字に書かれている部分も素晴らしいのだけれど、戦後世代である著者が、取材を通じて知遇を得た元搭乗員の方々と交流し続けてきた約30年の月日と信頼関係の重みが作る独特の世界観は、類似の他作品には作り得ないリアルがある。 「特攻の真意」あたりから読み始めて、「祖父たちの零戦」旧版の「零戦最後の証言」「零戦隊長宮野善治郎の生涯」と読み進めていくうちに、角田和男さんをはじめとする元搭乗員の方々の人柄がとても魅力的で、文字の上

          読書録133 神立尚紀著「決定版 零戦最後の証言1〜3」

          読書録132 ファンキー加藤著「未完声」

          見出しの画像は我が家のリビングの一番いい場所に展示されている家宝で、「サヨナラじゃない」の発売を記念したレコチョクの「最近、あなたが友情を感じた瞬間」というTwitter企画で選ばれてもらったサイン入りポスターなのだけれど、 これ、選んでくれたの加藤さんじゃないか?と、ずっと思っている。 不器用でうまくやり過ごせずに、いちいち壁にぶつかり、躓いても転げ回りながらも前進しつづける強い男。 とはいえ強さばかりではなく、弱さも迷いも隠さない優しい男。 BABY'Sを名乗る俺

          読書録132 ファンキー加藤著「未完声」

          読書録131 ティムラズ・レジャバ著 「日本再発見」

          本作の著者であるティムラズ大使を知ったのは、グルジア改めてジョージアが耳に慣れたあたり、ジョージア料理の「シュクメルリ」が「松屋」で販売された事を喜ぶ呟きだったと思う。 今回改めて著作を読んだのだけれど、日本で長く暮らされていた経験に基づいた知識の豊富さや、ジョージアの文化に根ざした視点の鋭さが楽しく、あっという間に読んでしまった。 少年時代の回想は共通する所もあって懐かしく感じたし、ラーメンや弁当も含む日本文化への造詣の深さには舌を巻いた。 特に奥様が「弁当」に目覚め

          読書録131 ティムラズ・レジャバ著 「日本再発見」

          読書録130 髙橋安幸著「暗躍の球史 根本陸夫が動いた時代」

          著者の「伝説の野球選手に会いに行く」シリーズとか、「根本陸夫伝 プロ野球のすべてを知っていた男」は、愛読していて、特に「根本陸夫伝」は文庫化記念のイベントに参加し、著者の髙橋氏や「根本一家」の「必殺仕事人」大田卓司さんにお会いできたりと思い入れが強い。 本作は、待ちに待った待望の続編で、前作が「人間根本陸夫」を深掘りするような作品だったのと比べると、やや視点を俯瞰にして「組織人 根本陸夫」に注目しているように感じた。 西武時代に根本氏の更に裏で暗躍したとされるプリンスホテ

          読書録130 髙橋安幸著「暗躍の球史 根本陸夫が動いた時代」

          読書録129 高鳥都著「あぶない刑事インタビューズ「核心」

          小学生の頃、日曜の夜といえば「西部警察」だった。多士済々の刑事達の中で、俺のご贔屓は舘ひろしさん演ずるポッポこと鳩村刑事だった。アメリカ帰りでダンディかつスマートそしてちょっとキザ。華麗なバイクアクションに痺れまくったのである。 時は流れ、中学生の時に始まった「あぶない刑事」は、「鳩」村から「鷹」山にグレードアップした舘ひろしさんに加え、柴田恭兵さん演ずるフリーダムなユージ、トオルにカオルに中条静夫さんの近藤課長などなど、楽しくてかっこいいメンバー達が、我が街横浜を舞台に暴

          読書録129 高鳥都著「あぶない刑事インタビューズ「核心」

          読書録128 清武英利著「アトムの心臓」

          著者の清武氏といえば、読売巨人軍のGMとかフロントの人という印象が最初にくる。 キレ者のGMで、革新的なチーム改革を情熱的にしようとする姿には他チームファンから見ていても好感が持てたのだけれど、「寝業師」とか「仕事師」タイプが暗躍するのを良しとする世界においては、あまりにもピュアに過ぎるかなと思ったりした。 案の定というか何というか、惜しくも志半ばにして球界を去った清武氏を再び目にしたのは「サラリーマン球団社長」という作品で、自身の球界体験も活かした素晴らしい作品で、書き

          読書録128 清武英利著「アトムの心臓」

          読書録127 中川裕著「ゴールデンカムイ 絵から学ぶアイヌ文化」

          基本的に、「フィクションは上手くだましてくれれば良い」と考えている。 「ゴールデンカムイ」という作品は、知ってる「史実」に知らなかった「知識」や「文化」を織り込む事で、「上質なフィクション」かつ「優れたエンターテイメント」に昇華させた「エンタメのカムイ」が作り上げたんじゃないか?という素晴らしい作品で、というか要はめちゃくちゃ面白くてどハマりした作品なのである。 著者は、「ゴールデンカムイ」の肝である「アイヌ監修」を務められた方なのだけれど、「文化や風習」に関して資料類に

          読書録127 中川裕著「ゴールデンカムイ 絵から学ぶアイヌ文化」

          読書録126 樋口季一郎著「陸軍中将樋口季一郎回想録」

          樋口中将といえば「オトポール事件」とか「アッツ島玉砕・キスカ島撤退」「樺太・占守島の戦い」と、帝国陸軍の将軍には珍しいタイプのエピソードを持つ人で、以前から興味があったのだけれど、たまたま復刻版の回想録を見つけたから飛びついた次第。 かなりのボリュームで、そこそこ時間をかけて読み進めてきたのだけれども、海外赴任や地方の師団へ赴任した時のエピソードがメインで、上記の有名なエピソードに触れてる部分は少なく、さらっとしたものだったりする。 これは、手柄誇りをするタイプではない上

          読書録126 樋口季一郎著「陸軍中将樋口季一郎回想録」

          読書録125 丹波哲郎・ダーティ工藤著「大俳優 丹波哲郎」

          のっけから濃厚な「丹波哲郎節」が全開で最高なのである。 サービス過剰かつ、あちこちに話が飛んだり跳ねたり暴走しかけたりするのだけれど、ダーティ氏が絶妙にツッコんだり、合いの手を入れたり、事実関係を補足していきつつ、丹波さんの語り口を完全に再現しているので、目の前でワンマンショーが繰り広げられてるのかと錯覚するくらいだった。 直前に読んだ「丹波哲郎 見事な生涯」が、丹波哲郎評伝の傑作だとすれば、本作は丹波哲郎インタビューの最高傑作と言っても過言ではないと思う。 前もって丹

          読書録125 丹波哲郎・ダーティ工藤著「大俳優 丹波哲郎」

          読書録124 野村進著「丹波哲郎 見事な生涯」

          圧巻の取材力と読ませる文章で、結構ぶ厚い本なのにあっという間に読み切ってしまった。 取材対象である「丹波哲郎」自体が、おそろしく魅力的である事に加えて、あまり深掘りされてこなかった「霊界研究」を含めた私生活への洞察も含めた内容が新鮮で、とても面白かった。 貞子夫人と長男義隆氏の家庭に、江畑絢子氏と正樹氏との別宅の関係は、「真田太平記」に於ける昌幸の家族関係に酷似していて、丹波さんが自ら池波正太郎先生に直訴してまで昌幸役を獲得したとされる伝説にも、個人的に納得した。 読み

          読書録124 野村進著「丹波哲郎 見事な生涯」