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turbo1019
山本有三「真実一路」
中学生になったばかりの私に、山本有三の「真実一路」を薦めた母。
もともと読書が嫌いでなかった私は、素直にその本を手に取り読み始めた。
いままで読んでいたコバルト文庫や探偵小説やファンタジーとは全く違う世界に引き込まれて、貪るように読んだことを覚えている。
読みおえた後、母に感謝した。本とはこんなにも面白いものだということを教えてくれた。母がこのような大人びた本を薦めたということで、自分を子ども扱いしていないように思えて、嬉しいような誇らしいような気分になった。
あれから数十年。
先日、母が入院中に「暇すぎる」とLINEを送ってきたので、私はちょうど読み終えた山本有三の「女の一生」を病院に送った。母は大喜びし、あっという間に読み終えた。大いに感動を電話で分かち合ったあと、催促がきた。「暇すぎる」と。そこで私は、母のお気に召すような本を数冊ピックアップし、病院へ送った。すると母からお礼のLINEが届いた。その中で、「退屈な時間も、読書をすることで有意義になった。読書好きに育ててくれた母に感謝するわ。」というような内容のことも書かれていた。
たしかに。
とみちゃんがそこまで考えて子育てをしたとは思えないが、人は勝手に読書好きになるのではない。年齢にあった本選びだったり、本を楽しんで読める空間だったり、そのあとの語らいだったり…いろんな条件が揃って子どもは本に親しんでいくのだろう。
そう考えると。私も母に感謝しなければならない。本好きに育ててくれてありがとう。
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